ガブリエル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/14 06:53 UTC 版)
ユダヤ教とガブリエル
ユダ王国の滅亡からバビロン捕囚時代を舞台に書かれた旧約聖書の『ダニエル書』の中で、預言者ダニエルの幻の中に現れるのがガブリエルであり、神がその名前を呼ぶ場面がある[6](8章15節〜17節参照)。ダニエルは雄山羊と雄羊が格闘する幻を見せられ、その意味について思い悩むが、そこへガブリエルが幻の意味を解き明かすために現れる[7]。
わたしはウライ川の両岸の間から人の声が出て、呼ばわるのを聞いた、「ガブリエルよ、この幻をその人に悟らせよ」。 — ダニエル書8章16節(口語訳)
すなわちわたしが祈の言葉を述べていたとき、わたしが初めに幻のうちに見た、かの人ガブリエルは、すみやかに飛んできて、夕の供え物をささげるころ、わたしに近づき、わたしに告げて言った、「ダニエルよ、わたしは今あなたに、知恵と悟りを与えるためにきました。 — ダニエル書9章21節と22節(口語訳)
ガブリエルは「終わりの日」に関するその幻の意味についてダニエルに説明する。ガブリエルはキュロス王の出現と、ユダヤ人の解放、エルサレム神殿の再建について語る。
3世紀のラビ、シメオン・ベン・ラキシュは、ミカエルという名前や天使の思想はユダヤ人が新バビロニア王国に捕囚されていた時代にバビロニアの宗教の影響によって彼らの信仰する神が取り込まれたものだという説を唱えた。この説は現代の学者たちに広く受け入れられている。ガブリエルはカルデアを起源とする存在だったと考えられている[8]。また、シュメール人の神だったという説もある[9]。
ユダヤの伝承『タルムード』では、太祖ヨセフに道を示したのも、モーセの遺体を運んだのもガブリエルであるとされている。『タルムード』に収録されている物語『アガーダ』に記された伝説では、地上であと一日しか生きられないと告げられたモーゼが十三巻の文書を一気に書き上げる。その際、神は太陽の動きを遅め、日が沈むまでに書き終えられるようにした。その時にガブリエルが現われ、その文書を天界の裁判所へ持って行った。そしてガブリエルは死の床にあるモーゼを訪れ慰める。ガブリエルは寝台を用意し、ミカエルが紫色の布をかけた。
- ^ http://www.catholic.org/saints/saint.php?saint_id=279
- ^ *矢代幸雄『受胎告知』新潮社(1973)
- ^ *ローラ・ウォード/ウィル・スティーズ(著)小林純子(訳)『天使の姿―絵画・彫刻で知る天使の物語』新紀元社(2005年)
- ^ The Dogmatic Tradition of the Orthodox Church; Greek Orthodox Archdiocese of America
- ^ GABRIEL - JewishEncyclopedia.com
- ^ ダニエル書(口語訳)#8:16
- ^ ダニエル書(口語訳)#9:21
- ^ グスタフ・デイヴィッドスン 『天使辞典』 創元社
- ^ 天使の世界~古代の神々からユダヤ・キリスト教の天使へ~ 京都産業大学文化学部国際文化学科
- ^ ルカによる福音書(口語訳)#1:19
- ^ ルカによる福音書(口語訳)#1:26
- ^ アラビア語ラテン翻字: Jibrīl
- ^ *ジョン・ミルトン(著)平井正穂(訳)『失楽園』筑摩書房(1979)
- ^ 真野隆也 『悠久なる魔術』 新紀元社
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