TK-80 モニタプログラム

TK-80

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/17 01:26 UTC 版)

モニタプログラム

電源投入、あるいはRESETスイッチの操作によりTK-80はモニタプログラムの実行を開始する。モニタプログラムは、以下の操作を行うことができる。

RAMへのデータ書き込み
指定したアドレスに、プログラムやデータを書き込みことができる。
メモリデータの読み出し
指定したアドレスのメモリデータを読み出すことができる。
プログラムの実行
指定したアドレスからプログラムを実行する。
シングルステップ実行
STEPモードの際に、1命令ずつ実行する。あるいはブレークポイントとブレークカウンタを指定し、条件を満たすまでSTEPモードの実行を連続的に繰り返すことができる。STEPモードでモニタに戻ってきた際には、退避されたレジスタの内容を参照することができる。
プログラム/データのロードとセーブ
STORE DATAキーの操作によりメモリデータをシリアルポートに出力できる。これをオーディオ信号などの形で保存しておけば、後でLOAD DATAキーを使ってデータをロードすることができる。
ライブラリルーチンの提供
キーパッドからの入力、LEDへの16進の数値表示、タイマー、シリアル入出力などのサービスを提供するサブルーチンを利用することができる。

拡張性

100ピンのエッジコネクタにはアドレスバスデータバス、メモリ/I/Oの読み書きの信号などが接続されていたので外部回路を接続することができる。またバックプレーンを用意すれば同型の基板を重ねるように使用し、システムを拡張することも可能である。後から発売されたTK-80 Basic Station、メモリカードなどは、このような構成で接続する。また、自由に回路を作成できるユニバーサル基板も販売されていた。

しかしTK-80はトレーニングキットとして設計されたものであったため、本格的な拡張まで考えて設計されていた訳ではなかった。

たとえば、メモリアドレスのデコードである。TK-80のROMとRAMはそれぞれ最大で1KBなので、アドレスの下位10ビットはデコーダとメモリチップに接続されていた。そしてROMとRAMの切り替えを最上位1ビットで行い、A10からA14まではデコードされていなかった。そのため0000Hから7FFFHまでは先頭1KBのROMイメージが繰り返し現れ、8000HからFFFFHまではRAMイメージが繰り返し現れることになった。

外部にメモリを増設する場合は、まずこのゴーストイメージ対策を行う必要がある。具体的には、アドレスをきちんとデコードするということである。TK-80の基板はフルデコードするために、パターンをカットしてデコード信号を接続できるようになっていた。

Basic Station基板はROMとRAMを搭載しているため、BS基板とTK-80を接続する際にはこのフルデコード改造を行う必要があった。そのためBasic Station基板上にはTK-80基板上のROMとRAMのアドレスをデコードする回路が載っており、このデコード信号がエッジコネクタ経由でTK-80基板に送られるようになっていた。TK-80側ではパターンをカットした後、この信号をメモリチップ用のデコーダに接続しなければならなかった。

シリーズ商品

TK-80には初期モデルμPD8080A(減算時の10進補正が可能でインテルと非互換)とμPD454D(EEPROM)、uPD5101E(バッテリーバックアップ可能)、低価格化後期モデル(TK-80E:Economy)μPD8080AFCとuPD464(マスクROM)、uPD2101AL-4 がある。

純正オプションとしてメモリーボードTK-M20K(RAM:12kBytes実装済、ROM:8kBytes実装可能、パラレルI/Oポート:8ビット×6組(μPD8255×2個)実装済、シリアルI/Oポート:μPD8251×1個 実装済)[14]とμCOM BASIC STATION TK-80BS(Level1BASIC:整数BASIC、Level2BASIC:実数BASIC)があった。

TK-80E
EはEconomicのEつまり簡易品。値段と機能が少々落とされていた下位バージョンである。1977年12月発売[15]。67,000円。
TK-80BS
下の節 #TK-80BSとCOMPO BS/80で詳説。128,000円。
TK-80EとTK-80BSは同時発売で、BASIC目当てで両機種合わせて買っても20万円以下の価格設定となった。
COMPO BS/80-A
TK-80BSとCPUボードとインターフェースボード付カセットデッキと電源装置を内蔵した製品で[16]、ワンボードとデスクパソコンの過渡的存在。1978年10月発表[17]。238,000円。
カセットデッキをオプションにした80-B(198,000円)も同時発売された。
オプション機器
  • BSD-1200MT JMCカセットデッキ
80-Aに標準搭載されているカセットデッキ+サブボードのセット。29.000円。
  • BSD-80PRT プリンタ
放電破壊記録方式。1行20桁/40桁/80桁の印字幅が指定可能。128,000円
  • BSD-50PW パワーサプライ
COMPO BSに内蔵されている電源ユニット。TK-80系システム用の電源として使用可。38,000円。
TK-85
CPU:μPD8085AC(動作クロック:2.4576MHz)、ROM:2Kバイト、RAM:1Kバイト、パラレルI/O:μPD8255AC-5×1個、カンサスシティースタンダード1200ボーCMTインターフェースが標準実装され[18]、8進LED部には赤いアクリル板が付いていた。この頃は既にワンボードからデスクパソコンに移行が完了していた時期で、ホビー向けのワンボードとしては勿論最後の機種となった。1980年5月発売[15]

注釈

  1. ^ 7万台を売ったとする文献もある[4]
  2. ^ 半導体部門は2002年の分社化を経て2010年よりルネサス エレクトロニクスとして存続。
  3. ^ 1976年9月に電子デバイス販売事業部へ改称。
  4. ^ その他、命令の実行サイクル数がインテル製とは異なるなどの違いもあった
  5. ^ 部品を仕入れる担当者の立場では、NEC製が入手できない場合にインテル製を含む他社品で代替できないのも問題であった。これはμPD753があまり売れなかったのと同様の理由である
  6. ^ μPD8080AFのあとのCはプラスチックパッケージを示すサフィックスである。μPD8080AおよびAFのあとにDがあるバージョンもあり、Dは同様にセラミックパッケージを示す。他のICの末尾の文字も同様である
  7. ^ 例えば月刊I/O1977年12月号では、アドテックのメモリボード(ADB-001)、ディスプレイユニット(TVD-02)、キーボード(KB-02)を接続して東大版2K BASICを動かす方法が紹介されていた。

出典

  1. ^ a b c d 太田行生『パソコン誕生』日本電気文化センター、1983年、22頁。ISBN 4930916119 
  2. ^ a b 佐々木 2013, p. 8.
  3. ^ a b 日本電気社史編纂室『日本電気株式会社百年史』日本電気、2001年12月25日、649-661頁。 
  4. ^ 上前淳一郎『読むクスリ』文藝春秋文春文庫)、1987年、14頁。ISBN 4-16-724807-7
  5. ^ a b c 関口, 和一『パソコン革命の旗手たち』日本経済新聞社、2000年、35-39頁。ISBN 4-532-16331-5 
  6. ^ a b 田中, 繁廣「ドキュメント・NECのPC戦略―市場制覇への道を切り拓いた戦士達 その決断と挑戦の歴史」『100万人の謎を解く ザ・PCの系譜』コンピュータ・ニュース社、1988年2月17日、76–89頁。ISBN 4-8061-0316-0 
  7. ^ 塩田紳二「国産銘機列伝:開発者インタビュー「オープンの発想はPDP-8から学んだ―TK-80開発者、後藤氏に聞く」」『ASCII』第22巻第5号、アスキー、1998年、314頁、ISSN 0386-5428 
  8. ^ 加藤明、「PC-8001の開発」 『電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン』 2010年 2010巻 15号 p.15_58-15_65, doi:10.1587/bplus.2010.15_5 電子情報通信学会
  9. ^ 「TK-80BS」『ASCII』第2巻第1号、アスキー出版、1978年、ISSN 0386-5428 
  10. ^ 田中, 繁廣「NECのハード開発戦略―ユーザーをとらえた「互換性と継承性の追求」優先の製品開発」『100万人の謎を解く ザ・PCの系譜』コンピュータ・ニュース社、1988年2月17日、94–105頁。ISBN 4-8061-0316-0 
  11. ^ 塩田, 紳二「国産銘機列伝:History「マイコンと呼ばれていた頃」」『ASCII』第22巻第5号、アスキー、1998年、312-313頁、ISSN 0386-5428 
  12. ^ 『μCOMシリーズ 総合ユーザーズガイド 1978 SPRING編』日本電気株式会社、1978年3月3日。IEM-517N。 
  13. ^ 『μCOM-80トレーニング・キット TK-80E/80ユーザーズ・マニアル』
  14. ^ メモリボード TK-M20K”. NEC Personal Computers, Ltd.. 2012年11月2日閲覧。
  15. ^ a b 太田行生『パソコン誕生』日本電気文化センター、1983年、29頁。ISBN 4930916119 
  16. ^ COMPO BS/80”. NEC Personal Computers, Ltd.. 2012年11月2日閲覧。
  17. ^ 日本電気社史編纂室『日本電気株式会社百年史』日本電気、2001年12月25日、653頁。 
  18. ^ トレーニングマイクロコンピュータ TK-85”. NEC Personal Computers, Ltd.. 2012年11月2日閲覧。
  19. ^ μCOMベーシックステーション TK-80BS”. NEC Personal Computers, Ltd.. 2012年11月2日閲覧。
  20. ^ 竹下 洋、ワンタッチLEVEL-I ↔ LEVEL-II 切り替えシステム『ラジオの製作別冊 マイコンプログラム全集1』p.12、電波新聞社、1979年






固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「TK-80」の関連用語

TK-80のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



TK-80のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのTK-80 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS