フンボルトペンギン 人間との関係

フンボルトペンギン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/21 23:58 UTC 版)

人間との関係

グアノ採掘による産卵地の破壊、漁業による食物の競合や混獲、卵も含む食用・漁業の餌用の狩猟などにより生息数は減少している[3][5]。エルニーニョ、繁殖地での人間による攪乱や巣の踏み付け、人為的に移入されたイヌ(雛はクマネズミドブネズミも)による捕食、原油流出などによる影響も懸念され、生息数が減少したことでクルペオギツネやカモメ類・コンドル類といった在来種の捕食も脅威となっている[3]。1982年以前の生息数は16,000 - 20,000羽、1987年における生息数は10,000羽と推定されている[6]。一方で2003年におけるチリのチャニャラール島の生息数は成鳥22,000羽・未成熟個体117羽・雛3,600羽という報告例があり、生息数が減少していることは確かであるが繁殖に協調性がないため生息数を把握することが困難とされている[5]。1981年に、ワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]

本来の生息地である南米では、産卵場の環境破壊、餌の魚の乱獲など人為的影響やエルニーニョなどにより個体数の減少している[7]

日本では1915年に初めて恩賜上野動物園に寄贈された個体が飼育され、これは日本国内ではペンギン目全体としても初の飼育例とされる[11]。第二次世界大戦以前のペンギン目に関する飼育記録は限られるが、本種の飼育下繁殖には成功していたとされる[11]。第二次世界大戦以降では1953年東山動物園が飼育下繁殖に成功したとされる[11]。日本では1996年現在、70施設で1,162羽(ペンギン目全体での飼育個体数は約2,400羽)が飼育されている[11]

野生種は2005年には約1万羽にまで減少したとされる。国際自然保護連合 (IUCN) のレッドリストで絶滅の危機が増大している「危急」 (VU - Vulnerable) に指定されている。またワシントン条約付属書Iに指定されており、取引が厳しく制限されている。

フンボルトペンギンは、南アメリカ沿岸地域の温帯に生息しており[7]、日本の気候で飼育しやすいため、水族館や動物園で見かけることが多い[12]。日本でもっとも飼育頭数の多いペンギンであり、飼育頭数は70以上の施設で1600羽を超えているといわれ、日本での飼育頭数が全生息数の約1割を占める[12]。この数は世界的にみても大きな数である。飼育しやすい日本の気候に加えて停電孵卵器が停止することのない優れた日本の電力事情、孵卵器で雛を孵す技術や病気の治療法を確立させ、順調に繁殖させてきた背景がある[13]

絶滅危惧種である一方で、日本の動物園では増えすぎが問題となっている。そのため、現在は産卵された卵の9割を石膏や紙粘土などで作った擬卵とすりかえて繁殖を抑制する事態になっているという[13]。もっとも、他の国々では飼育しにくいペンギンであるといわれ、日本の様に大量に増えて飼われている国の方が珍しい。このような経緯で、2006年現在ではチリの飼育担当者が来日して研修を受けたり、チリへ孵卵器を送ったり、など、日本の繁殖技術を南米に移植する動きが出ている[14]


  1. ^ Appendices I, II and III (valid from 26 November 2019)<https://cites.org/eng> (download 30/04/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Spheniscus humboldti. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (download 30/04/2020)
  3. ^ a b c d e f BirdLife International. 2018. Spheniscus humboldti. The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T22697817A132605004. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2018-2.RLTS.T22697817A132605004.en. Downloaded on 30 April 2020.
  4. ^ a b c d e ポーリン・ライリー 「フンボルトペンギン」『ペンギン ハンドブック』青柳昌宏訳、どうぶつ社、1997年、147-149頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af David Salomon「フンボルトペンギン Humboldt Penguin」出原速夫・菱沼裕子訳『ペンギン・ペディア』、河出書房新社、2013年、83-95頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w Tony .D. Williams 「フンボルトペンギン」津崎さゆり訳『ペンギン大百科』、平凡社、1999年、403-408頁。
  7. ^ a b c d e 藤原幸一『ペンギンガイドブック』阪急コミュニケーションズ、2002年、118-119頁。ISBN 4484024152 
  8. ^ Tony .D. Williams 「マゼランペンギン」津崎さゆり訳『ペンギン大百科』、平凡社、1999年、409-421頁。
  9. ^ チリのフンボルトペンギンに絶滅のおそれ、調査報告”. AFP通信社. 2023年5月29日閲覧。
  10. ^ フンボルトペンギン ご長寿「トォちゃん」35歳に”. 産経ニュース (2022年2月5日). 2022年2月5日閲覧。
  11. ^ a b c d 堀秀正 「日本でのペンギン飼育」『ペンギン大百科』、平凡社、1999年、216-232頁。
  12. ^ a b Penguin Library フンボルトペンギン”. HOSHIZAKI. 2016年7月1日閲覧。[出典無効]
  13. ^ a b “絶滅危惧のフンボルトペンギン、日本では“増え過ぎ””. 読売新聞. (2006年7月9日) [要出典科学]
  14. ^ “フンボルトペンギン:絶滅の危機、救いたい チリの飼育担当者、都内で研修”. 毎日新聞. (2006年2月5日) [要出典科学]


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