セマダラコガネ 習性

セマダラコガネ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/17 01:12 UTC 版)

習性

発生は年1回で、成虫は6-8月に見られる[4]。昼行性で、広葉樹を中心に様々な植物の葉や花を食べる。夜間は希に灯火に飛来する[5]。幼虫越冬で5月下旬頃より蛹になる[6]

類似種など

本種にごく似たものには以下のようなものがある。

  • オキナワセマダラコガネ B. okinawaensis :沖縄に分布する。本種によく似ているが、背面の光沢がこの種の方が強く、また前翅前端の側面が後方に幅広くならない。
  • オオダイセマダラコガネ B. ohdaiensis (Sawada):本種に似ているが、前胸背の後端側と前翅の前端側部の間に隙間が出来る[3]。また前胸背と小楯板に黒みが強い。本州の紀伊山地、四国の石鎚山、九州の彦山、祖母山、霧島山など限られた山地帯にのみ見られる[7]

害虫として

下記のようにこの種は日本ではさほど重要な害虫とは見なされてこなかった。しかし移入先では重大な害虫として注目され、また日本でも近年に被害が目立つようになっている。そのために対策として本種の性フェロモンの研究[8]や寄生性の線虫[9]や寄生菌の研究などもなされている。

日本の場合

農業害虫として知られる。梅谷、岡田編(2003)では本種は繰り返し取り上げられ、それによると芝生への被害が最も大きいようである。幼虫が芝草の根を食べるものの、従来はさほどの被害をなすものではなかった。しかし近年にゴルフ場の芝生に本種が大発生し、甚大な被害を与える例がある[5]。また材木苗圃の害虫としても古くから知られる[10]。それ以外では被害はさほどのものでなく、それでも取り上げられるのが多いのはその食性が広範にわたるためらしい。ラッカセイでは根に被害を与えたという報告は一応あり、また葉を食害してかなりの密度に達する例はあるがドウガネブイブイほどの被害は出さない[11]ダイズの葉の食害ではその被害は無視出来る程度[10]カキについても同様らしい[12]オウトウリンゴでは局地的だが被害を出す[13]。柑橘類では花に飛来して加害することがある[14]バラでもごく普通に飛来し、花の中に潜り込んで食害すると言うが、実害はあまりないとのこと[15]

移入種として

本種は日本固有種であったが現在では国外に移入種として侵入し、各地で国内より重要な害虫と見なされている。

アメリカ合衆国においては1908年にハワイに侵入し、サトウキビ畑に壊滅的な被害をもたらすようになった[16]。本種の天敵と考えられたツチバチの1種 Scolia manilae が1916年に導入されたが効果がなかった。アメリカ本土で最初に発見されたのは1920年8月、コネチカット州ニューヘイブンでのことで、それ以降は次第に北東部地域へとその分布を拡大させた。成虫は花を多少加害する程度だが、幼虫のイネ科植物への害が大きく、特に芝生の被害がひどく、地表近くの根を食べてしまう。

現在では例えば『ニューヨークの芝生や植物を配した庭園における最も重要なジムシ系の害虫[17]』との評価があるほどである。ちなみに北アメリカでは本種をオリエンタルビートルと呼び、本種以前に侵入していたマメコガネをジャパニーズビートル、さらに後発のアカビロウドコガネ Maladera castanea をアジアティックガーデンビートルと呼び、庭園植物の重要な害虫として並び称している[8]


  1. ^ 以下、記載は主として石井他編(1950),p.1319
  2. ^ a b c Exomala orientalis (oriental beetle) - CABI
  3. ^ a b 上野他(1985),p.397
  4. ^ 梅谷、岡田編((2003),p.171
  5. ^ a b 梅谷、岡田編(2003),p.972
  6. ^ 澤田(1980)
  7. ^ 中根他(1963),p.134
  8. ^ a b Zhang et al.(1994),p.2416
  9. ^ Koppenhoefer & Fuzy(2009)
  10. ^ a b 梅谷、岡田編(2003),p.163
  11. ^ 梅谷、岡田編(2003),p.171
  12. ^ 梅谷、岡田編(2003),p.330
  13. ^ 梅谷、岡田編(2003),p.377、484
  14. ^ 梅谷、岡田編(2003),p.570
  15. ^ 梅谷、岡田編(2003),p.785
  16. ^ この下りはZhang et al.(1994),p.2416、ただしこの論文では本種をアジアに広く分布するものとし、移入元をフィリピンと『推定されている』としている。ついでにこの論文では本種をOBと略してある。
  17. ^ Facundo et al.(1999)


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