補助翼 概要

補助翼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/06 09:51 UTC 版)

概要

旋回飛行時での機体に掛かる力の釣り合い。
Lが旋回飛行時の揚力、θは機体の傾き(バンク)角度、Lcosθが旋回飛行時の揚力の垂直分力、Lsinθが旋回飛行時の揚力の水平分力、Fが遠心力、Wが重力。

主翼と尾翼を備えた一般的な形状の飛行機では、主翼の後縁の外側に取付けられており、飛行機のロー軸周りのローリング飛行を行う際や旋回飛行を行う際に使用される。

飛行機が機体を右に傾けたい場合には、以下の操作により行う。

  1. 操縦席にある操縦輪を時計回りに回転させるか、操縦桿を右に倒す。
  2. 左翼の補助翼が下がるのと同時に、右翼の補助翼が上がる。
  3. 左翼の揚力が増加すると同時に、右翼の揚力が減少する。
  4. 重心まわりに、機体後方から見て(機体を前後に貫くロール軸について)右回りのモーメントが発生し、機体が右へ傾く。

旋回飛行では、旋回の際に一定の旋回半径を保っていかなければならないため、右に旋回飛行をしたい場合には、以下の操作により行う。

  1. 機体を右へ傾かせた後、操縦席の下にある右側の方向舵ペダルを踏む。
  2. 機体後方にある垂直尾翼の方向舵(ラダー)が右に曲がる。
  3. 機体が右旋回飛行を行う。

旋回飛行の場合

旋回飛行には、求心力と遠心力とが釣合って、高度と旋回半径が変わらない旋回する定常旋回、求心力より遠心力が大きくなり、外側に滑りながら旋回する外滑り旋回、遠心力より求心力が大きくなり、内側に滑りながら旋回する内滑り旋回がある。

定常旋回の際に機体に掛かる力の釣り合いの図を使用して説明すると、機体が旋回のため傾いた場合、揚力の鉛直分力Lcosθと揚力の水平分力Lsinθが発生する。その後に方向舵(ラダー)を操作してヨー軸周りの旋回を行なうが、もし方向舵の操作を行なわないと、傾いた側に横滑り(スリップする、スベるなどと称する)を起こす。傾きによるスリップをうまく方向舵の操作で打ち消すと、揚力の鉛直分力Lcosθと重力W、揚力の水平分力(求心力)Lsinθと遠心力Fが共に釣り合う。

旋回飛行時には、遠心力が発生するため、機体に加速度が加わっており、その程度を表すものとして荷重倍数を用いている。荷重倍数は傾きの角度に比例して大きくなるため、搭乗者にとっては重力が増加したようにしか感じられず、横向きの力(遠心力)などは感じない(ただし傾きが深くなるとこの垂直Gの増加は著しく増え、60度バンクでは2G = 地上などで安静時の2倍)。また、傾きにより機体の揚力が減少するため、旋回飛行時の失速速度は、水平飛行時よりも大きく、通常の水平旋回では、それを補うために機首上げ(ピッチ軸周りに機首上方向回転)およびパワー増加操作を行なうと、sin(バンク角)×sin(ピッチ角)だけのヨー軸周り右旋回のモーメントが発生する。

他の動翼との複合

テイルロンを作動させたF-16

一般的に補助翼は独立した動翼だが、一部の飛行機では他の動翼の役割を兼ねているものがある。

  • 補助翼(エルロン)とフラップを兼ねたものはフラッペロンと呼ばれる。
  • デルタ翼機などの水平尾翼を持たない飛行機で、補助翼と昇降舵(エレベーター)を兼ねたものはエレボンと呼ばれる。
  • 水平尾翼を持つ飛行機で、昇降舵を左右独立して動かすことにより補助翼としての働きを持たせたものはテイルロンと呼ばれる。テイル(尾翼)とエルロンを組み合わせた造語。
  • スポイラーを左右独立して動かすことにより補助翼としての働きを持たせたものはスポイエロンと呼ばれる。
  • 大型高速機の場合には、左右の主翼後縁の外側と内側に2つの補助翼を持っており、前者をアウトボード・エルロン、後者をインボード・エルロンと呼ばれている。低速飛行時では、この2つの補助翼とスポイラーを作動させ、高速飛行時では、内側の補助翼とスポイラーだけを作動させる。

前二者は元になる2種類の動翼が同じ場所にあるため兼用とされたものだが、後二者は後述する操縦性の問題を解消するために採用される。




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