ハダニ科 分類

ハダニ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/02/25 19:41 UTC 版)

分類

本科はハダニ上科に属し、この上科で最大の科である。同上科には他にヒメハダニ科 Tenuipalpidae とケナガハダニ科 Tuckerellidae があるが、ヒメハダニ科のものは触肢の脛節に爪を持たないことで、ケナガハダニ科のものは身体の後端に5-7対の体より長い背毛を持つことで判別出来る[14]

下位分類

全世界で1200種が知られ、これはハダニ上科では最大である[15]。ビラハダニ亜科とナミハダニ亜科に分けられ、前者は歩行器の構造が原始的であり、後者の方が植物寄生への適応がより進んでいるものと考えられる[16]

日本からは約90種が知られている。代表的なものを以下に示す[17]

  • Tetranychidae ハダニ科
    • Bryobiinae ビラハダニ亜科
      • Bryobiini ビラハダニ族
        • Bryobia ビラハダニ属:クローバービラハダニ・キクビラハダニ
        • Pseudovryobia マルビラハダニ属:マルビラハダニ
      • Hystrichonyini サキハダニ族
        • Tetranycopsis オニハダニ属:オニハダニ
      • Petrobiini ホモノハダニ族
        • Petrobia ホモノハダニ属:ホモノハダニ
        • Tetranychina カタバミハダニ属:カタバミハダニ
    • Tetranychinae ナミハダニ亜科
      • Eurytetranychini ヒロハダニ族
        • Rutetranychoides アラカシハダニ属:アラカシハダニ
        • Eutetranychus トウヨウハダニ属:トウヨウハダニ
        • Aponychus ヒラハダニ属:タイリクヒラハダニ
      • Tetranychini ナミハダニ族
        • Panonychus マルハダニ属:ササマルハダニ・リンゴハダニ・ミカンハダニ
        • Sasanychus ミドリハダニ属:ミドリハダニ・ヒメミドリハダニ
        • Schizotetranychus マタハダニ属:ヤナギマタハダニ・カシノキマタハダニ
        • Stigmaeopsis スゴモリハダニ属:タケスゴモリハダニ・ススキスゴモリハダニ
        • Yezonychus ケウスハダニ属:ケウスハダニ
        • Eotetranychus アケハダニ属:ウチダアケハダニ・アンズアケハダニ・クリアケハダニ・コウノアケハダニ
        • Oligonychus ツメハダニ属:マツツメハダニ・スギノハダニ・イネツメハダニ
        • Amphitetranychus クダハダニ属:オウトウハダニ
        • Tetranychus ナミハダニ属:アシノワハダニ・カンザワハダニ・ナミハダニ

利害

植食性であり、栽培植物を攻撃するものは農業害虫である。多くの重要な害虫がこの科に含まれる。同様に植物に加害するダニにはフシダニ類、ホコリダニ類、コナダニ類があるが、その中で本科のものは繁殖率が高くて繁殖が急激であること、駆除薬を常用すると薬剤抵抗性を獲得しやすいことから、防除の難しい害虫として農家に恐れられる[18]

化学的な農薬散布が行われる以前には、ハダニ類は重要な害虫ではなかったと考えられている。チャなどについては古い時代にも被害の記録があるが、これも恒常的なものではなかったようだ。現在ではハダニ類は重要な害虫となっているが、この変化についてはハダニ自身、あるいは栽培植物の変化でダニの繁殖力が高まったとする説と、農薬散布によって天敵が排除されたためとする説がある。短期的にも残留性の高い農薬を散布した後、特定のハダニが大発生する場合があり、この現象は「リサージェンス」と呼ばれる。チャのカンザワハダニ、柑橘類のミカンハダニでよく見られる。これは天敵が排除されるためとされる[19]

加害を受けた組織は吸汁痕が斑点状になるが、被害が大きくなるとは全体が黄色くなり、さらには褐色になって枯死する。若い葉が攻撃を受けると巻き込んだりと変形する例もあり、新芽では成長が停止する。名の通りに葉が優先的に攻撃を受けるが、密度が高くなると葉柄や果実も攻撃を受ける。葉の裏を好むものが多いが、ダニの種や植物の種によっては表が攻撃を受ける[20]

薬剤散布はハダニの抵抗性を増し、天敵を奪うことでむしろハダニの増殖を促す場合がある。そのために専用の殺ダニ剤が開発されているが、発育期間が短くて繁殖力が強い為、繰り返し散布する必要があり、やはり薬剤抵抗が問題になる。現在では害虫として問題になるのはそのような抵抗性を発達させた少数種に限られている。天敵による防除も試みられている。特にカブリダニ類は発育期間がハダニより更に短く、少数の餌でも成熟出来るので、ハダニの密度を低いレベルに押さえ込むことが可能である。チリカブリダニ Phytoseiulus persimilis はハダニ類のみを捕食し、日本では越冬が困難であることから生物農薬として用いられる。


  1. ^ 以下、記載は主として江原・後藤編著(2009)p.204/206
  2. ^ 梅谷・岡田編(2003)p.1010
  3. ^ 江原編著(1990),p.95
  4. ^ 江原・後藤編著(2009)p.204
  5. ^ 江原編著(1990),p.96
  6. ^ 江原編著(1990),p.145
  7. ^ 江原編著(1990),p.2
  8. ^ 梅谷・岡田編(2003)p.1011
  9. ^ 梅谷・岡田編(2003)p.1012
  10. ^ 江原編著(1990),p.7
  11. ^ 梅谷・岡田編(2003)p.1012
  12. ^ 梅谷・岡田編(2003)p.1012
  13. ^ この項は江原編著(1990),p.111-119
  14. ^ 江原・後藤編著(2009)p.202
  15. ^ 江原・後藤編著(2009)p.204
  16. ^ 江原・後藤編著(2009)p.2011
  17. ^ 江原・後藤編著(2009)p.208-211
  18. ^ 江村他(2012)p.277
  19. ^ 梅谷・岡田編(2003)p.1013
  20. ^ 梅谷・岡田編(2003)p.1012


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