ミーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/28 21:32 UTC 版)
分類
- 流行ミーム
- すでに広まっているもの。定着したものは、習慣あるいは伝統ミームへと移行する
- 習慣ミーム
- 意識されることなく繰り返されているもの。
- 伝統ミーム
- 意識的な活動によって維持されているもの。
- 掟ミーム
- 規範としての正式な承認を受けたもの。法やルールなど。
- 仕掛けミーム
- 広めることを意図して人為的に作られたもの。
- 伝道ミーム
- 他者にも伝えようという呼びかけが含まれているもの。
- 伝説&物語ミーム
- 事実かどうか判断のつかないもの。あるいはフィクション。
- ミームに関するミーム
- ミームの視点から問題を捉えなおしたもの。メタミーム。
ブロディ(1998)によるもの[2]。
- 識別ミーム (distinction-memes)
- 私たち人間が、様々な物事を認識できるのは、世の中をあらゆる物事に分割してラベルを貼っている識別ミームが心の中にあるからである。例えば、「日本」とは、日本という識別ミームが私たちの心にあるから存在するのであって、日本という概念は現実ではない。もし日本というミームがなければ、陸と海があるだけである。また、このような概念と現実との区別も、ミームである。
- このように、物事についてのあらゆる概念はミームであって、真理ではない。すなわち、ミーム学の考え方(パラダイム)において、この世に絶対的真理は存在しない。なぜなら、物事にラベルを貼るやり方は、何通りもあるからである。例えば、土に対して、「土」以外の識別ミームを使えば、土を分子一つ一つに分解して識別することもできる。
- あるブランド・ロゴの識別ミームを心に持っていれば、知らないブランド・ロゴの商品よりも目に入り、買う可能性が高い。例えばコカ・コーラのロゴマークは多くの人が識別ミームとして持っている。これにより人々は店内でコーラを選ぶ時、見慣れないコーラよりもコカ・コーラの方を手に取りやすくなる。
- 英語が理解できる人、つまり英語の識別ミームを持った人は、英語を聞き取ることができる。しかし、英語の識別ミームを持っていない人は、英語を聞いても理解できない。
- このように、心に持っている識別ミームによって、人々の受け取る情報は選別され、行動も変わる。
- 関連づけミーム (association-memes)
- ミーム同士を関連づけるミーム。関連づけミームにより、ある物事(ミーム)によって別の感覚や考え(ミーム)が心に浮かぶ引き金となる。例えば、何かのにおいを嗅いで、過去の記憶を思い出すのは、においと記憶の関連づけミームがあるからである。また、「学校」という言葉を聞いて、自分の「学校での体験」が心に浮かぶのは、学校と「自分の体験」との関連づけミームが心にあるからである。
- テレビCMでは、製品といい気分の関連づけミームを視聴者の心に作り出す。例えば、女優の魅力と商品を関連づけたり、音楽の心地よさと商品を関連づける。
- 戦略ミーム (strategy-memes)
- 「何々をすれば何々という結果になる」という、原因と結果に関するミーム。このミームが心にあることで、そのミームに基づいて人は行動する。例えば、パソコンの使い方、車の乗り方、日常会話の仕方、人間関係における行動の仕方等、様々な戦略ミームが心の中にある。ただし、人間は予測の付かない行動を取ることもあり、そうした場合は戦略ミームは関係ない。
- 人は無意識の中にたくさんの戦略ミームを持っている。戦略ミームは物事への予測を持っているが、常に予想通りになるとは限らない。例えば外国で車線が自国と反対になると、無意識下にある運転の戦略ミームが上手く機能しないため、とまどうことになる。
- ある戦略ミームが必ずしも良い結果を招くとは限らず、そうしたミームが自分の心にあることに無自覚の場合もある。例えば、子供の頃に身につけた人間関係に関する戦略ミームが大人になってからも影響力を持つ場合、本人にとってマイナスとなることもありうる。
- なお、strategy の訳に日本語の「戦略」が対応しているが、ここでは軍事的な意味ではない。
注釈
出典
- ^ 第2版,日本大百科全書(ニッポニカ),百科事典マイペディア,世界大百科事典内言及, デジタル大辞泉,世界大百科事典. “ミームとは” (日本語). コトバンク. 2021年1月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s リチャード・ブロディ、森 弘之訳『ミーム―心を操るウイルス』講談社、1998年。
- ^ スーザン・ブラックモア about memes Memetics UK 2010年11月15日閲覧。
- ^ a b リチャード・ドーキンス、日高敏隆 訳、岸由二訳、羽田節子訳、垂水雄二訳『利己的な遺伝子』紀伊國屋書店、2006年。
- ^ Geoffrey M. Hodgson (2001) "Is Social Evolution Lamarckian or Darwinian?", in Laurent, John and Nightingale, John (eds) Darwinism and Evolutionary Economics (Cheltenham:Edward Elgar), pp. 87-118. 原文(一部相違あり)
- ^ Oxford English Dictionary 内、ミームの項目。
- ^ リチャード・ドーキンス、垂水雄二訳 『遺伝子の川』草思社、1995年
- ^ 佐倉統ほか『ミーム力とは?』数研出版、2001年。
- ^ a b 。河田雅圭『進化論の見方』紀伊國屋書店、1989年
- ^ Viruses of the Mind リチャード・ドーキンス、1991年
- ^ Balkin, J. M. (1998), Cultural software:a theory of ideology, New Haven, Conn:Yale University Press, ISBN 0-300-07288-0
- ^ “Richard Dawkins and Jaron Lanier "Evolution:The discent of Darwin", Psychology Toda,Translated by Minato NAKAZAWA, 2001. Last Update on January 12, 2001 (FRI) 09:22 .”. 2011年7月7日閲覧。
- ^ “Psychology Today”. 2011年7月8日閲覧。
- ^ このシンポジウムをまとめた論考が、以下の書。
ロバート・アンジェ 編、佐倉統・巌谷薫・鈴木崇史・坪井りん 訳 『ダーウィン文化論:科学としてのミーム』産業図書、東京、2004年 (原著2000年)。 - ^ スーザン・ブラックモア著、垂水雄二訳『ミーム・マシーンとしての私』草思社。序文より
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