ミーム 治療

ミーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/09 08:14 UTC 版)

治療

リチャード・ブロディの考察する「マインド・ウイルスからの治療」を以下に述べる[2]

ウイルスに感染すると、心に送り込まれるミームによって、ストレスや混乱を感じたり、自己破滅的なミームで心をいっぱいにされることも多い。ある人々が、年を取るに連れて人生が退屈に思えたり、生きる意味がないと感じたりするようになっていく原因の一つはマインド・ウイルスである。マインド・ウイルスは、個人にとって大切なことから注意を逸らし、他のことをさせるようにし向けるからである。こうしたことは、本人が気付かないうちに進行する。

ブロディの言う「治療」とは、すなわち哲学的な「どう行動すべきか」という問題を「どんなミームで自分をプログラムすべきか」と言い換えたものである。ただし、ミーム学は人々に特定の哲学を教えるものではない。

ミームの選択

安全を好む、性のチャンスを欲しがるなど、ミーム進化の要因となる脳の「傾向」は、あくまでも「傾向」であり、私達は必ずしも「傾向」に従う必要はない。私達は、自分で意識的に良いミームと判断したミームを持つことも可能であるとブロディは言っている。

脳がハードウェアでミームがソフトウェアだとすれば、ミームは心のプログラムである(これは、コンピューター・プログラムに喩えている)。何らかのプログラムが自分にとってマイナスならば、私達は自分の心のプログラムを変えることができる。つまり、自分にとって何がよいミームなのかを、自然淘汰に任せるのではなく、意識的に選択するのである。

瞑想

マインド・ウイルスのプログラムを、自分の意志で止める方法をブロディは紹介している。瞑想である。ただし宗教的なものではない。

やり方は、まずリラックスし、何も考えないようにし、浮かんでくる考えは、ただそれに気付くだけで反応せずに通り過ぎさせる。これを5分間続け、どのような気分になったかを確かめるのである。

これはマインド・ウイルスを完全に除去する方法ではなく、一時的に心をプログラムから解放する方法である。それによって完全にではなくとも、自分の心がいかにプログラムされているかを知る一つの方法である。

心のプログラムに気付くもう一つの方法は、自分の意見が他の人の意見と異なるときに、できるだけ相手の立場に立って、相手の話を理解するようにすることである。その後数日間、その時得た見方で時々周囲を見てみる。その見方を自分の考えにしないにしても、少なくとも自分とは異なる見方を知ることはできる。これによって自分のプログラムに気付くことができるのである。


注釈

  1. ^ 複製における忠実度は突然変異率が高く、ラマルク的変異の傾向をもつとされる。
  2. ^ なおドーキンスの最後の発言は、原文では、"I'm not committed to memes as the explanation for human culture." である[16]

出典

  1. ^ 第2版,日本大百科全書(ニッポニカ),百科事典マイペディア,世界大百科事典内言及, デジタル大辞泉,世界大百科事典. “ミームとは”. コトバンク. 2021年1月9日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s リチャード・ブロディ、森 弘之訳『ミーム―心を操るウイルス』講談社、1998年。
  3. ^ スーザン・ブラックモア about memes Memetics UK 2010年11月15日閲覧。
  4. ^ a b 中島 2019, p. 「ミーム」.
  5. ^ a b c ドーキンス 2018, p. 528.
  6. ^ ドーキンス 2018, p. 330-331.
  7. ^ a b リチャード・ドーキンス、日高敏隆 訳、岸由二訳、羽田節子訳、垂水雄二訳『利己的な遺伝子』紀伊國屋書店、2006年。
  8. ^ Geoffrey M. Hodgson (2001) "Is Social Evolution Lamarckian or Darwinian?", in Laurent, John and Nightingale, John (eds) Darwinism and Evolutionary Economics (Cheltenham:Edward Elgar), pp. 87-118. 原文(一部相違あり)
  9. ^ Oxford English Dictionary 内、ミームの項目。
  10. ^ リチャード・ドーキンス、垂水雄二訳 『遺伝子の川』草思社、1995年
  11. ^ 佐倉統ほか『ミーム力とは?』数研出版、2001年。
  12. ^ a b 。河田雅圭『進化論の見方』紀伊國屋書店、1989年
  13. ^ Viruses of the Mind リチャード・ドーキンス、1991年
  14. ^ Balkin, J. M. (1998), Cultural software:a theory of ideology, New Haven, Conn:Yale University Press, ISBN 0-300-07288-0
  15. ^ Richard Dawkins and Jaron Lanier "Evolution:The discent of Darwin", Psychology Toda,Translated by Minato NAKAZAWA, 2001. Last Update on January 12, 2001 (FRI) 09:22 .”. 2011年7月7日閲覧。
  16. ^ Psychology Today”. 2011年7月8日閲覧。
  17. ^ このシンポジウムをまとめた論考が、以下の書。
    ロバート・アンジェ 編、佐倉統・巌谷薫・鈴木崇史・坪井りん 訳『ダーウィン文化論:科学としてのミーム』産業図書、東京、2004年(原著2000年)。 
  18. ^ スーザン・ブラックモア著、垂水雄二訳『ミーム・マシーンとしての私』草思社。序文より





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