シャア・アズナブル 経歴

シャア・アズナブル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/10 23:41 UTC 版)

経歴

ガンダムシリーズには多数の派生作品があり登場人物の事蹟も異なる場合があるが、ここでは特に断りのない限り、「正史」とされるテレビアニメ『機動戦士ガンダム』『機動戦士Ζガンダム』およびアニメーション映画機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』における事蹟を基準に記す。

一年戦争以前から一年戦争前半までの経歴は、主にテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の企画段階における設定や富野由悠季著の小説『機動戦士ガンダム』による設定を整理して、アニメ版の設定に組み込んだ『モビルスーツバリエーション』 (MSV) などの書籍による。

一年戦争終結後(ア・バオア・クー脱出)からエゥーゴが結成されるまでの経緯は映像化も特にされておらず、『機動戦士Ζガンダム』にてワンカットが描かれたのみである。そのため従来は文字による設定や、小説版『機動戦士Ζガンダム』における細部の描写で判断するしかなかった。『ガンダムエース』に連載された北爪宏幸の漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』は本格的にこの期間を描いているが、続編である『機動戦士Ζガンダム Define』も含め細部の設定が異なっている。その他、ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズやプレイステーション用ゲーム『機動戦士Ζガンダム』などでは、サンライズが制作したアニメムービーにて短いながらその期間が描かれている。

第一次ネオ・ジオン抗争から第二次ネオ・ジオン抗争開戦以前の期間も映像化されておらず、また、準公式的な扱いをされている作品もないため、諸説入り乱れている。

生誕から幼少時代

生誕
宇宙世紀0059年11月17日、ジオン共和国創始者、ジオン・ズム・ダイクントア・ダイクン(『THE ORIGIN』ではアストライア・トア・ダイクン)の子キャスバル・レム・ダイクンとして生まれる。セイラ・マス(本名:アルテイシア・ソム・ダイクン)は実妹。
妾の子として生まれたものの、父ジオンは正妻とは子をもうけることが出来なかったため、未来のジオンの後継者として期待され、英才教育を受けて育つこととなる。
ザビ家からの逃亡生活
宇宙世紀0069年、ジオン・ズム・ダイクンの死後、ザビ家による迫害を受け地球に逃れる。この頃は、父ジオンのよき理解者であったジンバ・ラルの庇護の下、南欧のマス家に養子入り(あるいは、ジンバがマス家の名を購入して改名)し、「エドワウ・マス」を名乗る。記録上、父のジオンは病死とされているが、実際はデギン・ソド・ザビらによる暗殺と見ており(父がデギンを暗殺者として名指ししようとした動作を、後継者に指名したように装ったとジンバ・ラルやシャア(およびセイラ)は考えている)、ザビ家への復讐を誓う。
エドワウ・マスの名はテレビシリーズ放映当時には設定されておらず、小説版で初めて登場した。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、宇宙世紀0057年の生まれとされ、デギンが学部長を務めるムンゾ大学の時計台にて誕生[8]。ジオン・ズム・ダイクン急死、サスロ・ザビ暗殺などの政変により、サイド3(本作では当初「ムンゾ自治共和国」と称していた)に居場所を失ったキャスバルとアルテイシアの兄妹は、ランバ・ラルクラウレ・ハモンらの手引きでジンバ・ラルと共に地球へ亡命する。しかし母のアストライア・トア・ダイクンとは生き別れとなってしまう。マス家の当主、テアボロ・マスの元に養子入りするが、ジンバが独断でクーデターを謀ったためにキシリア・ザビの刺客に襲われジンバは死亡、テアボロも重傷を負う。彼らの苦況を見かねたシュウ・ヤシマ(ミライ・ヤシマの父)の提案で、彼が所有するサイド5のテキサスコロニーへ移住することとなる。
『THE ORIGIN』でのキャスバルの愛慕の対象はTV版本編とは異なり、神憑りな政治的扇動者である父ジオンではなく、彼とその命を狙う(と教えられた)ザビ家によって薄幸な人生をたどる母アストライアであり、彼女が最終的に報われぬ死を迎えたことでキャスバルはザビ家への憎悪を強めたとの独自解釈が作者の安彦によって加えられている。後に見いだしたララァ・スンを愛したことも、彼女の中に母の面影を見たためであるとされた。

サイド3潜入時代

ジオン士官学校への入学
宇宙世紀0074年、「シャア・アズナブル」を名乗り潜入、ジオンの士官学校に入学。士官学校時代にガルマ・ザビと出会い親交を結ぶ。優秀な成績を修め、首席で卒業できる状況だったが、卒業直前の演習において上官に逆らって評価を落とし、ガルマに首席を譲って次席で卒業する(ガルマに花を持たせるためにわざと上官に逆らったかのような描写がある)。宇宙世紀0078年、卒業と共にキシリア・ザビ揮下の教導機動大隊に入隊。
宇宙攻撃軍への入隊
その後、ジオン公国国防軍がドズル・ザビ旗下の宇宙攻撃軍とキシリア・ザビ旗下の突撃機動軍の2隊に分割されたことに伴い、宇宙攻撃軍に入隊した。ジオン公国軍における軍籍番号は「PM0571977243S」である。
ジオン公国では正体を隠すため、常に仮面を着けている。顔に火傷の痕がありそれを人目に晒したくないためと本人は説明しているが、実際には顔にそのような傷はなく、実は美男子であるという噂が立っていた。一方でセイラに対しての説明では、過去を捨てるためだと述べている。仮面の下の眼は外から見えないので、表情は分かりづらい。
なお誕生日11月17日とされることが多いが、9月27日とする説もある。一説によれば11月17日がキャスバルの、9月27日が本物のシャア・アズナブルのものとされるが、キャスバルが「シャア・アズナブル」名のIDをどのように手に入れたかは諸説入り乱れておりはっきりしない。一般的には死亡したシャア・アズナブルという人物のIDを不正に入手したとされるが、アズナブル家に養子に入ったなどとする説も存在する。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、キャスバルがシャアを名乗った理由として「シャア・アズナブルという人物が元々別に存在した」という説を取っている。ここで登場する「本物の」シャア・アズナブルはテキサスコロニー管理者の息子で、キャスバルと瞳の色以外は瓜二つの風貌を持ち、同コロニーへ移住した際に友人となった。ジオニズムに傾倒したシャアはジオン士官学校を受験し合格。母の死をきっかけにザビ家への復讐のためキャスバルもまたサイド3行きを決意し、同行を申し入れる。キャスバルの動きを知ったキシリアは暗殺を命じるが、事前にこれを予測していたキャスバルはシャアのカバンに拳銃を紛れ込ませることで、シャアがシャトルに乗れなくなるよう仕向けて、自身との入れ替わりを提案する。その結果、時間通りのシャトルに乗り込んだ本物のシャアはキシリア機関が仕掛けたシャトル爆破事故でエドワウ・マスとして命を落とす。キャスバルはその後シャアとして後発のシャトルでジオンに潜入することに成功し、シャアから事前に盗んでいた入学許可証によりジオン士官学校へ入学し、以後シャア・アズナブルを名乗ることになる。本物のシャアとの瞳の色の違いについてどう弁明したかは記述はないが、先天的色素異常を理由にサングラスを着用するようになった。やがて教練過程を経て予備任務に就く。
連邦側の不手際で起きた事故を巡り、ズム・シティで暴動が発生。鎮圧に赴く連邦駐留軍の先手を打つべく、ガルマら同期の士官学校生を扇動する。士官学校長のドズルを拘束のうえ、連邦軍宿舎を奇襲して制圧した「暁の蜂起事件」を引き起こし、ガルマと共に一躍英雄となった。のちに事態の収束のため学籍を抹消され除隊処分となるが、ガルマからドズルが秘密裏に進めるモビルスーツ開発計画を聞かされていたため、復隊の際にパイロットとして採用するようドズルに働きかけた。なお、この事件の際に学友からルナボールゴーグルに遮光グラスをはめこんだ「仮面」をプレゼントされ、以後それを常用するようになった。
除隊後は地球へ降りて、ジャブロー建設工事の進んでいたアマゾンマナウスに滞在。情報収集や建設反対派との関係構築、モビルスーツの前身である建設重機モビルワーカーの操縦の習熟など後の行動の下準備を進めている。またここでララァ・スンと出会い保護している。その後モビルスーツのテストパイロットとして軍に復帰、ミノフスキー博士亡命事件では、史上初となるモビルスーツ同士の戦闘に参加。ランバ・ラル、黒い三連星と共に戦果を上げ昇進を果たす。

一年戦争前半

赤い彗星としての活躍
宇宙世紀0079年1月、地球連邦政府との「一年戦争」が勃発。宇宙攻撃軍第6機動大隊第4小隊隊長[注 3]として活躍する。愛機ザクII C型をパーソナル・カラーである赤に塗装し、ルウム戦役ではたった一人で5隻もの戦艦を沈め、「赤い彗星」の異名を得、その名は連邦軍の末端兵士にまで轟き恐怖の存在となる。OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』第1話ではサラミスを撃沈している。また、このときの功績により中尉から少佐二階級特進する。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、リュウの台詞として、戦艦以外の撃沈を含むことが記述されている。
ルウム戦役におけるシャアの活躍は、『機動戦士ガンダム』の中では直接描かれていない。後に前述のOVA『MS IGLOO』、OVA『第08MS小隊』に収録された映像特典「宇宙世紀余話」でもシャアのルウム戦役での逸話「5艘飛び」に触れられ、この時MSの推進力の噴射と同時に、戦艦や隕石を次の標的へ向かう際の踏み蹴る足場として利用するといった、MSの人型兵器である利点を器用に使うことで「赤い彗星」「三倍の速度」といった渾名が生まれたことが語られた。
その後、ドズルがルウム戦役で旗艦としていたムサイ級旗艦型軽巡洋艦ファルメルを受領し、モビルスーツ中隊長の任に就く。乗機も指揮官用のザクII S型が与えられている。

一年戦争後半(『機動戦士ガンダム』)

ガンダムとの出会い
同年9月、連邦軍のゲリラ部隊掃討作戦の帰路に新型艦(ホワイトベース)を捕捉。これを追尾することで、サイド7で連邦軍が極秘にモビルスーツを開発しているとの(V作戦の)情報をつかむ。偵察に出した部下が、ザクもろともガンダムに撃破(史上初となる武装モビルスーツ同士の戦闘)されると、自らコロニーに潜入しホワイトベースに避難し従軍していた妹のアルテイシア(セイラ)と再会[9]、そして生涯のライバルとなるアムロ・レイのガンダムと初対決を繰り広げる。この時シャアは戦闘に不慣れであったアムロを終始圧倒するものの、120ミリ機関砲(ザク・マシンガン)で撃たれてもびくともしないガンダムの強固な装甲(「連邦のモビルスーツは化け物か?」と呟いている)や、ビームライフルといった武装に驚嘆する。
その後、ホワイトベースとガンダムの奪取もしくは破壊を命じられ、サイド7を脱出したホワイトベースを追跡。ホワイトベースの逃げ込んだ連邦軍宇宙要塞ルナツーへ潜入し破壊工作を行うなど、幾度となく攻撃を仕掛けるが失敗。多数の部下とザクを失う。しかし、ホワイトベースの大気圏突入を狙った奇襲の際、友軍を壊滅させられながらもジオン勢力下に降下させることに成功する。
地球への降下〜ガルマ謀殺により左遷
地球降下後は士官学校同期で地球方面軍司令のガルマ・ザビと合流。当初はガルマと協力しホワイトベースの撃破を目指して共闘するが、ガルマが乗るガウが通過するのを隠れ潜んで待つホワイトベースを見つけ、ガルマがイセリナとの結婚を認められたくて焦っていることなどを鑑み、これをまたとない復讐のチャンスと考えてガルマを謀殺、ザビ家への復讐の第一歩とする[注 4]。ガルマの死は彼を溺愛していたドズルの怒りを買い、ガルマを守れなかった責任により宇宙攻撃軍を罷免、左遷される。なお、この頃にはすでにキシリアからの使いが彼と接触している。
富野の原作によると、左遷され各地を転々としていた際、インドの娼館にてララァ・スンと出会い、ニュータイプの素質を見いだしたとされる。
このことについては富野由悠季の小説『密会 アムロとララァ』にて詳しく書かれている。シャアは、ララァの中に見いだした母性に思慕の情を抱くと共に彼女を寵愛し、また優れたニュータイプである彼女を傍に置くことによって、自分の感覚を研ぎ澄ませようとした(シャアはララァに対し「その能力だけを愛している」といい、ララァもそれを承知していたため、シャアがどの程度ララァを愛していたのかは不明である)。しかし、後にアムロにニュータイプとしての能力に差をつけられるようになり、またララァもそのアムロとより強く惹かれ合うようになる。シャアはそのことに対して嫉妬を覚え、やがて三者は悲劇的な結末を迎えることになる。
また、『M.S.ERA0099』には場末の街の水商売風の女性がいる場所からフラナガン機関の車に乗り込むシャアとララァが描かれている(同書後半の各写真の説明箇所に記載されている)。
左遷からの復帰
同年11月、キシリア・ザビの引き立てでキシリア率いる突撃機動軍に編入。オデッサ作戦直前の時点では中佐だった[10]。その後大佐昇進と共にマッドアングラー隊の司令に就任する。
ベルファストおよび大西洋上でのホワイトベース隊との戦闘(シャア自身は攻撃には直接参加していない)の後、追尾し、連邦軍本部があるジャブローへの進入口を発見。この情報をもとにジオン軍はジャブローへ総攻撃を仕掛けるが、連邦軍とホワイトベース隊の反撃に遭い、失敗に終わる。シャア自身は潜入部隊を乗せたアッガイ数機を率いて(シャア自身は赤いパーソナルカラーのズゴックに搭乗)ジャブローへと潜入。破壊活動を行っていた際に偶然セイラと二度目の再会を果たし、セイラにホワイトベースから降りるよう諭して別れる。
この後、連邦軍守備隊と交戦し彼らを圧倒するものの、アムロのガンダムとの戦闘で腕部を破壊され、バランサーに不具合が生じたため撤退。ガンダムのパイロットとしての成長に驚きながら、ジャブローを後にする。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、オデッサとジャブローのエピソードが前後した関係でシャアの遍歴も変化している。ガルマ戦死の責により除隊した後、ジャブロー近辺でキシリアに捕えられ、原隊復帰の交換条件としてジャブローへの突破口を開くことを申し出る。ジャブロー反対派の原住民の手引きによりジャブローへ潜入、攻撃隊を侵攻させることに成功する。その後マッドアングラー隊を率いてベルファストへ向かうホワイトベースを追い、再び赤いザクでガンダムに挑むが中破されて脱出、マッドアングラー隊も解散したためオデッサでは不参戦となった。
再び、宇宙へ
同年12月、ホワイトベースを追ってザンジバルで地球を離脱。かつての部下ドレンの率いるキャメル艦隊と共にホワイトベースを挟撃しようとするが、同艦隊はシャアが駆けつける前に全滅。シャアのザンジバルも攻撃を開始するものの被弾し、撃破にはいたらなかった。
中立の非戦闘地帯であるサイド6においてアムロと初めて直接対面する。この邂逅でアムロが一見でシャアだと直感したのに対し、シャアは当人にフルネームで名乗られたにもかかわらず、「……はて? どこかで聞いたような」と、彼がガンダムのパイロットであることに気づかなかった。この時、シャアは、車をスタックさせた敵軍の少年兵に対し軍服の膝を泥で汚して助けてやるという、戦場では決して表わさない親切な人柄を見せている。
月末、テキサスコロニーでマ・クベとアムロの戦いを見る。マ・クベが敗れるのを見届けた後、アムロと交戦するが撤退する。この頃からニュータイプに覚醒しつつあるアムロに一方的に圧倒されるようになる。またテキサスでは妹セイラと三度目の再会を果たし、再びホワイトベースから降りるように伝え、除隊後の生活のためにアタッシェケース入りの地金複数個を渡している。
小説『密会 アムロとララァ』では、アムロと初めて直接対面した際に言った「シャア・アズナブル。ごらんのとおり軍人だ。」という台詞にはシャア自身が道化のような格好を恥じているのか、軍人そのものを侮蔑しているのか自己卑下があり、赤い彗星と呼ばれることをうっとうしいと感じているとアムロには分かった[11]
その後、ララァ・スンのモビルアーマーエルメスと共に幾度か出撃する。二人は連邦軍宇宙艦隊を相手に戦果をあげたが、ニュータイプとして覚醒したアムロと、マグネット・コーティングを施されたガンダムに完敗[注 5]。ララァは、ガンダムのビームサーベルからシャアをかばい戦死する。この出来事はシャアとアムロの大きな遺恨となり、その後の二人の人生と、彼らの間の確執を決定づけた。
アムロとの決戦
宇宙要塞ア・バオア・クーでの決戦ではニュータイプ用モビルスーツ・ジオングに搭乗してSフィールドに出撃。連邦軍が要塞に取り付くのを阻止する任務には失敗するが、ガンダムと互角に戦い相討ちになる。そして要塞内部でアムロと生身でを使って斬り合うが、駆けつけたセイラの説得中に爆発に巻き込まれ、戦いは中断される。この戦いでアムロから剣で額を突かれ、その傷跡は生涯消えることはなかった(「ヘルメットがなければ即死だった」と言っているように、ヘルメットのバイザーシールドと仮面で二重の防護になっていたため致命傷は免れる。アムロはシャアの剣に左肩を刺された。)。
その後、セイラに別れを告げると要塞から脱出し始めたザンジバルのブリッジにキシリアがいることを確認し、司令席に座ったキシリアに敬礼をする。シャアを視認したキシリアは、その直後にシャアにバズーカで窓越しに撃たれて頭を吹き飛ばされ即死、ザンジバルも直後にサラミス級巡洋艦に砲撃されて轟沈した(艦橋を破壊されたことが沈んだ直接の原因ではない)。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、キシリアよりニュータイプ部隊長を拝命するも全滅させられたことで顔向けできなくなり、ギレンの軍門に下る。ギレンもまた彼がキャスバルと知りつつ、ジオングを貸与することで手駒の一つに加えるが、間もなくキシリアはギレンを謀殺。ジオングを相討ちで失ったシャアはアムロとの決闘の後、自分の存在価値は仇討ちにしかないと考え、旗艦パープルウィドウに乗艦したキシリアを狙撃。その爆炎はドロス、そして要塞をも呑み込む。アムロとの決闘の際には元々白兵戦の経験がないアムロを圧倒するものの、かつて暗殺者に殺されそうになったかつての自分(エドワウ・マス)をアムロに、そしてかつての自分を殺そうとした暗殺者を今の自分にそれぞれ重ね合わせてしまい、錯乱。ニュータイプとしての素養から急速に白兵戦のコツを掴んだアムロに対し隙を見せる形となった。
「トミノメモ」にあっては、グラナダ陥落後ギレンの指揮下でニュータイプ部隊の一員に加わる。もはやギレンへの復讐心よりもアムロとの子供じみた因縁に取り憑かれた彼は、アムロとの戦いのなかで瀕死の状態まで追いつめられる。シャアの正体を知らされたギレンではあったが、ジオン軍のスターであり、その上ソーラ・システムの立案者であるシャアを殺そうとはせず中将に取り立てようとまで言い放つ。だが最終的には、ア・バオア・クーに攻め入ったアムロらホワイトベース・クルーとともに重体を押してギレン殺害に走り、親衛隊の凶弾に倒れる。そして妹セイラにアムロへの讃辞を託し、彼は要塞の爆炎に消えることとなる。
ア・バオア・クー脱出
キシリア殺害後、テレビアニメ版での描写はなく、シャアは生死不明となる。劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』では、キシリアが乗っていたザンジバル級機動巡洋艦が沈む際、爆風に紛れて離脱を図り、敗残兵とともに要塞を脱出、グワジン級戦艦に乗り戦場を離脱していることが暗示されている[注 6]
ア・バオア・クーからの脱出に関しては、1986年に勁文社より発売された山口宏著のゲームブック『機動戦士ガンダム 最期の赤い彗星』、漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』にて詳しく描かれているが、いずれも解釈は異なる。ア・バオア・クー攻略戦の時点におけるマ・クベの生死から、前者はテレビアニメ版を、後者は劇場版をベースにしている。
『最期の赤い彗星』では数人の部下と共にマ・クベの旗艦アサルムを奪取しア・バオア・クーを脱出。キシリアの腹心の部下であるトワニングの送り出すペズンモビルスーツの追撃をかわしながらグラナダを経由してアクシズに向かっている。対して、『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』では、マ・クベと協力してミネバ・ラオ・ザビを警護しながらア・バオア・クーを脱出し、直接アクシズへ向かっている。
逃亡に使用したグワジン級は、『めぐりあい宇宙編』の絵コンテではグワランとされるが、『最期の赤い彗星』ではアサルムとされ、ラポート発行の書籍『機動戦士Ζガンダム大辞典』でもアサルム説を採用している。
また、岩田和久著の漫画『機動戦士Ζガンダム 宇宙を超える者』(講談社発行の漫画雑誌『ガンダムマガジン』2号に収録)によれば、ア・バオア・クー脱出の際にガンダムの破片を持ち帰っており、後にガンダリウムγの開発に寄与することとなる。

アクシズ時代

ハマーンとの出会い
宇宙世紀0081年3月、一年戦争の終結の後に連邦に投降しなかった残軍の最大のグループに加わったシャアは、ザビ家の正統な血のつながりを持ったミネバを守って、火星木星の間(アステロイド・ベルト)にある、小惑星アクシズへ逃亡、潜伏し、そこでシャアはアクシズの建設に従事することになる。自分は、全てを知るべき価値のある男だろうかと考えたかったのである[12]
また、ここでミネバを補佐していたニュータイプの少女ハマーン・カーンと出会う。
宇宙世紀0083年頃にはアクシズが地球連邦軍による襲撃を受け、戦闘に参加している。このことは近藤和久著の漫画『JUPITER[ZEUS] IN OPERATION TITAN U.C.0083』(単行本『新MS戦記 機動戦士ガンダム短編集』に収録)や『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』にて描かれているが、いずれも解釈は異なる。
『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』では、この時期にハマーンのサイド3視察に随行しており、ジオン独立同盟の党首カイザス・M・バイヤーと接触し、父ジオン・ダイクンの遺志を継ぎ決起するよう打診されるが、サイド3の情勢から判断し時期尚早であるとして固辞している。また、当作ではシャアとハマーンとの関係は恋仲ではなく、ハマーンの一方的な憧れにすぎない。シャアはハマーンの親友であるナタリーと恋仲になっている。
ハマーンとの別離
宇宙世紀0083年8月、指導者であったハマーンの父マハラジャ・カーンが死没すると、その後継者としてハマーンを推挙する。ハマーンがミネバの摂政に就任してザビ家の再興を進めるが、政治的にお互いの意見が対立するようになり、ついに地球圏への偵察を名目にアクシズを離れる。
マハラジャが病死する直前に『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』では、アクシズ内で強硬派が「真ジオン公国軍」を名乗りクーデターが発生したとされ、シャア自身わずかな部下と共にアクシズに潜入し、首謀者であるエンツォ・ベルニーニ大佐の捕縛と過去の背任行為を公表し、内戦の鎮圧に成功している。
アクシズ離脱については『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』の他に水原賢治の漫画『機動戦士ガンダム0084 Psi-Trailing』(バンダイ発行の雑誌『MS SAGA』2号に収録)でも描かれているが、こちらは公式設定とは矛盾がある。
アクシズからの離脱
シャアは、アクシズでミネバを守る女たちの造反騒動に厭気がさして、地球に戻ることになる[12]

エゥーゴ結成時代

クワトロ・バジーナとして地球圏に帰還
宇宙世紀0084年9月、アクシズで開発されたモビルスーツ用の新素材ガンダリウムγを携えて地球圏に帰還し、偽名とサングラスで正体を隠して[13]非合法に「クワトロ・バジーナ」というIDと連邦軍の軍籍(大尉)を取得。エゥーゴ(反地球連邦政府組織)に加わる。なお、クワトロはイタリア語で4を意味しており、キャスバル、エドワゥ、シャアに次ぐ「4番目の名前」であることを暗示している。
クワトロ・バジーナという名前を騙って地球連邦軍に身を投じたのは、アムロ・レイに接触するためと、ザビ家の残党を統合して、再度、打倒地球連邦政府を目指すためであった[12]
クワトロ・バジーナという名前の由来を窺わせるものとして、『ガンダム・トリビュートマガジンG20』Vol.5に掲載された小説作品「コロニーが落ちる日に-宇宙植民地建造年代記」にて、ブリティッシュ作戦によるコロニー落としを阻止しようと行動していた赤いザクのパイロットが、「ジオン共和国義勇軍所属クワトロ・バジーナ大尉」と名乗っている。
高橋昌也の小説『THE FIRST STEP』(大日本絵画発行の書籍『ガンダムウォーズ プロジェクトΖ』に収録)によれば、ブレックス・フォーラと共にエゥーゴを結成したのも彼であるとされ、アクシズ離脱の時期や理由も違う。これは現在の公式設定とは解釈が大きく異なる。
アーガマへの配属
エゥーゴでは、境秀樹の小説『モビルスーツコレクション・ノベルズAct.5 宿敵の幻影』(バンダイ発行の雑誌『SDクラブ』12号に収録)によれば、γガンダム(リック・ディアス)の開発に関わり、また同作と小説版『機動戦士Ζガンダム』によれば、γガンダムにリック・ディアスと命名したのも彼である。
その後、最新艦アーガマに配属されモビルスーツ隊隊長となる。ただ、クワトロ=シャアであるということは薄々感付かれていたようである。またアポリーロベルトは一年戦争時代からの部下で、彼らと共にアクシズから来たともいわれている。
さらにこの時期、漫画『機動戦士Ζガンダム 宇宙を超える者』によれば、リック・ディアスII(リック・ディアス改)にて大気圏突入の実験も行っている。

グリプス戦役(『機動戦士Ζガンダム』)

カミーユとの出会い
宇宙世紀0087年3月、アポリーとロベルトを率いてリック・ディアスでサイド7・グリーン・ノア1に潜入し、ティターンズの新型モビルスーツガンダムMk-IIの奪取を図る。グリーン・ノア1の民間人であるカミーユ・ビダンの協力もあり奪取に成功。この事件が引き金となりエゥーゴとティターンズとの間で本格的な武力抗争が始まる(グリプス戦役)。
その後、サイド1・30バンチで、ティターンズのやり方に疑念を抱いてアーガマへ投降したエマ・シーンに対し、ティターンズの横暴を説く。また月面都市アンマンで、部下のキグナンからアクシズが地球圏に向かっていることを知らされる。
宿敵アムロ・レイとの再会
同年5月、地球でシャアは7年ぶりに宿敵であるアムロ・レイと再会することになる。だが、シャアはそのアムロに運があるという印象は持てても、それほど秀でているという印象はなかった。そして、シャアは「普通」という意味の重さを知ったのだった[12]
作戦失敗の多発
同年5月、連邦軍本部ジャブローへの攻撃に参加するため地球に降下するが、連邦本部はすでに移動していたため、目的が果たせず作戦は失敗。作戦後は、支援組織カラバと合流し地球からの離脱を図る。
同年8月、ティターンズのアポロ作戦阻止に動くが作戦は失敗。その後、エゥーゴの指導者であるブレックス・フォーラと共に議会に出席するが、政府の腐敗ぶりを目の当たりにし、失望する。さらにブレックスがティターンズに暗殺され、死の間際のブレックスから「シャア・アズナブル」としてエゥーゴを託される[14]
アクシズとの接触
同年10月、地球圏に帰還したアクシズと結盟するため、使節団の一員としてグワダンに赴くが、ハマーンの歪んだ教育を受け、傀儡君主と化したミネバの姿に憤慨し、確執が表面化して交渉は決裂する。
同年11月、衛星軌道上からカラバによるキリマンジャロ基地へ対する攻撃を支援する予定であったが、ヤザン・ゲーブルが率いるハンブラビ隊の奇襲を受け、地球への降下を余儀なくされる。降下後、アウドムラをはじめとするカラバの攻撃隊と合流し、攻略戦を指揮。キリマンジャロを制圧した後、世論を味方につけるためカラバ、ルオ商会の協力を得てダカールの連邦議会を占拠して全世界にテレビ中継で演説を行う。この時シャアは自らがクワトロ大尉としてエゥーゴに参加していたことを明かし、ジオンの遺志を継ぐ者として演説することで、自身の発言と行動に絶大な説得力を与え、ティターンズの非道を糾弾して、エゥーゴの正当性を訴えた[注 7]。この演説と、演説を妨害しようとしたティターンズのエゥーゴへの攻撃により議会が被弾したことによって、議員だけでなく地球の一般市民、さらにはティターンズ内部にまでもティターンズに対する不信感が生まれ、戦局はエゥーゴに傾く。
三つ巴の戦い
宇宙世紀0088年2月、エゥーゴ、ティターンズ、アクシズの三つ巴の戦いとなる。最終局面、グリプス2(コロニーレーザー)内で、ハマーンのキュベレイとシロッコのジ・Oと激戦を繰り広げ、グリプス2を守り抜きティターンズ艦隊を撃破する。しかし、その後のハマーンとの交戦の際、乗機である百式は大破、戦艦の爆発に巻き込まれ、行方不明となる。この後『Ζガンダム』はコックピットハッチが開いた状態で浮遊する百式が映し出されて幕を閉じる。
ゲーム『機動戦士Ζガンダム』では三つ巴の戦いの直後の状況が映像化され、大破した百式から出てカミーユの精神崩壊を感じ取っている。また、その後は連れ出されたミネバを保護する描写もある。また、アクシズ時代のジオン軍服を着たシャアがキュベレイの前に立つ描写もある。
ゲーム『SDガンダム GGENERATION モノアイガンダムズ』ではグリプス戦役中にガンダムMk-II以外にLRX-077 シスクードの奪取も行っているが、あくまでゲーム独自要素(宇宙世紀物以外との絡み、時系列の無視など)があり、正史扱いは難しい部分がある。

第一次ネオ・ジオン抗争時(『機動戦士ガンダムΖΖ』)

消息不明
この時期のシャア・アズナブルは消息不明であり、アニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』ではOPと第1話のナレーションでしか登場していない。
放送前の富野のインタビューによれば、「まだΖΖに出てくるかは決まっていないが、Ζの継続番組ということもあって世代が継がっている。そしてハマーン・カーンという女性がいる限りはシャアが自分でザビ家をやって良いという所までいけない。だが色々な事があった末にシャアが悩むと言うことから脱した場合は狡猾な手段なんか使わなくてもやれてしまう位とても強くアムロ・レイなんかは何も知る前に殺されてしまう。それこそシャアに勝てるニュータイプを出さなければ、『ΖΖ』なんかは5本もいらずに物語があっという間に終わってしまう。そんなシャアを殺すか、殺さないかしない限りは物語が終わらなくなってしまうし、進行もトロトロやらなければいけなくなる。なので、今回の敵はハマーン、マシュマーのような小悪人程度が丁度良い。」という趣旨を語っている[17]
また別のインタビューでは「ダカールの演説でシャアがあのような立場になった後は、自分の事を曖昧模糊とした立場に置いて生きていく。そして『ΖΖ』の時に自分がザビ家をやっても良いと思うところまでおちればハマーンを殺すが、アーガマの敵でもあるという立場になる。ジュドーはそんなシャアの事を非難して殺しに行き、シャアはジュドーに負けそうになるが、それによって怒って悩みを捨てて本当に強いシャアになるという。そんな展開方法の一つもあるが、結局彼は負け続ける男だろう。」という趣旨を語っている[18]
漫画版『機動戦士ガンダムΖΖ』では、アフリカで行方不明になったリィナをシャアが保護してブライトの前に登場。

第二次ネオ・ジオン抗争に向けた準備期

第一次ネオ・ジオン抗争終結後、宇宙世紀0090年頃にはネオ・ジオンの再興を開始しており、軍備の増強を行っていた。この時期については様々な作品で描かれているがそれぞれ描写が異なる。

機動戦士ガンダム シャアの帰還
宇宙世紀0090年5月、旧ジオン公国軍においてランバ・ラルと並び称されたというダンジダン・ポジドン率いるネオ・ジオン残党軍と接触し掌握。ネオ・ジオンの再興を開始する。
機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還
宇宙世紀0090年にスウィート・ウォーターでネオ・ジオン再興に向け活動している姿が描かれている。
機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス
宇宙世紀0091年、巨大マシン「伝説巨神」の破壊を決定したネオ・ジオンに背いて巨神を起動させようとするヒトーリン司令を討伐するため、部隊を率いて木星圏に現れる。
機動戦士ガンダム ジオンの再興新MS戦記 機動戦士ガンダム短編集
宇宙世紀0092年、フレデリック・ブラウンら率いる旧ネオ・ジオンの地上残党軍に対し、宇宙に撤退するよう命令している。

第二次ネオ・ジオン抗争(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』)

地球粛正への決意
宇宙世紀0092年12月、新生ネオ・ジオンの総帥シャア・アズナブル(小説ではシャア・ダイクンとも名乗っている)として再び姿を現し、幾度にも渡る戦争を経験しながら、旧態依然としてスペースノイドに弾圧を続ける地球人類の粛正を決意する。ジオン・ダイクンの遺児にして旧ジオンのエース「赤い彗星」でもあった名声を利用し、旧ネオ・ジオン軍の残党や、ナナイ・ミゲルギュネイ・ガス等の優秀な士官を糾合、小規模であるが精鋭ともいえる戦力を保持する。そして、しばらく戦火から遠ざかっていた連邦政府に対し、自らの艦艇をもって地球圏にスウィート・ウォーターの占拠を宣言する。
宇宙世紀0093年2月末、テレビのインタビューで連邦政府に事実上の宣戦布告をする。
アクシズ落とし
同年3月、艦隊を率いてスウィート・ウォーターを出発。アムロ・レイやブライト・ノアが所属する連邦軍・外郭新興部隊「ロンド・ベル」の抵抗に遭うものの、自らモビルスーツ・サザビーで出撃し、小惑星5thルナを連邦軍本部所在地であるチベットのラサに落下させることに成功する。
その後、サイド1のロンデニオンにて連邦軍高官アデナウアー・パラヤと、武装解除を条件にアクシズを譲り受けるという偽の和平交渉を行うと、直ちにルナツーを強襲し配備されていた核兵器を奪取。そして、地球に核の冬をもたらすべく、地球へのアクシズ落としを決行する。アクシズを守るため、自分を慕うクェス・パラヤも戦わせるなどロンド・ベルと必死の激戦を繰り広げる。
アムロとの最終決戦
宇宙世紀0093年3月12日、νガンダムを駆るアムロと最後の決着をつけるべくサザビーで戦うが敗れる。その際、脱出ポッドを捕まえられ、アクシズの落下を抑えるアムロと共にサイコフレームの光の中に消えていく。そしてアクシズは軌道を変え、作戦は失敗に終わる。その後の二人の行方は一切不明とされている。

第二次ネオ・ジオン抗争後(『赤の肖像 ~シャア、そしてフロンタルへ~』)

機動戦士ガンダム』から、『機動戦士Zガンダム』、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の映像カットを交えながら行われた朗読イベント『赤の肖像 ~シャア、そしてフロンタルへ~』では、シャアの今までの人生を振り返つつ、逆襲のシャア以降のシャアの消息とシャアの思惟がフル・フロンタルに取り憑く過程が描かれた。

アムロ・レイと共に、アクシズを押し出すほどのサイコフレームの光に包まれたシャアは、この光がとても暖かく優しいと感じ、ララァ・スンを初めとした女達の温もりを思い出していた。光の中でシャアは子供のように怒り、泣き、サイコフレームの光とは、地球から発した全ての人の総意がサイコフレームを媒介にして発動したのだと理解した。自分自身の怒りや絶望でさえもこの光の一部であったと理解し、自分は雑多に奔り過ぎた、自分も愚民であったと我が身を振り返る。アムロの声が遠くなっていく中、どこかの赤ん坊の声を聞きながらシャアは、妹のセイラ・マスに別れを告げると、刻が見える世界へと旅立つのであった。
全体の一部となったシャアは気が付くと、宇宙の深淵にいた。暗く冷たい底なしの闇が続くその場所は、地球は遠く星の光に埋もれ判別さえ出来ない。先ほどまで自分を包んでいたサイコフレームの虹色の光でさえここには届かず、例え届いたとしても光を光と認識する命が存在しないのだから無意味だったと理解した。想像出来る範囲内は闇に閉ざされており、文明はおろかその戸口に立った生命体さえ認められない。シャアは、宇宙のスケールから見ると、一つの文明が誕生し、崩壊するまで一瞬であるため、人類が一瞬の光芒をこの宇宙に刻み、無へ回帰する無意味な存在だと断定。ニュータイプになれば、あの暖かな光を以って時間さえ支配できると生前は思っていたが、それは夢であり、地球を包んだあの虹を見ても人類は変わらず、これからも変えられない。人類とは、真理からは遠く光を超える術すら手に入れられず届く範囲のスペースで増えては滅ぶもので、ならば導く必要はないと結論付けると、シャアの残留思念がフル・フロンタルへ憑依するのだった。

ラプラス事変(『機動戦士ガンダムUC』)

虹の彼方に
宇宙世紀0096年、シャア本人は3年前のシャアの反乱からアムロ・レイと共に依然行方不明であったが、ジオン共和国の解体阻止と「サイド共栄圏」建設を画策するジオン共和国国防大臣モナハン・バハロは、シャアに似せた強化人間フル・フロンタルを用意して赤い彗星の再来を演じさせると、シャアがいなくなったことで大規模な活動を行わなくなっていたジオン残党をまとめ上げ、通称「袖付き」を作り上げる。
機動戦士ガンダムUC』の小説版ではシャアは最初から最後まで登場しないままだが、アニメ版ではOVAのepisode7「虹の彼方に」およびOVAを再構築した地上波放送版『機動戦士ガンダムUC RE:0096』第21話「この世の果てへ」で、ラプラスの箱を巡る最終決戦でララァと共に霊体らしきシャアがフロンタルが搭乗しているネオ・ジオングのコックピット内に一年戦争時の軍服姿で登場した。
フロンタルの肩に手をかけ「潮時か…」と呟くシャア。自壊するシナンジュを呆然とした顔で見るバナージに向け「君に…託す。なすべきと思ったことを…」とシャアは言葉を送った。そしてアムロの「もういいのか?」という言葉にシャアは「あとは彼らに任せよう」と返し、シナンジュの残骸から蒼色の白鳥のようなイメージが舞い踊り、ララァの笑い声とともに青と黄と緑の光が宇宙の果てへと消えていった。

マハの反乱(『ガイア・ギア』)

独立運動の伝説的巨人
宇宙世紀200年代、シャアはこの時代かつての宇宙移民者独立運動のリーダーとして語り継がれ[19]、彼の「遺産」を承けつぐ者としてアフランシ・シャアという青年が登場する。シャアは小説『ガイア・ギア』1巻第11章「闇のモノローグ」の挿絵でアフランシの傍らにイメージとして登場し、劇中ではアフランシの脳内にはシャアの意識、記憶を封じ込めたセルチップが埋め込まれているので、時折アフランシの脳内でシャアの声が響く(ラジオドラマ(CDドラマ)ではアフランシの脳内のシャアの声を池田秀一氏が担当)。

注釈

  1. ^ 英文表記の初出は、サウンドトラック機動戦士ガンダムIII アムロよ…』の販促用ポスター[1]
  2. ^ 初期の資料ではスペルがQuattro Vaginaとなっていた。
  3. ^ 「宇宙世紀余話」より。「第6機動大隊」は書籍『戦略戦術大図鑑』が初出。
  4. ^ ガルマが初めてホワイトベースと戦ったテレビ版第6話のシャアは「彼(ガルマ)がガンダムと戦って死ぬもよし、危うい所を私が出て救うもよしと思っていたが」と独白しており、当初は今すぐに殺す意図はなかったことがわかる。
  5. ^ マグネット・コーティング処理される前日の戦闘では互角の戦いだったので、シャアは「昨日までのガンダムとは違う」と驚愕している。
  6. ^ 角のある特徴的なヘルメット姿の人物のシルエットがブリッジに確認できるが、その人物がシャアであるかは示されていない。
  7. ^ シャア・アズナブルの正体がジオン・ズム・ダイクンの遺児・キャスバルであることは、ダカール演説によって初めて世に知られたとする解釈がある[15]が、Ζガンダム本編の第5話「父と子と…」におけるカミーユの発言から、シャアがジオン・ダイクンの実子であり、一年戦争において復讐のためにザビ家打倒を目論んでいたことは、物語の開幕時点ですでに世間に知られていたと思われる[16]
  8. ^ 現実にドイツ語圏の大学には伝統的にメンズーアと呼ばれる慣習があり、真剣を用いたフェンシングの試合とそれによる向う傷を名誉なものと称揚する慣習がある。
  9. ^ 正式な出撃でないケースでは、カミーユの父フランクリンが逃亡を図った際にノーマルスーツなしでガンダムMk-IIに搭乗した描写がある。なお、この場面は正史とされるアニメ版の中でシャアが「ガンダム」を称するモビルスーツに搭乗した唯一の例でもあった。
  10. ^ 「シャア専用」は創通により商標登録もされている(登録番号第4973642号)。

出典

  1. ^ ロマンアルバム 1980, p. 170.
  2. ^ CHARACTER”. 機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式サイト. 2019年7月16日閲覧。
  3. ^ シャア・アズナブルは、なぜあんなにややこしいのか?”. ギズモード・ジャパン (2016年5月20日). 2019年7月16日閲覧。
  4. ^ a b c d 倉田幸雄編「アニメキャラリサーチ シャア・アズナブル 機動戦士Ζガンダム」『アニメディア 1986年2月号』学習研究社、昭和61年(1986年)2月1日、雑誌01579-2、75頁。
  5. ^ 「人物対比図」『機動戦士ガンダム記録全集』2、日本サンライズ、140頁。
  6. ^ 「キャラクター2」『Ζガンダムを10倍楽しむ本』講談社、90頁。
  7. ^ 『機動戦士Ζガンダム 第二部 アムロ・レイ』カバーページの説明文より
  8. ^ 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式ガイドブック 2巻』収録の「誕生」より。
  9. ^ 第2話「ガンダム破壊命令」より。
  10. ^ 『機動戦士ガンダム』第24話、キリシア・ザビとジオン軍高級将校との会話より。
  11. ^ 小説『密会 アムロとララァ』62ページ
  12. ^ a b c d 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 後編』65ページ
  13. ^ 池田秀一さんお誕生日記念!一番好きなキャラは? 3位シャンクス、2位シャア、1位は…”. アニメ!アニメ! (2018年12月2日). 2020年6月26日閲覧。
  14. ^ 機動戦士ΖガンダムII A New Translation 恋人たち”. GUNDAM.INFO (2019年5月12日). 2020年7月15日閲覧。
  15. ^ 『プロジェクトファイル Ζガンダム』SBクリエイティブ、2016年10月3日、60頁。
  16. ^ 『評伝シャア・アズナブル -《赤い彗星》の軌跡- 上』講談社、2006年12月6日、168頁
  17. ^ ラポート『富野語録 富野由悠季インタビュー集』143頁(初出は同社刊のアニメ雑誌『アニメック』 86年5月号より)。
  18. ^ ラポート『富野語録 富野由悠季インタビュー集』149頁(初出は同社刊『機動戦士Ζガンダム大事典』より)。
  19. ^ 小説『ガイア・ギア 2巻』表紙解説ページ
  20. ^ 「Q.5月12日は母の日!シャアの母になれそうなキャラクターは?」はララァ・スンが1位!【5/6~5/12】”. GUNDAM.INFO (2019年5月12日). 2020年7月12日閲覧。
  21. ^ 2012.01.04 第3回 「マザコンで、幼児性ひきずってる」 復讐の原点は母の死(シャア (2)) 重要なガルマの死
  22. ^ 『アニメーション「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」キャラクター&メカニカルワークス 上巻』7ページ
  23. ^ 漫道コバヤシ16回 2015年5月19日
  24. ^ 氷川竜介著 『アニメ重箱の隅』 IRD工房(2010年) 初出は「アニメージュWeb
  25. ^ 「シャア専用ザク」の赤は、なぜ3倍強そうなのか アニメ彩色の知覚心理学 _ J-CAST会社ウォッチ(2_2)
  26. ^ 「夢見て走れ | 桃色彗星(2005-10-20)」
  27. ^ 『別冊アニメディア』 「機動戦士Ζガンダム完全収録版」より。
  28. ^ 機動戦士ガンダム (プレイステーション2)』のMS VIEWERの解説ボイスなど
  29. ^ a b c 映画秘宝』関係者の中にいたガンダム野郎編「サンライズ企画案デスク(当時) 飯塚正夫INTERVIEW 『機動戦士ガンダム』誕生の秘密 いかにして『ガンダム』は大地に立ったか」『ガンダム・エイジ ガンプラ世代のためのガンダム読本』洋泉社、1999年4月9日、ISBN 4-89691-379-5、66頁。
  30. ^ 歌手アズナヴールとシャアの関係については、日本テレビ系列『スッキリ!!』(2010年11月2日放送)でも紹介
  31. ^ [1]
  32. ^ 機動戦士ガンダムUC 公式Twitter”. 2018年4月27日閲覧。
  33. ^ a b NHK 発表! 全ガンダム大投票 40th”. 2018年6月2日閲覧。
  34. ^ 福井晴敏「虹の彼方に(下)」『機動戦士ガンダムUC 第10巻』角川書店〈角川コミックス・エース〉、2009年8月26日、ISBN 978-4-04-715287-8、137-138頁。
  35. ^ 福井晴敏「虹の彼方に(下)」『機動戦士ガンダムUC 第10巻』角川書店〈角川スニーカー文庫〉、2011年4月1日、ISBN 978-4-04-474842-5、144-145頁。
  36. ^ その経緯の詳細は、福井晴敏書き下ろしの脚本を、池田秀一が演じた朗読劇『赤の肖像 ~シャア、そしてフロンタルへ~』でも語られている。
  37. ^ 福井晴敏「虹の彼方に(下)」『機動戦士ガンダムUC 第10巻』角川書店〈角川コミックス・エース〉、2009年8月26日、ISBN 978-4-04-715287-8、148頁。
  38. ^ 福井晴敏「虹の彼方に(下)」『機動戦士ガンダムUC 第10巻』角川書店〈角川スニーカー文庫〉、2011年4月1日、ISBN 978-4-04-474842-5、155頁。
  39. ^ 『月刊ガンダムエース』 2014年7月号 特別付録 機動戦士ガンダムUC メモリアルBOOK II 「機動戦士ガンダムUC」完結 福井晴敏インタビュー
  40. ^ 『機動戦士ガンダムUC』福井晴敏インタビュー 5年の歳月を経て完結[後編]”. アニメ!アニメ! (2014年8月10日). 2014年8月10日閲覧。






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