裁判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/30 09:35 UTC 版)
どの国家機関によるどのような行為が「裁判」と呼ばれるかは、必ずしも一様ではない[1]が、現代の三権分立が成立した法治国家においては、「裁判」と言うと一般的には(日常的には)、国家の司法権を背景に、裁判所(訴訟法上の裁判所)が訴訟その他の事件に関して行うもの、を指していることが多い。だが、裁判と言っても国家機関が行うものとも限られておらず、国家間の紛争について当事国とは別の第三者的裁判所(国際裁判所)が国際法に基づいて法的拘束力のある判決を下し解決する手続である国際裁判というものもある。
日常用語としては、裁判所で行われる手続自体を「裁判」ということが多いが、法律用語としては、裁判所が、法定の形式に従い、当事者に対して示す判断(またはその判断を表示する手続上の行為)をいう。
概説
裁判というものは、理論的に概観すると2種類ある。そのひとつは、事件の紛争解決し当事者の権利を保護するために、ある「訴訟の目的」(訴訟物)についてなされる実体裁判であり、(その手続的な面については訴訟法の規定に従ってはいるが)この実体裁判というものの内容は実体法の適用によって定まっている。もうひとつは、訴訟手続上のことがらについてなされる裁判であって[注釈 1]、この種の裁判は訴訟法だけに依拠しており、実体法とは直接の関連はない[2]。 裁判にはこれら2種がありはするが、裁判制度の肝心な部分は前者の実体裁判である[2]。
現代法学では、裁判は「事実認定」と「法律の適用」の2段階に分けて論じられている[2]。
ここでいう「事実」、すなわち判決の基本となる「事実」には、不要証事実と要証事実がある。不要証事実は、裁判所の認定権が排除されているのに対し、要証事実の認定(つまり、主張されていることが本当に起きたのか起きていないのかの真偽を判断すること)は、証拠に基づいて裁判所の自由な心証判断によってなされる[2]。
事実認定が行われたら、次に、この「事実」に対して法律を適用することになる。この「法律の適用」は裁判所の専権である[2]。
なお、判決の基本となる事実認定とは、単なる客観的事実の認定だけではなく、そこにはしばしば法的な価値判断が加わる。また、法律の適用には、抽象的な法律解釈が問題となってくる。このようにして、個々の裁判の過程は、事実認定と法律の解釈・適用が相互に影響しあって組み立てられており、その内容を構成しているのである[2]。
裁判数
日本
日本弁護士連合会によれば、2006年の日本での年間の民事裁判・行政裁判の数は合わせて、10万人あたり約116件であった[3]。
ドイツ、フランス
2003年の日本弁護士連合会の報告書によればドイツにおける訴訟事件数は日本の5倍、フランスは7倍[4]。
英国
2007年のイングランドとウェールズにおける民事裁判は、年間10万人あたり約3600件で日本の約31倍(なお裁判官総人口は10万人あたり2.22人であり、日本よりも少ない)[5]。裁判制度の利用が容易であること、また法が整備されていることを示している[要出典]。
注釈
出典
- ^ 兼子一 1959, p. 1.
- ^ a b c d e f 『日本大百科全書』小学館。「裁判」【裁判の種類】内田武吉、加藤哲夫 執筆担当。
- ^ 日本弁護士連合会『2008年版弁護士白書』45頁、2009年。日本弁護士連合会(2014年10月18日アーカイブ)
- ^ 日本弁護士連合会『「弁護士報酬敗訴者負担の取扱い」に関する日本弁護士連合会の意見』、2003年。首相官邸(2013年1月29日アーカイブ)。日本の人口当たりの民事一審訴訟件数は「訴訟社会として知られるアメリカとは比べるべくもなく、ドイツの5分の1、フランスの7分の1にすぎない」。
- ^ J. Mark Ramseyer & Eric B. Rasmusen, Comparative Litigation Rates, 2010年。5頁、9頁。
- ^ 兼子一 1959, p. 4.
- ^ 裁判所職員総合研修所 2010, p. 259.
- ^ 裁判所職員総合研修所 2010, p. 258.
- ^ 梶村太市 & 徳田和幸 2007, pp. 409-.
- ^ 裁判所職員総合研修所 2011, p. 458.
- ^ a b c 兼子一 1959, p. 220.
- ^ 難波美緒 2014, pp. 147–148.
- ^ 公事上聴一件 4巻国立国会図書館デジタルコレクション
- ^ 君津市立久留里城址資料館 平成24年企画展「争いと仲直りの江戸時代」より。河川の流形が変わって自村の耕作地が川の対岸となってしまった場合は、立毛(たちげ)と呼ばれる生育中の農作物の存在が認められれば、飛び地として自村の土地として認定される。
- ^ a b 中川裕 2019年 p.81
- ^ a b c 中川裕 2019年 p.82
- ^ “ナチスの96歳女性被告、公判前に逃亡図る 強制収容所の元秘書”. AFP (2021年10月8日). 2021年9月30日閲覧。
- ^ “100歳の元ナチス看守、公判で証言拒否”. AFP (2021年10月8日). 2021年10月7日閲覧。
- 1 裁判とは
- 2 裁判の概要
- 3 日本における裁判
- 4 裁判の歴史
- 5 脚注
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