プラズマのモデリング 流体モデル

プラズマのモデリング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/05 08:47 UTC 版)

流体モデル

運動論モデルはプラズマの物理現象を正確に記述するが、多くの複雑性 (および数値シミュレーションでは多くの計算負荷) を伴う。流体モデルでは 巨視量 (密度平均速度、平均エネルギー等の、分布関数の速度空間における積率)を基礎変数にしてプラズマを記述することで、計算をより単純にする。これらの巨視量に対する方程式は、いわゆる流体方程式と呼ばれ、運動論的方程式の速度空間における積率を取る事で得られる。

流体方程式は、輸送係数 (移動度拡散係数等) の定め無しでは閉じられていない。輸送係数を定めるためには、分布関数をいくつかある候補の中から選択して仮定する必要がある。熱平衡が実現している系に対しては、マクスウェル分布は1つの良い選択である。しかし非平衡性が強くなるプラズマの系では、粒子の速度分布がマクスウェル分布から大きく変化する事が知られており、マクスウェル分布を仮定するといくつかの矛盾を抱える事がある[3][4][9][10]

流体方程式と電磁場方程式との結合系を考える理論体系は、電磁流体力学として知られている。

運動論と流体のハイブリッドモデル

ハイブリッドモデルでは、系の粒子種のいくつかを流体として、その他を運動論的に扱う。流体で扱う粒子種と運動論的に扱う粒子種、および電磁場がセルフコンシステントに解かれるように構成される必要がある。

プラズマ解析専用のシミュレータ製品

運動論ベース

流体ベース

また、上記に挙げたプラズマ解析専用のシミュレータの他に、汎用的な流体解析シミュレータにプラズマ解析機能が含まれるものもある。

教科書

  • Francis F. Chen, 'Introduction to Plasma Physics and Controlled Fusion', 3rd edition, Springer (2015), ISBN 978-3-319-22308-7
  • Nicholas Krall and Alvin Trivelpiece, 'Principles of Plasma Physics', San Francisco Press (1986), ISBN 978-0-911302-58-5
  • M. A. Lieberman and A. J. Lichtenberg「プラズマ/プロセスの原理」第2版、堀勝 監修、佐藤久明 訳、丸善出版 (2010年)、原著 'Principles of Plasma Discharges and Materials Processing'、ISBN 978-4-621-08223-2
  • 宮本健郎「核融合のためのプラズマ物理」『NIFS-PROC-80』シリーズ、核融合科学研究所 (2010年)、ISSN 0915-6348
  • 関口忠「プラズマ工学」『電気学会大学講座』シリーズ、オーム社 (1997年)、ISBN 4-88686-220-9

  1. ^ L. L. Alves et. al. (2018). “Foundations of modelling of nonequilibrium low-temperature plasmas”. Plasma Sources Sci. Technol. 27 (2): 023002. doi:10.1088/1361-6595/aaa86d. 
  2. ^ 日本機械学会 編『原子・分子モデルを用いる数値シミュレーション』7号、コロナ社〈コンピュータアナリシスシリーズ〉、1996年。ISBN 4-339-04141-6 
  3. ^ a b M. A. Lieberman、A. J. Lichtenberg『プラズマ/プロセスの原理』堀勝 監修、佐藤久明 訳(第2版)、丸善出版、2010年1月(原著2005年)。ISBN 978-4-621-08223-2 
  4. ^ a b 関口忠『プラズマ工学』オーム社〈電気学会大学講座〉、1997年。ISBN 4-88686-220-9 
  5. ^ 内藤裕志、佐竹真介「粒子シミュレーションのコーディング技法」『プラズマ・核融合学会誌』第89巻第4号、2013年4月25日、245-260頁、ISSN 09187928NAID 110009604189 
  6. ^ 真壁利明「反応性非平衡プラズマのモデリング」『応用物理学会』第60巻第7号、1991年、663-673頁、CRID 1390001204595199872doi:10.11470/oubutsu1932.60.663 
  7. ^ Birdsall, C.K. (1991). “Particle-in-cell charged-particle simulations, plus Monte Carlo collisions with neutral atoms, PIC-MCC”. IEEE Transactions on Plasma Science 19 (2): 65–85. Bibcode1991ITPS...19...65B. doi:10.1109/27.106800. ISSN 0093-3813. 
  8. ^ 洲鎌英雄「ジャイロ運動論」『プラズマ・核融合学会誌』第79巻第2号、2003年、107-120頁、CRID 1390001206513415552doi:10.1585/jspf.79.107 
  9. ^ J. van Dijk et. al. (2009). “Plasma modelling and numerical simulation”. J. Phys. D: Appl. Phys. 42 (19): 190301. doi:10.1088/0022-3727/42/19/190301. 
  10. ^ 電気学会・マイクロ波プラズマ調査専門委員会 編『マイクロ波プラズマの技術』オーム社、2003年。ISBN 4-274-19710-7 


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