遠州弁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/23 22:34 UTC 版)
語彙
名詞
- あいさ
- あいだ、間
- あいまち
- 怪我
- あっこ、あっこら、あっこいら
- あそこ、あそこら
- あわくい、あわっくい
- 慌て者、粗忽者
- あんき
- 安心
- あんも、あんもう
- 餅、あんころ餅、馬鹿、馬鹿者
- いみ、えみ、いみり、えみり
- (陶磁器などの)ひび、ひび割れ
- いらんこん
- (1)せずともよい余計な行為・動作
(2)おせっかい、でしゃばった差し出がましい行為 - 裏盆(うらぼん)
- 本来は「お盆」という言葉自体が「盂蘭盆会(うらぼんえ)」の省略形だが、遠州の一部では8月15日の「表盆」に対し、早死にした子どもを供養する地蔵盆(8月24日)を裏盆という。
- おっさま 、おっさん
- お坊さん、僧侶(頭高型アクセント)
- おとび
- センダングサ類の種子
- かえち
- 着替え用の衣類、取り替え用のもの
- くろ、ぐろ
- (部屋などの)すみ
- けった、けったあ
- 自転車(名古屋弁からの新方言)
- 国1(こくいち)
- 国道1号線、または旧国道1号線(県道415号線)
- こっくう
- コクワガタ
- ころ
- 自転車の補助輪や台車等の車輪、キャスター
- こん
- 事
- ごんど
- ごみ
- 在所(ざいしょ)、お在所
- 実家
- 舌ばか
- 味覚障害、味覚音痴
- 舌べろ
- 舌、べろ(同じ意味の言葉を繰り返している。また知多弁では「舌べら」と言う。
- 衆ら
- 人たち(「あの衆ら」(指示代名詞)、「若い衆ら」(形容詞)、「女の衆ら」(名詞+格助詞「の」)などの形で用いられる。複数の人を表す「衆」に、更に複数を表す「ら」が付いている)
- 新家(しんや)
- 分家。本家(ほんや)の対義語。
- 線引き(せんひき)
- 定規
- ため
- 同い年(チャットや掲示板で若者に多く使われているが、元々は静岡県の方言である)
- ちょんびい
- ちょっかいを出す人、ふざける人(動詞「ちょびちょびする」〈後述〉よりの派生語)
- 連れ
- 友人、知り合い
- てんこちょ
- てっぺん、頂上
- とびつか
- センダングサ類の実
- どべ
- 最下位
- ながらみ
- ダンベイキサゴ(食用巻き貝)。
- なかめしぐるりあん
- ぼた餅、おはぎ(「中は飯、ぐるり(外)は餡」の意)
- ねち
- 歯茎
- ねぶつ
- 出来物
- はいぼ
- 灰
- ばかっつら
- 馬鹿者、阿呆
- ひぼ
- 紐
- ほそば
- イヌマキ
- ぼっちょ
- 出っ張り、ボタン、スイッチ
- ぽんぽん
- オートバイ、自動二輪、原付(平板型アクセント)
- 本家(ほんや)
- 本家(共通語では「ほんけ」)。新家(しんや)の対義語。
- もも
- 小果実
- やんぞうこんぞう
- イヌマキの実
- 横輪
- 自転車の補助輪
- 悪さん坊
- いたずらっ子
動詞
- あおたえる
- うろたえる、うかうかする
- いぜる、えぜる
- いじる
- 居たった
- 居た
- いる
- 五段動詞の連用形の下に付いて、可能の意を表す。(=得る)
- 頭を切る
- 《慣用句》髪を切る、散髪する
- いがむ、えがむ
- 曲がる、歪む
- いきれる
- 蒸し暑く感ずる、蒸し暑さにまいる
- いのく、いぬく
- 動く
- うっちゃらかす、うっちゃらかいとく
- 捨て置く、放っておく、ほったらかす
- うっちゃる
- 捨てる
- おやす
- 悪くする、壊す
- かある
- 転ぶ、倒れる、ひっくり返る
- かう
- (カギを)かける、締める
- かじる、かじくる
- 引っ掻く(静岡弁では「かじくる」は「掘る」の意)
- かっぱしゃぐ
- 乾ききる、からからに乾燥する
- かまう
- からかう、いじめる
- かわばる、かあばる
- 乾ききってこびり付く
- きさる/きせる
- (容器などのふたが)閉まる/(〜を)閉める
- くすがる/くすげる
- (とげなどが)刺さる/(〜を)刺す
- くっちゃべる
- 喋る
- 狂う
- 騒ぐ
- けっからかす
- 蹴飛ばす、(足などを)ぶつける
- 業(ごう)が沸ける
- 《慣用句》怒る、頭にくる、腹が立つ
- こく
- 言う、ほざく、ぬかす(やや乱暴な言い方)
- こさえる
- 作る、こしらえる
- こぞむ、こどむ
- 沈殿する
- こっくらかす
- (人などを)殴る(頭高型アクセント)
- 提(さ)げる
- 持ち上げる
- しゃりしゃりする、しゃあしゃあする
- 小生意気な態度をとる、ふざける
- しょろしょろする
- ぐずぐずする、のろのろと動く、ぼさっとする
- せせる、せせくる
- 触れる、触る、いじる
- 空(そら)を使う
- 《慣用句》とぼける、知らんぷりする
- 建たった
- 建った
- たつ、たてる
- (戸などを)閉める
- 血が死ぬ
- 《慣用句》内出血する
- ちみくる
- つねる
- ちょうける
- ふざける
- ちょびちょびする
- ちょっかいを出す、ふざける
- ちんぶりかく、ちんぷりかく
- ふてくされる、ひがむ、いじける
- つける
- (食べ物を)よそう
- つっからかす
- 突き飛ばす
- つぶれる
- (機械などが)故障する、壊れる(近畿方言の「つぶれる」と意味はほぼ同じ。一般的な「潰れる」の意味でも用いられる)
- 飛ぶ
- 走る、駆ける
- とんまえる、とんます
- 捕まえる
- 撫ぜる
- 撫でる
- 飲んばめる
- (食物等を)喉に詰まらせる
- 挟がる/挟ぐ/挟げる
- 挟まる/挟む/挟ませる
- はぜる、はでる
- (風船などが)はじける、破裂する、つぶれる
- 離らかす
- 離す
- はぶく、はぶせにする
- 仲間はずれにする
- ぶっさらう
- (人などを)殴る、酷い目に遭わせる
- ふんずばす
- 踏みつぶす
- へす
- 押す
- へち曲がる/へち曲げる
- ひん曲がる/ひん曲げる
- ぼう、ぼっかける
- 追う、追いかける
- ほかし投げる
- 放り投げる
- ほかす
- 放る、放っておく、捨てる
- ほじく
- (結び目を)解く、ほどく
- ぼったくる
- 追い立てる、追い回す(一般的な「不当に高い値段を要求する」意でも用いられ、どちらなのかは文脈で判断)
- ぼっ立つ
- 何もせずにぼさっと突っ立つ
- 混ぜる
- 仲間に入れる
- 丸かる/丸ける
- 丸まる/丸める
- 漏おる
- 漏れる
- もじかる
- 絡まる
- 持ちに行く
- 取りに行く
- やっきりする、やっきりこく
- 怒る、頭にくる、腹が立つ
- ゆすぐ
- すすぐ
- よさり掛かる
- 寄り掛かる、もたれ掛かる
- 寄せる
- (洗濯物を)取り込む
- 笑わかす、笑かす
- 笑わせる
形容詞
- いやったい
- (1)したくない、気乗りしない
(2)不愉快な、気に障る - えらい
- (疲労・病気などにより)つらい、苦しい、大変な
- 横着い
- 横着な(形容動詞の形容詞化)
- おおぼったい
- (まぶたが疲労などにより)覆い被さるように重い、(体の一部が病気などにより)腫れぼったい、むくれている
- おぞい
- 弱い(ボロい)、テストの点が悪い
- おとましい
- 苦しい、だるい(静岡弁では「怖い」の意)
- 黄いない
- 黄色い、黄色の
- けっこい
- 綺麗な、美しい(「こ」にアクセント。形容動詞に同形語あり)
- こさむったい、こさぶったい
- 肌寒い、薄ら寒い
- こそばい、こそばったい、こそばゆい
- くすぐったい
- こわい
- 堅い、強い
- こんきい
- (「えらい」に同じ)
- ささがしい
- せわしない、騒々しい
- さぶい
- 寒い
- じゅるい
- 水気や汁気が多い、(地面が)ぬかるんでいる、(茶碗蒸し・ゼリー・プリンなどが)水っぽく軟らかい
- 上手(じょうず)い
- 上手な(形容動詞の形容詞化)
- 丈夫い
- 丈夫な(形容動詞の形容詞化)
- しょんない
- 仕方ない(「しようがない」の転訛)
- ずっこい
- ずるい
- せばい
- 狭い
- せんしょったい
- 穿鑿(せんさく)好きな、根掘り葉掘り聞きたがる
- とろい、とろくさい
- (1)のろまな、鈍臭い
(2)馬鹿な、知恵が回らない
※「とろくさい」は、「とろい」よりもきつい表現になる。 - とんじゃかない
- 頓着しない、構わない、気にしない、どうでもいい
- 賑やかい
- (1)賑やかな、活気のある、騒々しい(形容動詞の形容詞化)
(2)(視覚的に)派手な、ごてごてした - ぬくとい
- 温かい
- ひずるしい
- 眩しい
- ひゃっこい
- 肌寒い
- ひんしょったい
- 貧相な、貧乏臭い、みすぼらしい
- ふんごむ
- ぬかるみにはまる。(例:「じゅるいもんでふんごんだ」)
- ぶしょったい
- だらしない、汚い、格好悪い(「無精」+「たい」から変化したもの)
- まめったい
- 忠実(まめ)な、苦労をいとわない
- みがましい
- (1)(人の性格が)機を見るに敏な
(2)(物の造りが)しっかりしている、頑丈な - みるい
- (1)(果実などが)未熟な、熟れていない
(2)(子供の皮膚などが)やわらかい[注 3] - やごい
- (物の造りが)しっかりしていない、頑丈でない
- らんごくない、らんごかない
- 猥雑な、ひどく散らかっている、しっちゃかめっちゃかな
副詞
- えいかん
- (発音は「エーカン」)
(1)たくさん、多く
(2)「いい加減に」の縮約(ええかんせよ=いい加減にしろ) - がんこ
- とても、すごく、とんでもなく(形容動詞に同形語あり)
- ごてしょと
- ごまんと、山ほど、たくさん
- たっくう
- たくさん
- ちゃっと、ちゃっちゃと
- すぐに、急いで、さっと、さっさと
- ちょっくら
- 少し
- ちょっくらちょいと
- ちょっとやそっとでは
- ちんたら
- のろのろ
- どうに
- どういうふうに、どんな感じに(平板型アクセント)
- どっかこっか
- どこかしら、どことなく(「こ」にアクセント)
- 仲間で、なっかで
- 共用で
- なんしょ
- やたら、むやみに、なにかにつけ(平板型アクセント)
- はあ
- (1)既に、もう
(2)間もなく、じきに - みなきり、みなっきり
- 片っ端から、洗いざらい、全部
- やっと、やあっと
- 長い間、ずっと
形容動詞
- がんこ
- ひどい、凄まじい、とんでもない(副詞に同形語あり)
- ぎゅうぎゅうぱんぱん
- 物や人が多く、鮨詰めである
- けっこう、けっこ
- 綺麗に、美しく(「こ」にアクセント。形容詞に同形語あり)
- たわけ
- 馬鹿
- ちんちん
- 熱い(平板型アクセント)
- なりき
- がさつ、ぞんざい
- ねき
- 丁寧、細やか
- ひょんきん
- ひょうきん、洒脱、一風変わっている
- やっとぶり、やあっとぶり
- 久しぶり
連語
- いかん
- 駄目だ、いけない(最も頻繁に使われる)
- おえん
- 駄目だ、いけない(岡山弁の「おえん」と意味は全く同じ)
- かん
- 駄目だ、いけない(「いかん」の「い」が抜けたもの。名古屋弁ほど頻用はされない。)
感動詞
- やい
- おい(呼びかけ)
- やいやい
- しまった(後悔)、あーあ(落胆)、おいおい(いら立ち)
接頭辞
- ど〜
- とても〜、非常に〜(例)どすごいら
- (カ行、ハ行で始まる語の前につく場合は強調される語の最初の音が連濁を起こすことがある。例:どぎつい、ど速い(どばやい))
- どば〜
- とても〜、非常に〜(例)どばすごいに
- ばか〜
- ものすごく〜、非常に〜(例)ばかすごいに
- ※共通語では男性語とされるが、遠州地方では男女ともに用いられる。
接尾辞
- 〜さら
- 〜ごと
- 〜まるけ
- 〜だらけ、〜まみれ
注釈
- ^ 基本的に「おる」が優勢なのは浜名湖の西にある湖西市や、浜松市浜名区三ヶ日町などの愛知県に近い地域である。浜名湖より東の地域になると「いる」が優勢であり、「おる」は浜松市では聞かれることもあるものの頻度は低く、磐田市などの中遠地方になるとほとんど使われない。さらに掛川市などの東遠地方になると「おる」は全く使われなくなる。遠州弁 § 地域差も参照。
- ^ 前述の「おる」と同じく、基本的に「連用形+とる」が優勢なのは浜名湖の西にある湖西市や、浜松市浜名区三ヶ日町などの愛知県に近い地域である。浜名湖より東の地域になると「連用形+てる」が優勢であり、「連用形+とる」は浜松市周辺ではあまり用いられず、磐田市などの中遠地方になるとほとんど使われなくなる。さらに掛川市などの東遠地方では全く使われていない。遠州弁 § 地域差も参照。
- ^ 基本的に幼い、新鮮な事が前提。
出典
- ^ “方言文法全国地図PDF版ダウンロード 第1集―助詞編―(1989年刊) 第1図 雨が(降ってきた)”. 2022年8月11日閲覧。
- ^ “方言文法全国地図PDF版ダウンロード 第1集―助詞編―(1989年刊) 第13図 おれの(手拭)”. 2022年8月11日閲覧。
- ^ “方言文法全国地図PDF版ダウンロード 第1集―助詞編―(1989年刊) 第23図 大工に(なった)”. 2022年8月11日閲覧。
- ^ “方言文法全国地図PDF版ダウンロード 第1集―助詞編―(1989年刊) 第9図 そんなことを(言うな)”. 2022年8月11日閲覧。
- ^ “方言文法全国地図PDF版ダウンロード 第1集―助詞編―(1989年刊) 第21図 見に(行った)”. 2022年8月11日閲覧。
- ^ “方言文法全国地図PDF版ダウンロード 第1集―助詞編―(1989年刊) 第16図 (ここに)有るのは”. 2022年8月11日閲覧。
- ^ “方言文法全国地図PDF版ダウンロード 第1集―助詞編―(1989年刊) 第32図 田中という人”. 2022年8月11日閲覧。
- ^ “方言文法全国地図PDF版ダウンロード 第1集―助詞編―(1989年刊) 第9図 そんなことを(言うな)”. 2022年8月11日閲覧。
- ^ “方言文法全国地図PDF版ダウンロード 第1集―助詞編―(1989年刊) 第21図 見に(行った)”. 2022年8月11日閲覧。
- ^ “方言文法全国地図PDF版ダウンロード 第1集―助詞編―(1989年刊) 第32図 田中という人”. 2022年8月11日閲覧。
- ^ NHK放送文化研究所(2016年)『日本語発音アクセント新辞典』
- ^ 日本放送出版協会『NHK編 日本語 発音アクセント辞典 改訂新版』ISBN 4-14-011040-6 ―解説・付録―〈発音アクセントの分布図〉第4図 母音の無声化の分布 p.68 および 〈巻末折り込み〉 巻末図1 方言色の濃い音声特色の分布図
- ^ 平山輝男ほか編『日本のことばシリーズ22静岡県のことば』(明治書院、2002年)p.5-p.9
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