イノベーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/06 00:03 UTC 版)
種類
イノベーションの種類を定義するいくつかのフレームワークが提案されている[11][12]。
持続的・破壊的イノベーション
クレイトン・クリステンセンが提案した枠組みでは、持続的イノベーション (Sustaining innovation) と破壊的イノベーション (Disruptive innovation) の区別を行う[13]。持続的イノベーションは、現在の顧客の既知のニーズ(例えば、より高速なマイクロプロセッサ、フラットスクリーンテレビ)に基づく製品またはサービスの改善である。一方、破壊的イノベーションとは、新しい製品やサービスが新しい市場(例えばトランジスタラジオ、無料のクラウドソーシング百科事典など)を生み出し、最終的に確立された競合他社を置き換えるプロセスを指す[14][15]。クリステンセンによれば、ビジネスの長期的な成功には破壊的イノベーションが不可欠である[16]。
破壊的イノベーションは、多くの場合、破壊的なテクノロジーによって実現される。マルコ・イアンシティとカリム・R・ラカニは、基盤的技術は、長期的にグローバルなテクノロジーシステムの新しい基盤を作り出す可能性を秘めるものと定義している。基盤的技術は、長年にわたってまったく新しいビジネスモデルが出現するにつれて、ビジネスオペレーションモデルを変革する傾向があり、イノベーションが徐々に着実に採用され、技術や制度の変化の波が起こっていく[17]。パケット交換通信プロトコルTCP/IPは、もともと米国国防総省の電子通信(電子メール)の単一のユースケースをサポートするために1972年に導入され、ワールドワイドウェブの出現で1990年代半ばになって広く採用された基礎技術である[17]。
4種類モデル
イノベーションマネジメントコースで共通して学習するもう一つのフレームワークは、ヘンダーソンとクラークによって提案されているものである。彼らはイノベーションを4つの種類に分けている[18][19]。
- 革新的イノベーション (Radical innovation) - 「新しいドミナントデザインを確立し、そしてそれゆえに新しいアーキテクチャ内で結び付けられたさまざまなコンポーネントに体現された、一連の新しい中核的設計概念を確立する。」
- 漸進的イノベーション (Incremental innovation) - 「確立された設計を改良したり拡張したりするものである。そこでは、個々のコンポーネントは改良されても、その根底にある中核的設計概念やコンポーネント間の連携方法は変わらない。」
- アーキテクチャ・イノベーション (Architectural innovation) - 「既存のコンポーネントを新しい方法で結び付けるための、既存システムの再構成。」
- モジュール・イノベーション (Modular Innovation) - 「技術の中核的設計概念だけを変化させるイノベーション。」
ヘンダーソンとクラーク、クリステンセンが技術革新について語る一方で、サービスイノベーションや組織イノベーションなど、他の種類のイノベーションもある。
平和工学イノベーション
2023年までの過去15年間で、世界の平和レベルは約5%低下しており[20]、イノベーションは従来、破壊的なものと考えられてきた。破壊的イノベーションは文字どおり物理的に破壊するものではないが、平和工学的イノベーションは2020年頃から急速に台頭してくる。質の高い証拠とされる統計的文献分析(メタアナリシス)によれば、紛争解決などでも役割を果たす平和工学イノベーションは、従来のイノベーションの定義や原則を根本から変える可能性を秘めている[21]。
- ^ “A Foundation for Innovation” (英語). www.brainfacts.org. 2023年5月13日閲覧。
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- ^ Edison, H., Ali, N.B., & Torkar, R. (2014). Towards innovation measurement in the software industry. Journal of Systems and Software 86(5), 1390–407.
- ^ ヨーゼフ・シュンペーター 著、塩野谷祐一・東畑精一・中山伊知郎 訳『経済発展の理論』岩波書店。[1]
- ^ 板倉宏昭『経営学講義』勁草書房、2010年、223頁。ISBN 978-4-326-50334-6。
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- ^ “GII 2020 Report”. Global Innovation Index. 2020年10月19日閲覧。
- ^ "Innovation Indicator 2018,PDF 2,7 MB" Published by the BDI and ZEW, reviewed 10. September 2019
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