B・A・R 007 重量規定違反騒動

B・A・R 007

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/01 16:35 UTC 版)

重量規定違反騒動

サンマリノGP終了後の車検において、3位入賞したバトンのマシンから燃料を抜き取ったところ、車重が最低重量規定の600kg[8]よりも5.4kg軽いことが判明した。燃料のメインタンクを空にした状態では600kgを上回っていたが、予備タンク(コレクタータンク)に余っていたガソリンまで抜くと規定値に達しなかった。

この年のホンダエンジンは予備のコレクタータンクに一定量のガソリンを溜めておくことで、車位変化に影響されず燃料を安定供給する仕組みになっていた。市販車でも使用される装置であり、事前のマレーシアGPでFIA技術委員の査察を受けた際には問題とされなかった。B・A・Rはコレクタータンク内のガソリンは構造上「使えない燃料」であると説明。レース中常に600kg以上の車重で走行していたというデータを提出し、レーススチュワードの理解を得て、一旦はリザルトが認められた。

しかし、国際自動車連盟 (FIA) はコレクタータンクの燃料が重量規定をクリアするための「バラスト[9]」ではないかと主張。レーススチュワードの判断を不服とし、国際控訴裁判所に対して「B・A・Rの2005年シーズンの選手権からの除外」と「罰金100万ユーロ」を求めて提訴した。

裁定では故意かつ悪意のある反則行為は認められないと判断されたが、B・A・R側がレギュレーションを独自解釈したことが問題視された。車体の最低重量に燃料分を含めるのかどうかは明文化されていなかったが、1994年にレース中の再給油が認められて以来、ガソリンをすべて抜いた状態とするのが通例となっており、チームがレギュレーションの確認義務を怠ったことが処罰理由とされた。

しかし、FIAの強硬姿勢には政治的な思惑も垣間見られた。当時はF1に参戦する自動車メーカーがFIAと対立し、グランプリ・ワールド・チャンピオンシップ(GPWC)→グランプリ・マニュファクチャラーズ・アソシエーション(GPMA)を結成して2008年から独立シリーズを立ち上げると宣言していた。ホンダはGPWC側に接近し、GPMAへの改組時にメンバー入りしていたため、政争のスケープゴートにされたという見方も存在した[10]

B・A・Rは民事訴訟も検討したがこの裁定を受け入れ、出場停止明けのヨーロッパGP以降は6kgのバラストを余分に搭載して出走した。


  1. ^ a b c d e 『モーターファン・イラストレーテッド F1のテクノロジー3』三栄書房、2011年、p.78頁。ISBN 9784779611933 
  2. ^ ホンダでの呼称はクイックシフト。
  3. ^ a b 『F1速報』2005年2月10日号「新車情報号」ニューズ・パブリッシング、2005年、p.2
  4. ^ 『F1速報』2005年2月10日号「新車情報号」ニューズ・パブリッシング、2005年、p.15
  5. ^ 『F1速報』2005年2月24日号「シーズン展望号」ニューズ・パブリッシング、2005年、p.60
  6. ^ F1世界選手権第1戦オーストラリアGP - 本田技研工業(2012年2月29日閲覧)
  7. ^ この年導入された2レース1エンジン規定では、「周回数の半分以上を越えてからリタイヤしたマシンは、10グリッド降格のペナルティー無しで次戦エンジン変更が可能」というルールの抜け道があった。
  8. ^ 車両重量+ドライバーの体重の合計が600kg(予選では605kg)を上回らなければならない。
  9. ^ 車両に搭載するバラストは固形である必要があり、液体(冷却水や燃料)をバラストとして使用することはできない。
  10. ^ 『レーシングオン 2005年8月号』 イデア、2005年、p.70。
  11. ^ a b c d e 『モーターファン・イラストレーテッド F1のテクノロジー3』三栄書房、2011年、p.88頁。ISBN 9784779611933 


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