リスクアセスメント リスクアセスメントの概要

リスクアセスメント

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/06 00:24 UTC 版)

リスクマネジメント > リスクアセスメント
  1. リスク特定 (risk identification) - リスクを発見し、認識し、記述するプロセス
  2. リスク分析 (risk analysis) - リスクの特質を理解し、リスクレベルを決定するプロセス
  3. リスク評価 (risk evaluation) - リスク(とその大きさ)が受容可能か(許容可能か)を決定するためにリスク分析の結果をリスク基準と比較するプロセス

通常は、リスクアセスメントの後で、リスク対応をする。リスク対応の手段には、リスク源の除去、起こりやすさの変更、結果の変更、他者とのリスクの共有、リスクの保有などがある。

用語としての「リスクアセスメント」は規格毎に意味が異なるため、注意が必要である。このページではISO規格を主軸に説明する。特に保険数理学関連の時は要注意である。 また、別の意味の「リスク評価」もリスクアセスメントにリダイレクトしていた(詳細は#用語注意にて説明)。

リスクマネジメント

ISO規格では、リスクアセスメントとは、もともとリスクマネジメントプロセス内のサブプロセスである。安全工学上はリスクとは、人、環境、物に悪い影響をあたえる可能性と大きさ(の積)である。予測されるリスクの可能性と大きさ(予測値)と、許容されるリスクの可能性と大きさ(許容値)を比較し、予想値が許容値を上回った時リスク軽減の施策またはリスク回避の施策をとるという意思決定を行い、実際にその施策をとり、より安全な状態を実現するプロセスをとることになる。このプロセス全体がリスク管理プロセスである。このように、リスクアセスメントは、リスク管理プロセス内の意思決定サブプロセスとなる。

リスクマネジメントの用語

  • リスクレベル (level of risk) - 結果とその起こりやすさとの組合せとして表されるリスクの大きさ
  • リスク基準 (risk criteria) - リスクの重大性を評価する基準
  • リスク対応 (risk treatment) - リスクを修正するプロセス
  • 残留リスク (residual risk) - リスク対応の後に残るリスク

リスク特定

リスク特定は、リスクを発見し、認識し、記述するプロセスである。「リスクの原因、現象、それらの発生、およびそれらによる潜在的な結果の特定」が含まれる[6]

ISO 31000で、リスク特定はリスク分析とリスク評価の前に行うリスク評価プロセスの最初のステップである[7]。リスクを「ハザード」として知られている分野では、このステップは「ハザード特定」として知られている[6](参照:#リスクとハザードの違い)。

リスクを特定するには、次のようなさまざまな方法がある[8]

  1. 過去のデータまたは理論モデルに基づくチェックリストまたは分類法
  2. 文献レビューや履歴データの分析などの証拠に基づく方法
  3. HAZOPFMEASWIFTなど、通常の運用からの逸脱の可能性を体系的に検討するチームベースの方法
  4. 特定の状況下で何が起こるかを特定するためのテストやモデリングなどの経験的方法
  5. シナリオ分析など、将来の可能性について想像思考手法。
  6. ブレインストーミング、構造化インタビュー、監査などの専門家を引き出す方法。

プロセス間の手法の違いについて

場合によっては、リスクの特定処理では、「他の場所で分析および評価されるリスク」を見つけて文書化することに限定される。ただし、多くのリスク識別手法は、管理手段が十分かも考慮され、改善の検討も推奨される。したがって、リスク識別手法は単独でリスク評価手法としても機能できるものも多い。

リスクとハザードの違い

「リスク」と「ハザード」の用語は両方とも同じ意味に使われることもあるが、リスクアセスメントの観点から見ると異なる用語である。[9]

  • ハザード: 自然災害、停電、劣化などによる危険性又は有害性
  • リスク: ハザードが悪影響をもたらす可能性の度合い (※注意:分野などで異なることもある。)

簡単に言うと、ハザードがなければリスクも無い。ただし、ISOの用語の定義変更があり同じ意味の時もある[10]


  1. ^ JIS Q 31000 「リスクマネジメント―原則及び指針」
  2. ^ ISO/IEC GUIDE 51:2014
  3. ^ JIS Z 8051:2004(ISO/IEC Guide 51:1999)「安全側面」
  4. ^ ISO/IECガイド51:2014 改訂について」2014
  5. ^ 消費生活用製品向け リスクアセスメントのハンドブック 経済産業省
  6. ^ a b Lyon, Bruce (2016). Fundamental Techniques. In Popov G, Lyon BK, Hollcraft B (eds.). Risk Assessment: A Practical Guide to Assessing Operational Risks: John Wiley & Sons 
  7. ^ a b Guide 73:2009 Risk Management - Vocabulary”. ISO. 2021年9月6日閲覧。
  8. ^ a b c d IEC 31010:2019 Risk management — Risk assessment techniques”. ISO. 2020年10月29日閲覧。
  9. ^ Sperber, William H. (2001). “Hazard identification: from a quantitative to a qualitative approach”. Food Control 12 (4): 223–228. doi:10.1016/s0956-7135(00)00044-x. 
  10. ^ ISO 31000
  11. ^ Harmonised Risk Acceptance Criteria for Transport of Dangerous Goods. European Commission. (2014). https://ec.europa.eu/transport/sites/transport/files/modes/rail/studies/doc/2014-03-25-dangerous-goods.pdf 
  12. ^ Douglas Hubbard "The Failure of Risk Management: Why It's Broken and How to Fix It, John Wiley & Sons, 2009. Page 22 of https://canvas.uw.edu/courses/1066599/files/37549842/download?verifier=ar2VjVOxCU8sEQr23I5LEBpr89B6fnwmoJgBinqj&wrap=1
  13. ^ IPCS Risk Assessment Terminology WHO
  14. ^ 出典:ISO 31010


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