流動性選好説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/08 14:22 UTC 版)
原理
ケインズ経済学では貨幣需要として、取引需要(kPY = マーシャルのk × 名目GDPのPY )に加えて投機的需要(または資産需要)を考える。このうち取引需要は国民所得の増加関数である。すなわち国民所得が増加すると貨幣需要も増大する。これに対して投機的需要は、利子率の減少関数である。これは利子率が下落(債券価格が上昇)するほど貨幣需要が増大することを意味している。
所得を消費せず節約して貯蓄しても、現金のままで保有していれば利子はつかない。それでも現金で保有することがあるのは、現金が債券よりも高い流動性を持つからである(流動性選好)。しかし他方では、その現金を手放して貸し付けること(債券の購入)によって利子を得ることができる。したがって利子は節欲の対価ではなく貨幣保有の便益(= 流動性)を手放す対価となる。
債券の値上がり(利子率の下落)を予想する強気の人は、現金を手放して債券を購入しようとし、逆に債券の値下がり(利子率の上昇)を予想する弱気の人は、債券を売却して現金を保有しようとする。 強気の人の力が強いと債券は値上がりする。すると強気の人の中から弱気に移る人が増え、結局、強気・弱気の均衡するところで債券の値が決まり、それによって示される利回り、即ち短期利子率が決定する。これが流動性選好による利子率決定論である。 こうして決まった利子率が、貨幣の流動性を人々が手放すために必要な利子の水準である。したがって、貨幣の流動性は、貨幣の便益-交換可能性と安定性と、それらをもとにした投機性を合計した便益であるということができる。
流動性の罠
債券価格の上昇(利子率の下落)が極端であると、人々は債券の値下がりを予想して、貨幣で資産を保有するようになり、貨幣供給が増しても、貨幣保有が増すだけで、資金は債券購入に回らず、市場利子率はそれ以上低下しようとはしなくなる。
これを流動性の罠という。ケインズはこのことを、「ジョン・ブルはたいていのことは我慢するが、2 分の利子率には我慢できない」という言葉を引いて、市場金利には下限があることを示した。
流動性選好説と同じ種類の言葉
- 流動性選好説のページへのリンク