有機質肥料 植物由来

有機質肥料

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/15 08:32 UTC 版)

植物由来

米に由来

稲わら
堆肥化させなかった水稲のわら。秋に農耕土壌中にすき込む。特殊肥料である。十分にすき込みをせずに稲わらを施用すると、土壌中の窒素と酸素が減少して作物の生育は阻害されるとともに田植機の能率と精度は低下する。分解に長期間かかる粗大有機物を含み、志賀らによると水田に5年間埋設しても稲わら由来の有機物の10%ほどは残留する[54]。このため、土壌の腐植を増加させる。
稲わら堆肥
稲わらに家畜糞堆肥などの窒素質肥料を加えて堆肥にしたもの。特殊肥料である。窒素質肥料に石灰窒素を選ぶと堆肥化が速い[55]。北海道農政部の調査によると、窒素0.6%、リン酸0.4%、加里0.4%を含む[56]。水田よりも畑で、乾燥(乾田)よりも湿潤(湿田)条件で、低温よりも高温で、土壌表面でよりも土中で分解・堆肥化されやすい。
籾殻堆肥
籾殻に家畜糞堆肥を加えて堆肥としたもの。特殊肥料である。稲わらと比べて腐熟しにくく、作成には家畜糞堆肥を用いる必要がある。石灰窒素のような化学肥料だけでは腐熟は進まない。仕上がりまで早くて6か月、通常は1年ほどを要する[55]。北海道農政部の調査によると窒素0.4%、リン0.2%、加里1.4%を含む[56]。軽量で通気性、透水性が高く、分解されにくいため長持ちする。このため、人工培養土のための有機資材に有用である[57]。一方で、撥水性が高く保水性が低いという欠点もある[57]
米糠
精米の際に生ずる糠。特殊肥料に指定されている。油粕類に比べてC/N比が高く分解が遅い[32]
発酵米糠
米糠を堆積発酵させたもの。特殊肥料に指定されている。北海道での亜麻栽培用に施用されていたが、現在は生産されていない[32]
米糠油粕
精米のとき廃出される米の皮部、胚乳の一部および胚の混合物から油を抽出した滓[58]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素2〜4%、リン酸4〜6%、加里1〜2%を含む[29]
清酒粕
清酒の製造工程で酒もろみを絞ったあとに残る滓(酒粕)を乾燥・粉砕したもの、及びそれを粒状にしたもの。特殊肥料(発酵かす)である。清酒粕には米由来のデンプンおよび麹や酵母由来のタンパク質や繊維質などがある。

大豆に由来

くず大豆およびその粉末
大豆を加熱した後、圧偏したものおよびその粉末[32]。原料の大豆は、選別過程で食用として規格外とされたもの、または水濡れ等により変質したものである。特殊肥料に指定されている。水稲への施用効果は、50-150kg/10a施用したとき、くず大豆10kgにつき精玄米の収量は約10kg増加する[59]。ただし、50kg/10aまでは施用効果は認められない。くず大豆には雑草の生育を抑制する効果がある[59][60]。抑草効果の機構は明らかではないが、大豆成分のサポニンの関与が指摘されている。
大豆油
大豆からの油の圧搾後または有機溶媒での抽出後の滓[61]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素6.0〜7.5%、リン酸1.0〜2.0%、加里1.0〜2.0%を含む[29]
豆腐粕乾燥肥料
おからを乾燥させたもの[62]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。おからは、大豆を原料とした豆腐の生産において生じる副産物である。豆腐生産において大豆は脱皮、水への浸漬、摩砕、加熱されたのち、液体(豆乳)と固体(おから)に分離される。インスタント豆腐または豆腐の素として生産する際の副産物が多い。窒素全量4.5%程度、リン酸全量1.0%程度、加里全量1.5%程度を含む[29]
豆腐粕の石灰処理肥料
豆腐粕を石灰で処理したもので、乾物1kgにつきアルカリ分含有量が250gを超えるもの[3]
醤油粕
醤油を天然醸造法により製造する際の搾り滓。生産工程で塩酸が使用される場合、特殊肥料(発酵かす)である[32]。そうでなければ、登録の有効期間が6年の普通肥料(副産植物質肥料)に指定される[63]。普通肥料の醤油粕は窒素3.5〜4.5%を含む[29]
  • 味噌粕:たまり醤油を天然醸造法により製造する際の搾り滓。窒素5.0〜6.5%を含む[29]

麦やトウモロコシに由来

麦酒の発酵かす

発酵かすとは、発酵工業で植物原料から得られた副産物で、特殊肥料である。原料によって成分は一定しない。水分が多いものは早期に腐敗するため、堆肥原料に使うことが推奨されている[32]

  • ビールかす
  • ウイスキーかす
トウモロコシ胚芽
コーングリッツコーンフラワーなどの製造の際に出る副産物[64]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。油分を多く含み、緩効性を持つ。マルチ栽培向けの肥料の原料となる[29]。窒素全量2.0%以上、リン酸全量2.0%以上、加里全量1.0%以上を含む[29]
トウモロコシ胚芽油粕(ジャーム粕)
トウモロコシ胚芽から油を抽出した滓[65]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素全量3.0%以上、リン酸全量1.0%以上を含む[29]
コウモロコシ浸漬液肥料
材料は、コーンスターチを製造する際に原料のトウモロコシから由来する副産物である。このトウモロコシを亜硫酸で浸漬し、その液を発酵させて濃縮させたものがトウモロコシ浸漬液肥料(CSL)である[66]。窒素全量3.0%以上、リン酸全量3.0%以上、加里全量2.0%以上、水溶性加里2.0%以上を含む[29]
植物由来のアミノ酸滓
トウモロコシや小麦などのタンパク質を塩酸または廃糖蜜アルコール醗酵濃縮廃液で分解してアミノ酸を製造する際に発生する腐植状のかす(遊離硫酸の含量0.5%以上のものを除く[32])。味液の製造において、塩酸処理後のアミノ酸滓を乾燥させたものは登録有効期間6年の普通肥料(副産植物質肥料)となる[63]。普通肥料のアミノ酸滓は窒素5.5〜7.0%を含む[29]。それ以外は特殊肥料であり、窒素0.5〜2.5%を含む[3]

その他草本に由来

菜種油
菜種から油を圧搾または有機溶媒で抽出した滓[67]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。搾油方法により3つに分けられる。それぞれ色状は異なるが、肥効に差はない[29]。いずれも、窒素4.5%、リン酸2.0%、加里1.0%以上を含む。
  • 圧搾滓:搾油方法が圧搾だけのもの。圧搾の前に原料は適度にせん熱される。残油分が多いことが特徴。
  • 抽出滓:搾油方法が抽出だけのもの。抽出の前に原料は圧偏機にかけられる。抽出溶媒はノルマルヘキサンベンジンなど。
  • 圧抽滓:搾油方法が圧搾と有機溶媒抽出の両方であるもの。
カラシ油
肥料取締法では菜種油粕に含まれる。
綿実油粕(わたみあぶらかす)
綿実外果皮(綿)を破砕して除去後、油を抽出した滓[68]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素5〜6%、リン酸1〜2%、加里1.5%程度を含む[29]
ゴマ油
ゴマの種子から油を抽出した滓[69]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素6〜7%、リン酸1〜3%、加里1〜1.5%を含む[29]
落花生油
落花生の子実から油を抽出した滓[70]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素7.5%、リン酸1.3%、加里1.0%を含む[29]
ひまし油
トウゴマの種子から油を抽出した滓[71]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素4.0〜6.3%、リン酸2.0%、加里1.2〜2.0%を含む[29]
あまに油粕
アマの種子から冷圧であまに油を採取した滓[72]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素5.0%、リン酸2.0%、加里1.5%程度を含む[29]
くず植物油粕
草本性植物種子のくずを原料として使用した植物油かす及びその粉末[32]。特殊肥料に指定されている。
その他の草本性植物油粕。
登録の有効期間が6年の普通肥料である[73]。窒素3.0%以上、リン酸1.0%以上、加里1.0%以上を含む[29]
タバコ屑肥料
タバコを生産する際に生ずる屑に石灰を加えてニコチンを抽出した滓。現在はタバコとして再利用されないように石灰や水を加えてあるものが多い。加里成分が比較的高い。ニコチン成分は害虫駆除効果を持つが、人体や蚕には有害である[32]
タバコ屑肥料粉末
タバコ屑肥料のうち、粉末にしたもの[74]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。タバコ屑とは、タバコの製造中に出る屑(葉柄、中脈(中肋)、葉の微粉、茎)である。窒素1.0〜2.0%、加里4.0〜7.0%を含む[29]
コーヒー滓
コーヒー豆からコーヒーを抽出した後の滓[32]。水分を多く含む。コーヒー豆は、植物にとって有害な生育阻害効果を持つ[75]。未分解物を大量施用すると植害が発生することがあり、堆肥原料として使用されることが多い[32]。特に、土壌の物理性改善効果が高く、また、フザリウム菌に対する静菌効果が高い[75]。特殊肥料に指定されている。
コーヒー滓以外の飲料抽出滓
単独では特殊肥料として流通しないので、堆肥原料に使用される。まれに、乾燥させたものが普通肥料として販売されている[32]
  • 紅茶滓
  • ウーロン茶滓
  • 緑茶滓
甘草滓(かんそうかす)
甘草は中国やロシア、中近東で生産されており、その根からグリシルリチン酸(調味料や医薬品などの原料)が抽出される。その抽出過程では甘草根の水浸出液は酸析処理され、沈殿からグリシルリチン酸はアルコール抽出される。甘草粕は、アルコール抽出後の滓を水洗した後に乾燥させたものである[76]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素全量9%程度を含む[29]
落綿分離かす肥料
紡績工場から排出される綿屑。
ヨモギ滓
ミブヨモギからベンゼンでサントニンを抽出した滓を、またはヨモギを加工してモグサを製造した滓を乾燥したもの。特殊肥料である。窒素2.5%、加里3.5%程度を含む[3]
製糖副産石灰
製糖の工程で、汁液の調整およびショ糖の精製分離のため加えられた消石灰を濾別回収したもの。水分が多く成分含有量の変動が大きい[3]

木本に由来

バーク堆肥
樹皮を堆肥化させたもの。肥料取締法における特殊肥料と地力増進法における土壌改良資材の両方に分類されている[77]。土壌改良材としての定義は、広葉樹の樹皮を主原料(85%)として牛糞および尿素を加えて堆積腐熟させたものである。土壌資材としての主な効果は土壌の膨軟化である。一方、堆肥化が未熟なままでは作物の生育を阻害する。原因として、C/N比が著しく大きいため分解過程で土壌中の窒素分を減少させることと、生育阻害物質のフェノール酸やテルペン類を含む[78]。バーク堆肥の品質は日本バーク堆肥協会で定められており、乾物中当たり窒素1.2%以上、リン酸0.5%以上、加里0.3%以上とされている[79]
剪定枝堆肥
樹から剪定した枝を粉砕し、堆肥化したもの[55]
大鋸屑堆肥
木材くず発酵堆肥
製材所から廃棄された木材くず(鉋屑)に加水して水分を調節し、乾燥鶏糞などの副資材を加えて発酵させたもの。
木葉肥料
エンジュ滓
エンジュは、主に中国で栽培されているマメ科落葉高木である。エンジュは医薬品の原料(ルチン)を含み、エンジュ粕はルチン抽出後の残渣である[80]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素全量3.0%以上、リン酸全量1.0%以上、加里全量2.0%以上を含む[29]
カポック油粕
カポックという熱帯性喬木の種子から油を抽出した滓[81]。登録の有効期間が6年の普通肥料である。窒素4.5%、リン酸2%、加里1%程度を含む[29]
木の実油粕
カポック種子以外の木本性植物の種子を搾油した粕の総称。やし、茶、オリーブ等の実の油粕。あぶらぎりの種子など[32]。特殊肥料に指定されている。
果実の石灰処理肥料
果実の加工滓を石灰で処理したもので、乾物1kgにつきアルカリ分含有量が250gを超えるもの[3]
パーム椰子灰
椰子油の原料となるパーム椰子の外側の殻を焼いた灰。やや濃い灰色の粉末。30%以上の加里成分と若干のリン酸成分と苦土成分等を含む。塩基性である。

海藻・藻類に由来

乾燥藻およびその粉末
海藻クロレラ)を乾燥したもの。トロロコンブの製造滓も含まれる[32]。特殊肥料である。窒素1%程度、加里2〜13%を含む[3]。成分は原料の海藻の種類や収穫時期によって異なる。
藻類
ARSの研究によると、藻類は有機質肥料の材料となるだけでなく、農耕土壌からの窒素およびリンの流出を防ぎ、これら栄養素の流入による水圏汚染を防止することができる。ARSは、栄養の流出を防止するためのalgal turf scrubberを開発した。栄養豊富な藻類は一度乾燥させてキュウリやトウモロコシの苗に投入されると、化学肥料の使用条件に匹敵する植物生長をもたらす[82]

その他

草木灰
草や木を空気中で燃焼させたもの(塵芥灰を除く)、または稲藁籾殻おが屑等を低温燃焼させたもの。空気を遮断して焼いたものは木炭である。燃焼による揮散で窒素成分を含まない。加里成分を高濃度で含む他、石灰、ケイ酸などを有しアルカリ性である[32]
燻炭(くんたん)肥料
おが屑、籾殻等を炭化したものに人糞尿や木酢液を吸着させたもの。あるいは、落葉や塵芥を燻炭にし、人糞尿を吸収させたもの。後者は窒素0.7%、リン酸0.4%、加里0.7%程度を含む[3]。燻炭を加工した肥料であり、政令指定土壌改良資材の「木炭(植物性の殻の炭を含む)」にあたる燻炭とは別のものである。明治33年に小柳津勝五郎により発明され、三田育種場長であった池田謙蔵らに支持され日本・朝鮮で普及したが、次第に肥効は特別に評価されなくなり、戦後はあまり用いられない[83][84]
腐植酸質資材
肥料取締法における特殊肥料と地力増進法における土壌改良資材の両方に分類されている[77]。土壌改良材としての定義は亜炭を硝酸で分解し、炭酸カルシウムで中和したものである。主な効果は土壌の保肥力の改善である。
緑肥
収穫を目的とせず栽培し、現地ですき込んで肥料とする作物。堆肥と似た土づくり効果があるほか、種から育てるため輸送コストが少なく、土壌・養分の流亡抑制、雑草抑制、連作障害抑制、根の伸張による土壌物理性の改善、土壌生物の活性化による減肥といった特長がある[85]。品種によっては根粒菌による窒素固定や、有害線虫の抑制、花による景観美化といった性質も利用される。

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