力石 力持ち・力試し

力石

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/28 06:09 UTC 版)

力持ち・力試し

力石を持ち上げることを、力持ち、力試し、石抱え、担ぎ上げ、盤持ち(ばんもち)などという。典型的には石を抱えて持ち上げる。持ち上げ方は、胸まで、肩まで、頭上まで、体に付けずに、など様々である。また持ち上げてから担いで歩いたり、体の周りを回したりすることもある。石にをかけて持ちやすくしたり、非常に重いものでは、石が地面を離れればよしとしたり、倒れている石を引き起こせば良いとするなど、石の重さと個人の体力に応じて様々な条件と目標があった。

力試しに挑戦するのは主に村の若い男達であったが、体力と異なり筋力の方は40代後半まではそれほど減少しないので高年の男達が加わる事も多かった。武道を習うのが一般的でない村落のような環境では、より重い物を持ち上げて運べる身体機能はそのまま格闘能力の優劣に繋がると見なされた。中高年の男性が強い力を披露できることは、若者組の増長を抑える面でも重要だった。娯楽が少ない環境では、力試しは若者達のスポーツの一種であった。通過儀礼的に力石を持ち上げられると一人前とみなされた村もある。しかし過去に1人か2人しか持ち上げられなかったという石もあり、力試しの位置付けもまた多様である。

米問屋では働く若者を採用する時に力石を用いた[4]

伝説上の力石

伝説上の人物が持ち上げたり放り投げたりしたと伝えられる力石が、やはり全国各地にある。たいていは1人では持ち上げられそうにない巨石である。

記録例

  • 太田康資の伝説として、普通の男が30人かかって持ち上げる大石を1人で軽く持ち上げてみせた(『関東古戦録』巻六、『小田原北条記』巻五)。
  • 戸村義国の伝説として、竜昌院寺内に、3、40貫(112 - 130キログラム超)の大石を置き、持ち上げたとされる[5]
  • 浦和市(現さいたま市)白幡の医王寺境内にある力石の銘として、「唱武広観直性大法子 寛政5年(1793年)5月29日」と記されており、伝えによれば、75貫目(約280キログラム)あり、寛政期の白幡の若者に大力がいて、江戸の力士ですら持ち上げられなかったこの石を持ち上げたとされる[6]
  • 加藤寛斎の『奥郡里間数記』に(文化文政期=1809 - 29年とみられる)、江戸角力・待乳山部屋の三段目まで取った久米の森という角力がいて、出自は常陸国那珂郡額田村の常福寺の北二軒家だったが、10人や15人では持てない六尺角(180センチ四方)の大石を1人で運んだとされる[7]
  • 安政6年(1859年)5月8日生まれの大和国北葛城郡二上村(現香芝市)在地力士・大の松為次郎は、身長5尺3寸(約160センチ)、体重20貫(74キログラム以上)であったが、8斗5升(約154キログラム)と同じ重さの力石を気楽に持ち上げた、と記述されている[8]

  1. ^ 韮塚一三郎編『埼玉県伝説集成 分類と解説 下・信仰編』(北振図書、1974年)pp.112-113
  2. ^ 高島愼助 全国の力石研究
  3. ^ 高島愼助『北海道・東北の力石』(岩田書院、2005年)
  4. ^ a b 文化庁文化財保護部監修『日本民俗資料事典』(第一法規、1969年) p.293
  5. ^ 大録義行編『那珂の伝説 下』(筑波書林、1984年) pp.120 - 121
  6. ^ 川崎陽堂『浦和市史蹟と伝説』、韮塚一三郎編『埼玉県伝説集成 分類と解説 下・信仰編』(北振図書、1974年)p.111
  7. ^ 大録義行編『那珂の伝説 上』(筑波書林、 1984年) p.72
  8. ^ 『ニ上村史』(1956年) p.549


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