MiG-25 (航空機) 主な派生型

MiG-25 (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/02 03:01 UTC 版)

主な派生型

試作機

Ye-155R-1

1機制作された偵察機型の試作機。後に速度記録機であるYe-266の1号機に改造。

Ye-155R-2
1機制作された偵察機型の試作機で細部が改良されている。
Ye-155R-3
4機制作された偵察機型の試作機で細かい部品が変更されている。初号機はYe-266の2号機に改造。
Ye-155P-1
1機制作された戦闘機型の試作機。後にYe-266の3号機に改造。
Ye-155P-2
1機制作された戦闘機型の試作機で電子機材などが変更された。
Ye-155P-3
9機制作された戦闘機型の試作機で細部が刷新されている。

量産機

MiG-25P(МиГ-25П
最初の量産型。機首にパルス・ドップラー式のRP-25スメルシュ(NATOコードネーム フォックスファイヤ)捜索/追跡レーダーを装備しており、最大探知距離は80kmである。兵装にはR-40(AA-6 アクリッド)ミサイルを赤外線誘導型とレーダ誘導型を各2発搭載するが、機関砲は搭載されていない。なお、戦闘機型は偵察機型よりもわずかに翼幅が長い(ゆえに、翼端が、偵察機型より延長されており、先細りになっている(翼端の翼弦長が短い)ので、見分けがつく)。また、主翼下の4基のパイロンは主翼の捻り剛性も担っている。NATOコードネームはフォックスバットA。他に生産された2機は高性能エンジンの試験機に改造された。2024年現在2機(青の4、赤の72)がロシア国内で保存されている。18機はジョージアに、77機はリビアへ、1機はアルメニアへ、10機がカザフスタンへ輸出された。残る350機はPDSにアップグレードされた。
MiG-25PD(МиГ-25ПД
104機生産された改良型。ベレンコ中尉のもたらした機体は迎撃戦闘機型の MiG-25Pであったため、亡命事件を受けてソ連ではこの機体のシステム変更の必要に迫られた。ソ連にとっては、MiG-25P が捕獲されたことによって自国の防空システム全体が露見してしまう可能性が最大の関心事であった。このため、防空システム全体の見直しが必要となり、搭載機材を変更して1978年に完成したのが本機である。機首のレーダーはそれまでのスメルシュから変更され、MiG-23ML の搭載レーダーを改良したRP-25サプフィール(NATOコードネーム ハイラーク)レーダーに換装された。このレーダーはルックダウン・シュートダウン能力を持ち、複数の目標指示能力などが追加されている。その他にも電子装備も変更され、機首下面にはこれもMiG-23MLから流用した赤外線追跡装置を装備した。以降はこの機体が配備されていった(MiG-25PDにも数シリーズあり、初期のものは外見上MiG-25Pに似ている)。また、MiG-25Pを代替する迎撃戦闘機として本来は前線戦闘機であったMiG-23も防空システムに組み込まれることとなり、MiG-25PD 同様の機材を搭載した迎撃戦闘機型MiG-23Pが製造された。結果、長射程ミサイルを使用できるMiG-25PDと中射程ミサイルを使用するMiG-23Pが並行して防空軍へ配備されることとなった。NATOコードネームはフォックスバットE。内、3機は特殊試験用途に改造された。他の13機はベラルーシに、24機はトルクメニスタンへ、10機がイラクへ、16機がシリアへ、12機がアルジェリアへ、12機がアゼルバイジャンへ輸出された。ロシア国内には1機(赤の04)が状態を保って保存されているが、残る14機は不明である。
MiG-25PDSМиГ-25ПДС
350機存在した既存のMiG-25PをMiG-25PD規格にアップグレードしたもの。12機はイラクへ、11機はアルジェリアへ、83機はウクライナへ、20機がジョージアへ輸出された。現在4機がロシア国内に現存している(青の04、状態の悪い青の08、赤の46、赤の69)。残る220機の所在は不明。
MiG-25R(МиГ-25Р
高々度偵察型。NATOコードネームはフォックスバットB。2機がシリアへ、4機がカザフスタンへ輸出された。
MiG-25RB(МиГ-25ЛБ
MiG-25Rを元に爆撃能力を加えた偵察爆撃機型。精密誘導は出来ず目的地上空まで飛行して照準をせずに爆撃する型式になっている為レーザー誘導爆弾ではなく核爆弾を運用することが前提とされている。NATOコードネームはフォックスバットB。12機がイラクへ、8機がシリアへ、10機がアルジェリアへ、7機がベラルーシへ、24機がアゼルバイジャンへ輸出された。
MiG-25BM(МиГ-25БМ
38機生産された偵察型のMiG-25RBから発展した敵防空網制圧(SEAD)型、1972年に開発が開始され、1982年に量産が開始された。偵察器材に代えてECM器材を搭載しており、それにより機首部が720mm延びている。対レーダー電波システム「ヤグアール」により、これにより対レーダーミサイルKh-58Uを運用できた。Kh-58Uは最大で4発を搭載できる。NATOコードネームはフォックスバットF。ベラルーシに12機が輸出された。
MiG-25RBV(МиГ-25РБВ
SRS-9ELINT(電子情報)器材と側視レーダーを搭載した、戦術偵察爆撃機(写真偵察機)型。NATOコードネームフォックスバットB。生産された1機は空中給油の試験機に改造。
MiG-25RBT(МиГ-25РБТ
戦術電波偵察機型。NATOコードネームフォックスバットB。3機はブルガリアへ、16機はウクライナへ輸出された。
MiG-25RBK(МиГ-25РБК
偵察カメラを搭載していない電子偵察型。NATOコードネームはフォックスバットD。16機がリビアへ、6機がインドへ輸出された。
MiG-25RBS(МиГ-25РБС
MiG-25RBKを元に側視レーダーを搭載した電子偵察型。NATOコードネームはフォックスバットD
MiG-25RBN(МиГ-25РБН
MiG-25RBにNAFA-75航空カメラ、Virazhステーション、主翼パイロンにFOTAB-100-140光照射爆弾を搭載した夜間写真偵察機型。
MiG-25RBSh(МиГ-25РБШ
MiG-25RBSのシステムをアップグレードした電子偵察型。NATOコードネームはフォックスバットD。4機がアルジェリアへ輸出された。
MiG-25PU(МиГ-25РУ
MiG-25Pを元に操縦席の前に新たに操縦席を一段低い位置に設置した複座練習機型。機種転換が目的であるが操縦席やハードポイントはそのままなので戦闘任務に従事することが可能。NATOコードネームはフォックスバットC。PU型7機はイラクへ、3機はリビアへ、2機がシリアへ、12機がベラルーシへ、4機がウクライナへ、4機がアゼルバイジャンへ、4機がジョージアへ、16機がトルクメニスタンへ輸出された。
MiG-25RU(МиГ-25ПУ
MiG-25Rを元に操縦席の前に新たに操縦席を一段低い位置に設置した複座練習機型。機種転換を目的にしているがパイロンはそのままであり戦闘にも使用可能。2機がカザフスタンへ、6機がアルジェリアへ、1機がブルガリアへ、2機がインドへ、4機がウクライナへ、8機がベラルーシへ、10機がアゼルバイジャンへ輸出された。
MiG-25MR(МиГ-25МР
1機のMiG-25RBを改造して制作した気象偵察機。

テストベッド機

MiG-25PDSL
1機のMiG-25PDを改造したECM試験機。
MiG-25PDZ
1機のMiG-25PDを改造した空中給油の試験機。
MiG-25M(МиГ-25М)/Ye-266M
1機のMiG-25PDを改造したR15BF2-300ターボジェットエンジン(乾燥時 98.04 kN (22,040 lbf)、アフターバーナー付き 129.71 kN (29,160 lbf))の試験機。
MiG-25M1
1機のMiG-25RBを改造したR15BF2-300ターボジェットエンジン(乾燥時 98.04 kN (22,040 lbf)、アフターバーナー付き 129.71 kN (29,160 lbf))を搭載した試験機。運用高度と上昇速度の増加、航続距離の延伸が計画されていた。
イズデリエ99
2機のMiG-25Pを改造したソロヴィヨーフD-30Fターボファンエンジンのテストに使用された機体。
MiG-25PDF (МиГ-25 ΠДГ)
1機製造されたMiG-25PDを元に一部のシステムや装備を簡略化した輸出型。兵装には、R-60(AA-8 エイフィド)空対空ミサイルが加えられていた。最終的には既存の機体を輸出した方が合理的と判断され試作で終わった。
MiG-25MP(МиГ-25МП
1機製造されたIzdeliye83(製品83)。試作名称はYe-155MPでMiG-31の原型機である。
MiG-25RBVDZ(МиГ-25РБВДЗ
1機のMiG-25RBVを改造した空中給油試験のための性能評価機体。DZは「空中給油」の略称。機首右側にプローブを備える。MiG-25の量産型に空中給油機能は付加されていない。この機能は後継のMiG-31に活かされている。
MiG-25RBShDZ(МиГ-25РБШДЗ
1機のMiG-25RBShを改造した空中給油の試験機型。MiG-25RBVのDZ型同様に機首右側に空中給油装置を組み込んだ試作型だが、レドームの延長と偵察コンポーネントのため位置が前方へ移動、その結果給油プローブは格納できなくなった。1980年後半に試験が行われたが、一方で原型機が既に給油システムを備えていたSu-24の偵察型、Su-24MRの試験が進行中であり、こちらがより有望と認められたため、MiG-25の航続距離の長大化および空中給油能力を付与する案は破棄された[14]

  1. ^ E-155とも書かれる。
  2. ^ It cost far less than titanium and allowed for welding, along with heat resistant seals.The MiG-25 was constructed from 80% nickel steel alloy, 11% aluminium , and 9% titanium .The steel components were formed by a combination of spot-welding , automatic machine welding and hand arc welding methods.
  3. ^ 雑誌『航空情報』出典。
  4. ^ 『ミグ戦闘機―ソ連戦闘機の最新テクノロジー メカニックブックス』原書房から。
  5. ^ 機体を本格調査 防衛庁 部外者を排除『朝日新聞』1976年(昭和51年)9月25日夕刊、3版、11面
  6. ^ 自爆装置を一部外す『朝日新聞』1976年(昭和51年)9月21日朝刊、13版、3面
  7. ^ ニッケル鋼の比重アルミニウム合金の3倍だが、強度も3倍なので使う鋼材の量は3分の1で済み、注意深く設計すればそこまで重い機体にはならない。また、機体をニッケル鋼にしたことでジュラルミンでは困難な溶接構造を用いることができた。そのため、リベット留のジュラルミン機体では機体の内側にシール材を手作業で塗布しなくてはならないのに対し、その作業が不要になり、手の入らない機体細部まで燃料タンクにすることができ、17,660 Lもの燃料搭載が可能となった。更なる溶接機体のメリットは、燃料タンクに亀裂が入って燃料漏れを起こしても、すぐさま破損箇所がわかる事。この機体の隅々まで収納された燃料が機体の熱を吸う事で空力加熱も抑えられた。弱点はニッケル鋼はアルミニウム合金に比べて弾性係数(ヤング率)が2.5倍から3倍高いので、機体が強度不足に陥る点。
  8. ^ F-15C Eagle vs MiG-23/25: Iraq 1991. Doug Dildy, Tom Cooper, Bloomsbury Publishing, 2016. P.35
  9. ^ Steve Davies. F-15C Eagle Units in Combat, с. 53.
  10. ^ 『週刊ワールドエアクラフト』2001/6/12号、P11より。
  11. ^ ラケーシュ・クリシュナン・シンハ (2016年9月29日). “ソ連中尉の日本亡命でMiGに恩恵”. ロシア・ビヨンド日本語版. 2021年7月23日閲覧。
  12. ^ Syria's MiG-25s fly again
  13. ^ Azerbaijan to modernize MiG-25 foxbats included in Air Forces’s inventory
  14. ^ МАПО МиГ МиГ-25РБВ”. www.airwar.ru. 2023年5月27日閲覧。
  15. ^ Спирт (spirt: アルコール), Воз (Voz: 荷馬車) 。「エアコンバット DVD コレクション 超高速迎撃機フォックスバットのすべて」に、この愛称について言及している場面がある。ただし、このDVDは日本語音声と英語音声で収録されており、日本語音声では「スピルトヴォース」ではなく「スピオトフォズ」と発音している。一方、英語音声では「スピートフォーズ」と聞こえる。しかし本項では「ロシア語綴りに基づく日本語表記」を用いることとし、「スピルトヴォース」とした。
  16. ^ ラケーシュ・クリシュナン・シンハ (2016年9月29日). “How a Soviet pilot's defection showed West the secret MiG”. UPI通信社. 2021年8月11日閲覧。
  17. ^ 世界の傑作機『No..83』出典。





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