ミュンヘン学派 (地理学) 批判・評価

ミュンヘン学派 (地理学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/23 02:06 UTC 版)

批判・評価

バーレンベルクドイツ語版は理論的基盤が脆弱であり、基本概念が不明瞭であるうえにマクロ分析が不足しているなどの批判をしており、ミュンヘン学派が地域研究の新たなパラダイムになりえないと主張している[13]

ヴァーレンはハルトケのフィールドが農村にあり、先進的社会を対象としなかったことを批判した。同様に森川 (2004)は、ミュンヘン学派を特色ある研究成果を上げたと評しつつも、伝統的な地理学的・地図学的な方法に依存する農村調査が中心であったために脱定着化した社会的性格を反映していなかったと評価している[11]

論争

現代における生活は機能的に分化した空間によって成り立っていると考えたルッパートとシャッファーに対してはレンクとヴィルトによって批判がなされ、論争に発展した[14]

1973年Geographische Zeitschrift誌上で、レンク(Gunter Leng)は「ブルジョア科学的」であるとしてマルクス主義の観点から批判論文を掲載し、労働を中心に据えるべきだとした[9][15]。これに対してルッペルトとシャッファーは翌1974年、「ブルジョア科学」ではなく経験的研究の蓄積から生じたものであり、必ずしも労働のみが社会生活の中心的機能ではないと同誌上で反論を行った[15]

教科書『社会地理学』が刊行された1977年ヴィルトドイツ語版がレンクと同じくGeographische Zeitschrift誌上で集団やプロセス概念が不明瞭であると批判したうえで、ミュンヘン学派が用いる「基本的生存機能」の概念は社会科学理論として学界では完全に無視されていると指摘した[9][15]。これに対してマイヤーほか4人の『社会地理学』の著者は、翌1978年同誌上で、社会学の方法を何故そのまま転用しなければいけないのかと反論し、立地に代わって人間集団の機能から社会地理学的分析をするのは非地理学的であると主張した[16]


注釈

  1. ^ ミュンヘン学派への批判を行ったギュンター・レング(Gunter Leng)は、ハルトケとその門下を「ミュンヘン学派」としているが、実際に批判をしていたのはルッパートとシャッファーのみである[1]
  2. ^ ボーベクの社会地理学とハルトケの社会地理学は大きく異なる[2]
  3. ^ ①居住、②休養、③財・サービスの購入、④教育、⑤余暇・休養、⑥交通、⑦コミュニケーション[8][9]

出典

  1. ^ a b c d 山本 1981, p. 338.
  2. ^ a b 森川 2004, p. 54.
  3. ^ 堤 1992, p. 262.
  4. ^ a b c d 堤 1992, p. 268.
  5. ^ a b 山本 1981, p. 337.
  6. ^ 山本 1981, pp. 52–54.
  7. ^ 山本 1981, p. 55.
  8. ^ a b c 山本 1981, p. 346.
  9. ^ a b c 森川 2004, p. 57.
  10. ^ 森川 2004, p. 58.
  11. ^ a b c 森川 2004, p. 55.
  12. ^ 堤 1992, p. 271.
  13. ^ 森川 2004, pp. 57–58.
  14. ^ 山本 1981, pp. 346–347.
  15. ^ a b c 堤 1992, pp. 272–273.
  16. ^ 堤 1992, pp. 274.


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