腫瘍学 終末期医療

腫瘍学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/28 13:55 UTC 版)

終末期医療

全ての癌患者のおおよそ50%は完治すると診断されるが、多くの癌患者がこの疾病により死亡する(今日では日本の死因の約30%が、癌である)。終末期治療が大いに尊重され、専門分野として独立してきているが、腫瘍学もまたガイダンスを提供したり、その場に際して終末期治療を施している。往々にして、文章では患者の手助けにならないので、むしろ患者は"生きることと近づきつつある死"について体験する方が励ましになることが多い。その場においては、できうる限りの治療の可能性が試される。

日本においては、またホスピスとして終末期治療を専門とする病床も増加しつつある。またかつては延命の妨げになるという理由でモルヒネによる終末期疼痛治療は忌避されることが普通であったが、今日では終末期疼痛治療はホスピスなどにおいて実践され始めている。

日本における代表的なホスピス施設として外部リンクの緩和ケア病棟を有する病院一覧(国立がんセンター)を示す。

WHO方式癌疼痛治療ガイドライン

1986年、WHOは癌疼痛治療に関するReport "Cancer Pain Rerief"(癌の痛みからの解放)を報告し、癌疼痛治療に関する新しい考え方を提示した。この考え方を基本とする疼痛治療法はWHO方式癌疼痛治療と呼ばれる。

WHO方式癌疼痛治療は鎮痛薬を鎮痛作用と特性を考慮して三つの種類に分類し、その使用について5つのガイドラインを提示している。

鎮痛剤は

  1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)- アスピリン、ボルタレン等
  2. 弱オピオイド - コデイン等
  3. 強オピオイド - MSコンチン等

に区分され、段階をおって選択される。

また、使用ガイドラインは

  • 徐放性を考慮した投薬方法(by Mouth)
  • 一定の間隔での投薬(by the Clock)
  • 段を上るように強い鎮痛剤を選択する(by the ladder)
  • 個々人の疼痛状況に応じて投与量を決定する(for the individual)
  • 作用の補助あるいは副作用管理を詳細に実施する(attention to detail)

である。

WHO以前の鎮痛剤の使用方法は、

  1. 痛みが発生してから投薬する。
  2. 即効性が重要なので、静脈投与が第一選択。
  3. オピオイドの使用は最終手段。

というものであった。

それに対してWHO方式では以下のような特色を持って疼痛治療がなされる。

  • 痛みが発生する前に投与する。
  • 鎮痛剤の血中濃度を必要量だけを継続的に維持するために、静脈投与を避け、経口あるいは座剤により徐放的に且つ計画的に投与する。
  • 鎮痛剤の作用減弱に合わせて、痛みが消える用量で鎮痛剤を細かく増量して行く。
  • 鎮痛能力に天井をもつ、NSAIDsで不十分になったら即座に鎮痛能力に天井がないオピオイド系鎮痛剤に切り替えてゆく。
  • 吐き気、便秘など鎮痛剤の副作用に対しては、鎮痛剤を減らすのではなく、鎮痛補助剤を使用して鎮痛剤の量を維持しながら副作用を改善する。

WHO方式疼痛治療は末期に限定されるものではなく、早期においても疼痛が発生する場合は適用されるべきものである。


  1. ^ 本明寛『中高年のこころの健康学』金子書房、2006年、87頁
  2. ^ 2017/4/24付 日本経済新聞 朝刊






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