スヴァリイェ級海防戦艦 概要

スヴァリイェ級海防戦艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/15 16:29 UTC 版)

概要

スウェーデン海軍は自国の沿岸防御のために、1906年度海軍計画において海防戦艦3隻の整備を計画した。これがスヴァリィエ級装甲艦である。しかし、設計が進むにつれて本級の建造時には世界は弩級戦艦の時代に入っており

  • 速力は他国の戦艦並が好ましい
  • 耐候性を上げるために艦形は大型化させる
  • 主砲は前弩級戦艦並が効果的である
  • 水線部の防御は他国の装甲巡洋艦の攻撃に耐える事
  • 機動性は装甲巡洋艦フィルギアと同等が好ましい
  • 主機関はタービン機関を採用すべき

などの研究結果を反映した結果、主砲は国産の28.3cm砲が開発・採用され、前級よりも艦形が大型化して7000トン台となった他、タービン機関の採用もあって速力は22ノットを超える高速性を発揮していた。このために当初の予算よりもコストがかかり予算が降りず、1番艦の建造予算の一部には国民からの拠金もあったが1911年になってようやく建造が始まった。2番・3番艦は政府の資金で建造された。しかし、建造途中で第一次世界大戦が勃発し、建造資材の不足で建造が伸び、就役は同大戦後となった。

本級は1920年代と1930年代の二度にわたって近代化改装を行い、弩級戦艦と見間違えるような外見に変貌した。

なお本級の「ドロットニング・ヴィクトリア (Drottning Victoria) 」 がジョージ6世戴冠記念観艦式にスウェーデン海軍の旗艦として参列した際に、外洋航行能力を持たないフィンランド海軍イルマリネン級海防戦艦[注釈 4]イルマリネン (Ilmarinen) 」をイギリスまで曳航したという逸話がある[5]

そもそもジョージ6世戴冠記念観艦式に参加したフィンランド海軍の海防戦艦は「ヴァイナモイネン (Väinämöinen) 」である[6]。また「ドロットニング・ヴィクトリア」が「ヴァイナモイネン」を曳航したという事実もない[7]

1960年代に順次、退役した。


  1. ^ 九、瑞典[1](中略)沿岸防禦艦隊は海防艦(小型戰艦)三隻、飛行機搭載艦一隻、驅逐艦八隻、ヴェデット・ボートと掃海艇とで合計八隻、潜水艦十隻及び若干の雑艦艇から成立つてゐる。(中略)彼のスヴェリジ級(Sverige)の諸海防戰艦に對しては、或る程度の近代的改造が行はれてある。而して其の所要經費は五三,〇〇〇,クローネとなるであらう。(以下略)
  2. ^ イギリスは海防艦 (Coast Defense Ships) 、ドイツ海軍の分類ではPanzerschif(いわゆるポケット戦艦)もしくはKüstenpanzerschiff(沿岸防御装甲艦)となる。
  3. ^ 「スヴェリィジ」とも[2]
  4. ^ ヴァイナモイネン級沿岸防備艦とも[4]

脚注

  1. ^ ブラッセー海軍年鑑 1937, pp. 38–39原本51-52頁
  2. ^ 世界海軍大写真帖 1935, p. 66d(瑞典)戰艦スウェリィジ(一九一七年竣工)排水量七〇一〇噸、時速二二節半。前方煙筒は艦橋構造の妨げとならざるやう後方に傾斜せしめられ第二煙筒は舊態を變ぜず。
  3. ^ 世界海軍大写真帖 1935, p. 66c(瑞典)戰艦グスターフ五世號(一九二一年竣工)排水量七〇一〇噸、時速二二節半。一九二九~三〇年度の再建策の際煙筒及び上部構造が改變された。
  4. ^ 世界海軍大写真帖 1935, p. 67(芬蘭)沿岸防備艦イルマリネン(一九三三年竣工)排水量四〇〇〇噸。速力一六節。十吋高角砲の最大限仰高度五十度。
  5. ^ 橋本、海防戦艦 2022, p. 246.
  6. ^ 橋本、海防戦艦 2022, p. 247.
  7. ^ 橋本、海防戦艦 2022, p. 248.






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