ダルブー導関数 微分積分学の基本定理

ダルブー導関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/17 01:49 UTC 版)

微分積分学の基本定理

本節の目標はωをダルブー導関数に持つ関数が存在する条件を記述する事である。

そのための準備として、まず「発展」という概念と「モノドロミー」という概念を定義する。

発展

fの定義域が区間の場合は、「微分積分学の基本定理」が成り立つ:

定理 ― ωを区間上の-値1-形式とし、gGの元とする。このとき、関数

を満たすものが一意に存在する[6]

上記の定理を多様体M上の曲線に対して用いる事で以下の定義が得られる:

定理・定義 (曲線の発展) ― ωを多様体M上の-値1-形式とし、M上の曲線とし、gGの元とし、ωcによるへの引き戻しとする。このとき、

を満たすものが存在する。 gからのcに沿ったω発展: development of ω along c starting at g)という[6]

モノドロミー

ωが構造方程式を満たせば、発展の終点はホモトピー不変である:

定理 ― ωを多様体M上の-値1-形式で

を満たすものとする。さらにM上の2つの曲線でc0の始点、終点がそれぞれc1の始点、終点に一致するものとし、さらにgを元Gの元とする。

このとき、c0c1が(始点と終点を固定した)ホモトープであれば、c0gからの発展の終点とc1gからの発展の終点は等しい[7]

よってMの点P0におけるM基本群を考えると、cの発展の終点を対応させる写像は代表元cの取り方によらずwell-definedである。

定理・定義 (モノドロミー) ― 記号を上述のように取るとき、写像

単位元eからのの発展の終点)

は準同型になる。ωモノドロミー表現: monodromy representation)といい、Gの部分群モノドロミー群: monodromy group)もしくは周期群: period group)という[7]

定理の記述

モノドロミーを用いると、ωをダルブー導関数に持つ関数が存在する必要十分条件を特徴づける事ができる:

定理 (微分積分学の基本定理(: Fundamental theorem of calculus[7])) ― Gをリー群とし、Gのリー代数とし、Mを多様体とし、ωM上の-値1-形式とする。このとき、ダルブー導関数ωと一致する関数が存在する必要十分条件は、以下の2条件が成立する事である[7]

  • モノドロミー群は単位元のみからなる群である。

定理 (解の実質的な一意性) ― 記号を上の定理と同様に取る。このとき、ダルブー導関数ωと一致する関数2つが存在すれば、それらの関数f1f2は、あるが存在して

を満たす[7]


出典

  1. ^ #Sharpe p.115.
  2. ^ #Tu p.198.
  3. ^ 中央大学大学院理工学研究科 数学特別講義第三 微分形式の可積分性”. p. 50. 2023年6月27日閲覧。
  4. ^ #小林 p.59.
  5. ^ a b #Sharpe p.115.
  6. ^ a b #Sharpe pp.119-120.
  7. ^ a b c d e #Sharpe p.121-123.

注釈

  1. ^ ダルブー導関数を説明した日本語の文献が見つからなかったので、本項の専門用語はいずれも本項執筆者が暫定的に訳したものである。


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