過ぎ去りし日々
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解説
レコーディングに至る経緯
1980年9月に完成し、11月に発売予定だったアルバム『想いは果てなく〜母なるイングランド』が、ダーク・ホース・レコードの販売元であるワーナー・ブラザース・レコードの社長モー・オースティンから収録曲の一部とジャケットの差替えを命じられたことから、リリースが延期されてしまった。その頃ロサンゼルスでの新しいアルバム用のレコーディング・セッションを終えてロンドンに戻ってきたスターから、楽曲の提供を依頼された。ハリスンは11月19日から25日にかけて自宅スタジオであるフライアー・パーク・スタジオで行われたレコーディング・セッションで本作と「ラック・マイ・ブレイン」の2曲を提供し[1]、キーボードにアル・クーパー、ベースにハービー・フラワーズ、パーカッションにレイ・クーパーという布陣で[2]、スターのボーカルとドラムを録音した[3][注釈 1]。ところが、スターは本作のボーカルが彼の声域に対して高すぎると感じ[4]、歌詞についても気に入らなかった[5]ため、ハリスンは自分のアルバムの差し替え候補曲とすることにした[6]。
共同プロデュースをレイ・クーパーに依頼し、アルバムの再レコーディングを開始した矢先、12月8日にレノンがニューヨークの自宅アパート前で射殺された[7]。この日たまたま本作のボーカル差し替えのためのレコーディングを行っていたハリスンは、翌日の未明に訃報を知ると大きなショックを受けた[8]。デレク・テイラーを通じて、レノンに敬意を表する声明を発表するとともに、バハマからニューヨークへ移動中のスターにも電話で話をした。ハリスンは音楽で心を癒そうと考え、レコーディングを続ける決心をした[注釈 2]。
レコーディング
翌月、追悼歌としてレノンを称える歌詞に書き換え[6]、ボーカルを再度録音し直した[10]。書き換えられた歌詞の中には、「Imagine[注釈 3]」や「All You Need Is Love」とレノンが作曲した楽曲のタイトルや、レノンを殺害したマーク・チャップマンについての言及[注釈 4]が見られる[10]。
その後、ジョージ・マーティンとジェフ・エメリックを伴って[注釈 5]マッカートニー夫妻とウイングスのデニー・レインがスタジオを訪れた。アルバム『タッグ・オブ・ウォー』に収録する予定の「ワンダーラスト」にハリスンのギター演奏をオーバーダブするためだったのだが、ハリスンの提案で3人のバッキング・ボーカルを録音することになった[11][注釈 6]。このため、ハリスン、マッカートニー、スターの3人が一堂に会したわけではなかったが、結果的に1970年1月の「アイ・ミー・マイン」のセッション以来の共演した楽曲となった[注釈 7]。
リリース
1981年5月、「神のらくがき」とのカップリングで[注釈 8]アルバムからの先行シングルとして発売された。アメリカの『ビルボード』誌のHot 100では最高位2位[12]を記録し、同誌のアダルト・コンテンポラリー・チャートでは第1位を獲得した[13]。全英シングルチャートでは最高位13位[14]だった。
後に『ダーク・ホース 1976-1989』や『レット・イット・ロール ソングス・オブ・ジョージ・ハリスン』などのコンピレーション・アルバムに収録された[10]。また1992年に発売されたライブ・アルバム『ライヴ・イン・ジャパン』には同年の日本武道館公演でのライブ音源が収録された[15]。2010年、AOL Radioのリスナーによる投票「10 Best George Harrison Songs」の第6位にランクイン[16]。
注釈
- ^ 他にスー・トンプソンの「 ユー・ビロング・トゥ・ミー」のカバーも録音した。
- ^ この日、レイとドラマーのデイヴ・マタックスと共に「ブラッド・フロム・ア・クローン」を予定通り録音した[9]。
- ^ 歌詞の中では「You were the one who imagined it all」と歌われている[10]。
- ^ 歌詞の中では「the devil's best friend」と表現されている[10]。
- ^ アルバムのライナーノーツでマーティンとエメリックに感謝の意を表している。
- ^ 結局「ワンダーラスト」用のハリスンのギター演奏は、録音されることはなかった。
- ^ なお1979年5月19日、エリック・クラプトンとパティ・ボイドの結婚式に揃って参列した3人は「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を演奏している[10]。
- ^ この曲はレノンの生前に録音されたものだったが、人生の儚さと精神的な目的を認識することの重要性を歌っている歌詞がカップリングにふさわしいと考えられた。
出典
- ^ Womack 2009, p. 178.
- ^ a b Leng 2006, p. 221.
- ^ Badman 2009, p. 609.
- ^ Rodriguez 2010, p. 433.
- ^ Madinger 2000, p. 460.
- ^ a b MacFarlane 2019, p. 132.
- ^ “『12月8日はなんの日?』ジョン・レノンの命日、没後40年”. Billboard JAPAN. 阪神コンテンツリンク (2020年12月8日). 2022年8月24日閲覧。
- ^ Ray Coooper, Uncut, May 2020
- ^ Dave Mattacks, Uncut, May 2020
- ^ a b c d e f Womack 2014, p. 28.
- ^ Badman 1999.
- ^ a b “Billboard Hot 100”. Billboard (1981年7月4日). 2022年8月29日閲覧。
- ^ a b “George Harrison Chart History (Adult Contemporary)”. Billboard. 2022年8月29日閲覧。
- ^ a b "Official Singles Chart Top 100". UK Singles Chart. 2022年8月29日閲覧。
- ^ “Harrison Live: Here Comes The Fun”. Billboard (Nielsen Business Media) 104 (27): 3. (July 4, 1992). ISSN 0006-2510 .
- ^ “10 Best George Harrison Songs”. AOL Radio Blog. AOL Radio. 2022年8月31日閲覧。
- ^ Kent, David (1993). Australian Chart Book 1970 - 1992. St Ives, N.S.W.: Australian Chart Book. ISBN 0-646-11917-6
- ^ "Austriancharts.at – George Harrison – All Those Years Ago" (in German). Ö3 Austria Top 40. 2022年8月29日閲覧。
- ^ "Ultratop.be – George Harrison – All Those Years Ago" (in Dutch). Ultratop 50. 2022年8月29日閲覧。
- ^ “Top RPM Adult Contemporary: Issue 6078”. RPM. Library and Archives Canada. 2022年8月29日閲覧。
- ^ “Top RPM Singles: Issue 363”. RPM. Library and Archives Canada. 2022年8月29日閲覧。
- ^ “The Irish Charts - Search Results - All Those Years Ago”. Irish Singles Chart. 2022年8月29日閲覧。
- ^ a b “Hit Parade Italia - Top Annuali Single: 1981”. www.hitparadeitalia.it. 2022年8月31日閲覧。
- ^ “charts.nz - George Harrison - All Those Years Ago”. Top 40 Singles. 2022年8月29日閲覧。
- ^ "Norwegiancharts.com – George Harrison – All Those Years Ago". VG-lista. 2022年8月29日閲覧。
- ^ "Swedishcharts.com – George Harrison – All Those Years Ago". Singles Top 100. 2022年8月29日閲覧。
- ^ "Swisscharts.com – George Harrison – All Those Years Ago". Swiss Singles Chart. 2022年8月29日閲覧。
- ^ “George Harrison Chart History (Mainstream Rock)”. Billboard. 2022年8月29日閲覧。
- ^ “Cash Box Top 200 Singles”. Cash Box: 4. (27 June 1981).
- ^ “Single - George Harrison, All Those Years Ago”. www.officialcharts.de. GfK Entertainment. 2014年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月29日閲覧。
- ^ “Top 100 Singles of 1981”. RPM. Library and Archives Canada. 2022年8月31日閲覧。
- ^ “Number 1 Awards”. Billboard (Nielsen Business Media) 93 (51): YE-9. (December 26, 1981). ISSN 0006-2510 .
- ^ “Cash Box YE Pop Singles - 1981”. cashboxmagazine.com. 2022年8月31日閲覧。
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