葉 (解剖学) 腺における葉

葉 (解剖学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/12 09:27 UTC 版)

腺における葉

乳腺

ヒトの乳腺の腺組織は10 - 20個の乳腺葉(にゅうせんよう、mammary lobes)からなる[32]。それぞれに乳管があり、乳腺小葉(にゅうせんしょうよう、lobules of mammary gland)と繋がって終末乳管小葉単位(しゅうまつにゅうかんしょうようたんい、terminal duct lobular unit, TDLU)という構造を作る[32]

ウサギの乳房の乳腺にも乳腺葉(にゅうせんよう、lobi glandulae mammariae)および乳腺小葉(にゅうせんしょうよう、lobuli glandulae mammariae)があり、各葉ごとに乳管が出て、乳管洞を経て乳頭先端の乳孔に向かう[33]

甲状腺

ヒトの甲状腺。Larynx behind Thyroid cartilage:甲状軟骨後方の喉頭Pyramidal lobe:甲状腺錐体葉、Right and left lobes:右葉左葉Isthmus of thyroid:甲状腺峡部 、Trachea:気管。

哺乳類の甲状腺は左右に2葉に分かれ、右葉(うよう、lobus dexter)および左葉(さよう、lobus sinister)と呼ばれる[34]。ウシでは、両葉は不正楕円状の腺体からなり、気管腹面正中位を横切る比較的幅広い峡部で結ばれる[34]。ウマやヒツジ、イヌなどでは両葉を結ぶ峡部は狭く、しばしば消失し、そのとき完全に独立した1対の腺体となる[34]。ウサギでは峡部の幅が広いが短く、両葉は器官の腹側に引かれ、各葉の前後端は突起状に前角および後角を形成する[34]。ブタでは、甲状腺は気管腹側の正中位に位置し、峡部は葉よりも発達して前方に錐体葉(すいたいよう、lobus pyramidalis)を突出させ、両葉は峡部と合体し、前縁が三叉状を示す1個の腺となる[34]

胸腺

胸腺はウシ亜目やブタで大きく発達し、左右の葉が1個にまとまって胸葉(きょうよう、lobus thoracicus)を形成する[35]。胸葉は頸方に向かって二叉に分岐し右頸葉(うけいよう、lobus cervicalis dexter)および左頸葉(さけいよう、lobus cervicalis sinister)となって気管の側方を頸動脈に沿って上行する[35]。その他の動物では右胸腺および左胸腺にはじめから分かれる[35]。胸腺を覆う被膜は脈管、神経を伴って腺実質に入り込み、実質を多くの胸腺小葉(きょうせんしょうよう、lobuli thymi)に分ける[35]。小葉は多数の一次小葉(いちじしょうよう、lobuli primarii)の集合からなる[35]

膵臓

膵臓膵右葉(すいうよう、right pancreatic lobelobus pancreatis dexter)と膵左葉(すいさよう、left pancreatic lobelobus pancreatis sinister)に分かれ、中央の膵体で結合している[36][37]。ウマやブタではヒトに似て中央の膵体から幅広く短い膵右葉と、狭く長い膵左葉が分かれ出る[36]。右葉は前十二指腸曲、作用は脾臓近くに達する[36]。ウマでは鉤状突起が右葉に近く突出する[36]。ウシ亜目やイヌでは頂点の膵体から胃側に膵左葉、十二指腸側に膵右葉を分ける[36]


注釈

  1. ^ 漏斗 infundibulumと呼ばれることもある[31]が、漏斗は正中隆起に加え、漏斗突起との接続部である漏斗茎 infundibular stemを分けることもある[29]

出典

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