上告 上告審における裁判

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上告

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/09 14:51 UTC 版)

上告審における裁判

民事訴訟において、上告が不適法である場合には決定で上告を却下することができる(民事訴訟法317条1項)。上告理由が、上告が許される事由に明らかに該当しない場合は決定で上告を棄却することができる(同条2項)。上告に理由がない場合には判決で上告を棄却する(同法319条)。

最高裁判所が上告審の場合については、最高裁判所平成11年(1999年)3月9日第三小法廷決定・集民第192号99頁によると、上告の理由の実質が明らかに民事訴訟法312条1項及び2項に規定する事由に該当しない上告であっても、上告裁判所である最高裁判所が決定で棄却することができるにとどまり(民事訴訟法317条2項)、原裁判所又は上告裁判所が民事訴訟法316条1項又は317条1項によって却下することはできない。

刑事訴訟においては上告が不適法である場合には決定で上告を棄却する(刑事訴訟法414条、385条、395条)。上告に理由がない場合には判決で上告を棄却する(刑事訴訟法408条)。

上告が却下又は棄却された場合には、原判決が確定する。

上告に理由がある場合又は最高裁判所の職権調査で原判決を維持できないことが判明した場合には、原判決を破棄する。法律審としての建前からは、原判決を破棄する場合、原裁判所(控訴審が行なわれた裁判所。高等裁判所が第一審の場合にはその高等裁判所)に差し戻して審理させることが普通である(民事訴訟法325条。刑事訴訟法413条本文)。このことを破棄差戻しという。これは、民事事件の上告審では法律審であるため事実調べができず、刑事事件でも事実認定が不十分な場合は事実審である下級審で再度必要な審理をさせる必要があるからである。これに対して、判決を確定させないことによって、当事者の双方に主張を述べさせる機会を与えるためである、あるいは、上告審は書面審理が原則のため、書面審理のみで判決を確定させるのは問題があるためであるという見解もある。差戻し後の判決にさらに上告することも可能であり、上告→差戻し→上告→差戻し、と繰り返し、裁判が長期化した例もある。

また、管轄違い等により原判決を取り消し、原審とは別の裁判所に移送すること(民事訴訟法第325条第2項、刑事訴訟法第412-413条)を破棄移送という。

原裁判所に差し戻さず、原判決を破棄して最高裁判所が自ら判決し、上告審で判決を確定させることを破棄自判という。これは、

  • 裁判が長期化することにより不利益がある場合
  • 民事事件において下級審の認定した事実だけで原審と違う判決が下せる場合
  • 刑事裁判において被告人に有利な方向に判断を変更する場合で、これ以上審理する必要がない場合

などに行われることがある(民事訴訟法326条、刑事訴訟法413条ただし書)。


注釈

  1. ^ もっとも、刑事事件について証拠の顕出という形で原判決の事実認定の当否を判断する資料に供することはできる(最高裁昭和34年8月10日大法廷判決)。また、職権調査事項については上告裁判所が事実を認定し得る(民訴法322条)。
  2. ^ 死刑判決の上告審で必ず口頭弁論が開かれる慣例は三鷹事件の上告審において1955年(昭和30年)6月22日に口頭弁論を開かないまま上告を棄却して死刑判決が確定して以降のこととなっている。
  3. ^ a b 死刑求刑事案では無罪。
  4. ^ 現:幡多郡黒潮町

出典

  1. ^ 産経新聞』1999年10月30日東京朝刊第二社会面「死刑適用 新たな基準示すか 国立の主婦強盗殺人上告審、結審」(産経新聞東京本社 記者:井口文彦)
  2. ^ 『産経新聞』1999年11月29日東京夕刊総合一面「国立主婦殺人 検察の「死刑要求」棄却 O被告の無期確定 最高裁判決」(産経新聞東京本社)
  3. ^ 最三判平成19年1月16日集民223号1頁最高裁判例情報 2014年8月20日閲覧
  4. ^ 産経新聞』2006年6月29日東京朝刊オピニオン面「【正論】白鷗大学法科大学院教授・土本武司 画期的意義もつ光市母子殺害判決 厳罰化の量刑傾向を決定づける 《量刑不当での上告は異例》」(産経新聞東京本社






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