流動性選好説 市場例

流動性選好説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/08 14:22 UTC 版)

市場例

コンソル公債(永久債)について考える。コンソル債は、現代の主流となっている償還期間の定められた債券よりも、安定企業の株式に近い性格を持つ。

いま、債券の配当が年 E、市場利子率[1]が年 i であるとすると、債券の正常値は E / i になる。仮に利子率が i から i + Δi に変化したとすると、債券の時価は E / (i + Δi ) となる。 したがって、債券を保有することによって得られる 1 年間の資産の価値は E / (i + Δi ) + E であり、現金のままで保有したときの価値 E / i と比較すると、

の大小関係で現金で保有し続けたほうが得か否かが決定する。この式は次のように変形できる。

i Δi を微小量として無視すると、不等式は次のようになる。

現行利子率の 2 乗 i 2 以上の変動率 Δi で利子率が上がると、貨幣を保蔵したほうが得になる。もし利子率 i が小さくなると、変動率 i 2 は小さくなり、わずかな利子率の上昇でも、債券保有は損害を受ける。その結果、貨幣保有の力は強まり、弱気の人が多くなり、利子率は下がらず、利子率の下限という流動性の罠が生ずる。

i Δi が微小でない一般の場合には以下のようになる。 利子率 i について左辺が 0 になる条件を考えると、

が得られる。 利子率の変動 Δi が正なら (Δi > 0)、利子率 i は正なのでルートの符号が + の場合だけを考えればよい。 従って以下の関係が成り立つ(不等号複号同順)。

利子率の変動 Δi が負なら (Δi < 0)、ルートの中身が非負かつ変動後の利子率 i Δi が正となる条件として、

が課される。条件 Δi ≤ −4 が満たされない場合、どんな利子率 i に対しても二次式の値は正になるので、以下の関係が常に成り立つ。

数値の例

毎年、固定で 100 円の利子が支払われることが約束されたコンソル債券が有る。この債券を 2,000 円で買えば毎年の利子率は 5 % となる。債券市場で取引が行なわれ、価格が 2,100 円になったら利率は 4.76 % となる。債券の価格が上がることは同時に利子率が下がることを意味する。

利子率が 1 % になると債券価格は 10,000 円になる。もし利子率が 1.1 % になると、債券価格は 9,090 円と 910 円急落する。極端な場合、利子率が 0.1 % の場合は債券価格が 100,000 円となるが 0.2 % であれば 50,000 円となる。このように、この債券の仕組み上、利子率が非常に低い場合は債券価格の変動が利子金額を大きく上回って非常に激しくなる。このため、利子率は一定以上低下しにくい。


  1. ^ : interest rate


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