2012年の白馬岳大量遭難事故 事故の経緯

2012年の白馬岳大量遭難事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/26 00:37 UTC 版)

事故の経緯

雪で覆われた白馬岳(1999年5月)

5月3日

北九州市の63歳から78歳の男性医師6人が、栂池高原スキー場長野県北安曇郡小谷村)からゴンドラリフトを利用して入山し、栂池ヒュッテに1泊した[2]

翌5月4日の登山計画は白馬乗鞍岳小蓮華山白馬岳を経て白馬山荘に宿泊することを予定していた[2]

5月4日

2012年(平成24年)5月4日天気図

午前5時頃、6人は栂池ヒュッテを出発[1]。この時点の天候は晴天で無風、汗ばむほどの気温があった[1]。しかし午後になって天候が急変し[1]、みぞれ混じりの強風が吹き始めた[2]。尾根は氷点下2度まで冷えたほか、風は風速20メートル以上の強風が吹き続けた[3]

午後1時頃、6人は小蓮華山付近で単独行の登山客に[2]、午後1時半頃には小蓮華山から白馬大池方面に10分ほど下った地点で10人パーティの登山客に、それぞれ目撃されている[4]。また、すれ違った登山客のうち東京の60代男性らのグループは6人が「先生、どうしましょうか[2]」と相談している声を聞いている[4]

この日、天気予報は午後から天候が崩れることを予報しており、6人が出発した栂池ヒュッテによれば、6人以外にも白馬岳に別の1組が向かったものの途中下山しており、また6人以外の宿泊客も宿泊をキャンセルしたり登山計画を変更するなどして急変した天候に対処していた[4]。そして、前述の小蓮華山で6人を見かけた単独行の登山客は6人より先行し6人とほぼ同じコースを辿って先に6人が宿泊を予定していた白馬山荘に到着しており、スタッフに対し「船越ノ頭で稜線に出たとたん、みぞれ混じりの強烈な向かい風に見舞われた」と告げている[2]

午後5時40分頃、「北アルプス・白馬岳を登山中の6人パーティと連絡がつかない」という届出が6人の家族から大町警察署に対してなされた[2]。届出を受けた大町警察署の署員は6人の携帯電話に電話をかけてみたが、6人中5人にはつながらず、1人は呼び出し音はするものの応答がなかったという[2]

5月5日

午前5時40分、長野県警の捜索ヘリが松本空港を出発[2]。しかし、現場付近には雲が掛かり、そして風も相当に強かったため、接近することができないまま帰投した[2]

午前8時頃になって、三国境付近を通りかかった登山者が稜線で倒れている6人の登山者を発見。白馬山荘を通じて警察に通報した[2]

午前8時20分頃、天候が少し回復したため、長野県警の捜索ヘリが再度現場へ向かったところ、小蓮華山で滑落した別の登山者を発見[2]。そのため、この遭難者を救助したのち、再び現場へ引き返した[2]

午前9時41分、長野県警の捜索ヘリが通報のあった場所で6人が倒れているのを発見。6人中5人は1か所に集まっており、うち2人は手袋をしておらず、近くに手袋が落ちていた[2]。もう1人はその場から滑落したらしく、100メートルほど下で倒れていた[2]。遭難者の体の一部は厚さ10センチメートルほどの氷に覆われた氷漬けとなっており、地面に張り付いていた[2]。そのため、救助隊員は遺体を傷つけないようにピッケルで氷を割ってヘリコプターに収容した[2]

遺体に付着した氷は通常の吹雪で付着するようなエビのしっぽ状ではなく、つららが成長するような形となっており、これはみぞれのような氷混じりの雪が、猛烈な風によって氷化したものと考えられている[2]

遺体は2人ずつ3回に分けて搬送された。遭難者の荷物も回収する予定であったが、再度ガスが立ち込めてきたため、近くにあった2つのザックを回収するのがやっとであり、残りの荷物は、後日、白馬村山岳遭難防止対策協会の隊員によって回収された[2]

6人の死因は、いずれも低体温症であった[2]


  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 日経2012.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u jro2012.
  3. ^ a b 毎日2012, p. 1.
  4. ^ a b c 毎日2012, p. 2.


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