腫瘍学 概説

腫瘍学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/28 13:55 UTC 版)

概説

腫瘍学は英語ではオンコロジーという。oncologyの語はギリシャ語の"onkos"(塊、物体、腫瘍という意味)の語に"study of"を意味する接尾語の"-ology"を付けたものである。

欧米では腫瘍学を専門にしている医師を"oncologist"と呼ぶ。外科手術を行う腫瘍医を"surgical oncologist"、放射線治療を行うものを"radiation oncologist"、抗癌剤による化学療法を専門とするものを"medical oncologist"、心理社会学的療法を用い患者をサポートするものは"psychosocial oncologist"と呼ぶ。一方、日本においては、腫瘍学という診療科が存在するのは数少なく、各診療科がそれぞれ行っているのが現状である。米国では腫瘍科といった場合は、主に悪性腫瘍の診断と化学療法を専門とし「腫瘍内科」という語に相当する(前述のごとく、外科的治療と放射線治療は別の専門科となる)。

この「腫瘍学」のページで扱う事柄を次に示す:

  • 癌の診断
  • 非外科的治療法(例えば化学療法、放射線療法あるいはその他の療法 - 日本では"集学的治療"(multidisciplinary therapy)という語が好んで使用される)
  • 治療が成功した癌患者のフォローアップ(術後定期健診)
  • 終末期患者における疼痛緩和治療
  • 癌治療を取り巻く倫理上の問題
  • 癌検診
    • 集団検診
    • 患者親族への疫学調査(特に乳癌)

米国のoncologistは時として、理学療法、精神カウンセリング、臨床遺伝学など、患者の集学的治療のコーディネートを行う役割を果たす。一方、oncologistは癌の生理学的性質を知るために、病理学者と連携して治療を行う。外科手術、放射線治療を行わない臨床腫瘍医は抗癌剤治療が治療選択の主体となる。

腫瘍学の心理的側面からのアプローチを担うサイコオンコロジー(精神腫瘍学)も提唱されるようになっている[1]

日本ではoncologistがこのようなコーディネートを行うという形式ではなく、数人の外科医、放射線治療医などを中心としたチーム医療が行われるのが通常であり、専門医の少ない小規模施設では外科医が中心となることが多い。これは日本においてmedical oncologist(腫瘍内科医)、radiation oncologist(放射線腫瘍(治療)医)の専門医が極端に少ないからである。日本放射線腫瘍学会認定医は約500人しかいない。また薬物療法を専門とする日本臨牀腫瘍学会専門医も認定制度が開始されたばかりにすぎない。精神カウンセリングを担当する者に至っては、臨床現場にほとんど存在していない実情があった。そのため精神腫瘍学の講座が各大学で立ち上げられ、一部の医療機関では精神腫瘍科も開設されている。


  1. ^ 本明寛『中高年のこころの健康学』金子書房、2006年、87頁
  2. ^ 2017/4/24付 日本経済新聞 朝刊






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