球形の荒野 エピソード

球形の荒野

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/04 12:54 UTC 版)

エピソード

  • 古い寺が好きで、小説家となる以前から、奈良や京都を歩いていた著者は、寺の白い壁や古い柱に書かれた多くの落書きを見掛けていた。その落書きが古くなってくると、落書きの当人にとって思い出になるのではないかと思い、中年の人妻がかつての落書きを見て過去の恋愛を偲ぶというストーリーを浮かべた。この案自体はボツとなったが、その変形を本作で使ったと著者は説明している[1]
  • 連載時において、洋画家の死は、殺人によるものと示唆されていたが、単行本化の際に変更されている。また連載の中盤(1960年11月号掲載分の後半・12月号掲載分の前半)では、添田彰一と、「国威復権会」の幹事「山田吉次郎」が対面する場面が描かれたが、この場面は単行本化の際に全て削除された。変更の背景に関して、当時の社会的事情に影響を受けたものと推測する見解も出されている[2]
  • 文芸評論家の細谷正充は、本作のストーリーの発想の原点に、菊池寛の戯曲『父帰る』があるのではないかと推測している[3]
  • 作家の半藤一利は、松本清張だとどれが一番好きですかとの問いに、「『球形の荒野』。これは聞かれるたびに『球形の荒野』と答えている」と述べている[4]
  • 小説中、野上顕一郎は北宋末の書家・米芾を手本に書を習っていたとされているが、著者が1933年に博多の嶋井精華堂印刷所で見習い修行をしていた際、俳誌「万燈」の主宰者・江口竹亭から学んだ書の手本に、米芾が含まれていたとされている。書道家の田中節山は、小説中における寓意を「旧弊にとらわれない自由で近代的な感覚と、ある種の清々しさ」と解釈している[5]

  1. ^ 著者によるエッセイ「推理小説の発想」(『随筆 黒い手帖』(1961年、中央公論社)、『松本清張全集 第34巻』(1974年、文藝春秋)などに収録)参照。
  2. ^ 古谷久子「単行本化で削られた8000字の謎」(『週刊 松本清張』第9号(2009年、デアゴスティーニ・ジャパン)収録)参照。
  3. ^ 『週刊 松本清張』第9号 6-7頁参照。
  4. ^ 半藤一利・加藤陽子宮田毬栄らによる座談会「同年に生を享けて - 一九〇九年生まれの作家たち」(『松本清張研究』第10号(2009年、北九州市立松本清張記念館)収録)参照。
  5. ^ 『週刊 松本清張』第9号 15頁参照。
  6. ^ 『週刊 松本清張』第9号 20-21頁参照。
  7. ^ BSフジのホームページ
  8. ^ 林悦子『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』(2001年、ワイズ出版)39頁参照。






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