必至
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/11 16:25 UTC 版)
先手の玉将に必至がかかっている状態とは、先手が次の番で王手以外の何を指したとしても、その直後に後手が正確に指せば、先手が(王手の連続で)詰まされる状態のこと。
英語では、必至はbrinkmate、詰めろはthreatmateと訳される。
概要
「詰めろ」や「必至」、「Z[注 2]」は終盤戦の重要な概念とされる。必至をかけられた側は、相手の玉を詰ませないかぎり負けとなるので、即詰みを決めにいくか、その場で投了するかのどちらかを選択する。ただし例外として、相手玉に王手をかけつつ同時に自玉を安全にして、必至を解除できる手が成立する場合がある。このような局面を「部分的な必至」ということがある。
コンピュータ将棋の評価値の表現では、必至(あるいは一手一手の寄りの読み切り)によって事実上勝敗が決している場合の表現は、基本的には詰みの場合に準ずる。
例
以下は後手の手番として説明する。
△持ち駒 残り全部
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△持ち駒 残り全部
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△持ち駒 残り全部
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図1は、次に▲2二金打または▲3二金打の詰めろになっている。対して後手はこれら2種類の手を同時に受ける手を指すことが最低限必要だが、下の検討手順により後手はいかなる手を指しても詰みから逃れることができない。
- △3一銀、△3一金 - ▲3三桂まで
- △2二金、△3二金、△3二飛 - ▲3三桂 △同金(飛)▲2二金打、または▲3三桂 △3一玉 ▲4一金まで
- △4二飛 - ▲3三桂 △3一玉 ▲2一金まで
- △1二飛、△5二~9二飛 - ▲3三桂 △3一玉 ▲4一金まで
つまりこの状態は必至である。
図1の局面では、△1六桂、△3六桂、△1八金などといった王手もかけることはできるが、すぐ取られてしまうし、そこからさらに王手をかけ続けても明らかに詰まないので事実上後手の負けが確定している。
図2は、後手玉の周辺は図1と同じであるもののこれは部分的な必至である。この場合は、後手が△6七角と打つと王手となるため先手は攻めることができず、▲3九玉と王手を受けたところで△2三角成として要となる金を除去することができる。
図3は、両者の持ち駒の関係により後手は連続王手をかけつつ必至を解除する手順がないことから「事実上の必至」である。
代表的な必至
△持ち駒 残り全部
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△持ち駒 残り全部
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図4は玉の両側を金で挟んだ形である。後手は▲4二金打と▲6二金打という左右からの攻撃を1手で受ける手段がない。
図5は「腹銀」と呼ばれる手の有名な形である。▲2三銀成と▲3一馬△1二玉▲2一銀不成の2通りの詰みを見ており、後手は△1二香としても▲3一馬△1一玉▲2一銀成(馬)、△1三香としても▲3一馬△1一(1二)玉▲2一馬とやはり詰まされ、結局詰みを逃れる方法はない。玉の隣にある銀は玉の上下に利きがあるため防ぎにくく「玉の腹から銀を打て」という格言も存在する。
必至問題
9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | |
飛 | 金 | 王 | 桂 | 香 | 一 | ||||
と | 銀 | 二 | |||||||
歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 三 | ||||
桂 | 歩 | 四 | |||||||
五 | |||||||||
六 | |||||||||
七 | |||||||||
八 | |||||||||
九 |
必至問題は詰将棋に似ているが、攻め方の手番では王手か詰めろをかけることが要求され、最終的に必至をかけられれば正解である。ただし普通は、その局面が確かに必至であるのを確認することまで求められる。上達法として詰将棋に勝るといわれることも多いが、作成が大変なため、詰将棋に比べると圧倒的に問題数が少なく[2]、確立した文化と呼べる状態ではない。必至問題の手数も5手必至までのものが多く、7手必至以上の問題は少ない。実戦の用語でも、時として「~手必至がある」のように言うことがあるが、その場合も実際に用いられる語としてはせいぜい5手必至程度までであり、それ以上は実戦では後述の「寄り筋」「一手一手」などと呼ぶ場合が多い。
詰将棋にはなく、必至問題に頻出する種類の手がある。たとえば、あるマス目への、自分の駒の利きを増やす、あるいは相手の駒の利きを減らす手である。
1手必至とは、攻め方が1手指して必至を完成させる問題、3手必至とは、3手後に必至を完成させる問題、等となる。1手必至の難易度は詰将棋7手詰前後といわれる[2]。
図6は3手必至の例である。桂馬を動かすと△2二玉から上部に逃亡されるので、これを動かさずに▲4一飛成と金を取りながら王手をかけるのが正解である。△同玉に対して▲2二桂成とすれば上で解説した「両側を金で挟む」必至となる。 初手は王手でなくてもよいので、▲5二とという手も考えられる。これは▲4一飛成と▲4二とという2通りの詰みがある詰めろであるが、△5一銀▲同と(この手も詰めろだが)△同金で失敗となる。
注釈
出典
品詞の分類
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