枯れ野原
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/18 03:07 UTC 版)
フランス語: Champs déserts 英語: Withered Field | |
作者 | 黒田清輝 |
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製作年 | 1891年 |
種類 | 油彩画 |
素材 | カンヴァス |
寸法 | 49.3 cm × 65.0 cm (19.4 in × 25.6 in) |
所蔵 | 東京国立博物館、東京都 |
由来
黒田は1884年(明治17年)、法律学を履修するためにフランス・パリに留学した[9]。しかしながら1886年(明治19年)、彼に絵画の才能があることを認めた洋画家の山本芳翠らから西洋画を専修することを勧められ、翌1887年(明治20年)に画業に専念することを決心する[10]。
美術史家の隈元謙次郎は、『落葉』(東京国立近代美術館所蔵)や『ポプラの黄葉』(島根県立石見美術館所蔵)が製作された1891年(明治24年)の秋ごろに本画が製作されたとしている。黒田は、1891年(明治24年)11月10日ごろには、『読書』(1891年、東京国立博物館所蔵)でもモデルを務めたフランス人女性、マリア・ビョーが厨房の入り口付近の椅子に座っている様子を描いた『婦人像(厨房)』(1891年 - 1892年、東京藝術大学大学美術館所蔵)の製作を開始している[11]。
黒田は、養父の清綱に宛てた1890年(明治23年)10月24日付けの書簡の中で、次のように記している[7][12]。
此頃ハ全ク秋にて景色もよろしく候 御地の景色もさぞかしと思ひ罷在候 霜も度々置き候 今尚一月位ハ是非当地にて勉学仕度考に御座候—黒田清輝、『黒田清輝日記』、1890年10月24日
1925年(大正14年)に審美書院より刊行された和田英作編『黒田清輝作品全集』では、黒田有盈の所蔵となっている[13]。1930年(昭和5年)、黒田記念室が開室されるのに際し、黒田の遺族によって同室に寄贈された。これより前に一般に公開されたことがあるのか否かについては判然としていない[14]。1935年(昭和10年)10月12日から11月14日にかけてブリヂストン美術館(現、アーティゾン美術館)で開催された黒田清輝展に出展された[15]。
作品
本画は、フランス・パリ近郊の芸術家村、グレー=シュル=ロワンの広大な野原を描いたものである。画面の手前にみえる枯れた草の茂みの中には、野生の草花が点在している。遠くには、野原に連なる森がみえている[1]。黒田は、暑い季節の風景よりも寒い季節の風景のほうが美しいと考えていたことが書簡からうかがえる[8]。
全体的に明るい色彩で描かれている[14]。主調色には、純粋な黄緑色が用いられている[1]。細かいところまで描き込むことを避け、緑色や黄色、青色を使用して軽快な筆致で仕上げている[14]。
『現代日本美術全集』によると、本画は美術品を保管するための収蔵庫の奥まったところに長い期間にわたって置かれていた。そのため画面の表面が汚れており、遠近がはっきりしない状態であった。修復作業が実施された際に、画面上の汚れの洗浄が行われた結果、黒田による繊細な表現が復元された[1]。
- ^ a b c d e f g h i 鈴木 1976, p. 90.
- ^ “特別展「生誕150年 黒田清輝─日本近代絵画の巨匠」”. 東京国立博物館. 2022年11月20日閲覧。
- ^ “OTHER WORKS”. 東京文化財研究所. 2022年11月20日閲覧。
“D’autres oeuvres”. 東京文化財研究所. 2022年11月20日閲覧。 - ^ 山梨 1991, p. 7.
- ^ a b 田中淳. “黒田清輝の生涯と芸術”. 東京文化財研究所. 2022年11月20日閲覧。
- ^ “枯れ野原(グレー)”. ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システム. 2022年11月20日閲覧。
- ^ a b 佐賀県立博物館 1980, p. 3.
- ^ a b c “枯れ野原(グレー)”. 文化庁. 2022年11月20日閲覧。
- ^ 隈元 1966, p. 6.
- ^ 隈元 1966, p. 7,11.
- ^ a b 隈元 1966, p. 21.
- ^ “1890(明治23) 年10月24日 - 黒田清輝日記”. 東京文化財研究所. 2022年11月20日閲覧。
- ^ 和田 1925, p. 12.
- ^ a b c d e 関根 1990, p. 16.
- ^ “開所記念展覧会目録”. 東京文化財研究所. 2022年11月20日閲覧。
- ^ 荒屋鋪 2005, p. 13.
- ^ 隈元 1940, p. 14.
- ^ 荒屋鋪 2005, p. 10.
- ^ 荒屋鋪 2005, p. 10,11.
- ^ 山梨 1991, p. 4-7.
- ^ “原”. ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システム. 2022年11月20日閲覧。
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