Mig Flash
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/08/19 02:52 UTC 版)
Mig Flash(ミグ・フラッシュ、MIG Flashとも表記、旧称Mig Switch)は、Nintendo Switch向けのサードパーティー製フラッシュカートリッジである[1]。microSDカードに保存したNintendo Switch用ゲームカードのデータを、本体自体を改造することなくゲームカードスロットから読み込ませることができる。関連製品のMig Flash Dumperは、実物のNintendo Switch用ゲームカードからゲームデータを読み出すための機器である[2]。
製品側は自己所有するゲームのバックアップなどへの利用を掲げている一方、同じ仕組みにより、第三者によって複製・配布されたゲームデータを読み込ませることも可能である[3]。任天堂はMig SwitchおよびMig Flashを、同社ゲーム機の技術的保護を回避する機器(circumvention device)として位置付けている[4]。日本では2025年、任天堂の申立てに基づき「MIG Switch、MIG Flash 等」が不正競争防止法上の技術的制限手段に関する輸入差止申立情報に掲載された[5]。
沿革
Mig Flashは当初Mig Switchの名称で発表された。2023年12月に製品が発表され、翌2024年1月には、Nintendo Switch本体を改造することなくゲームデータを読み込ませるフラッシュカートリッジとして報じられた。当時、製品の運営主体は明らかになっていなかった[6]。
製品はゲームカード型のMig Switchと、実物のゲームカードからデータを読み出すMig Dumperの組み合わせとして展開された。2024年5月、任天堂はMig SwitchおよびMig Dumperを販売するウェブページについて、米国のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)の技術的保護手段回避に関する規定に基づく通知をGoogleに送付した。『TorrentFreak』によれば、同月時点で約75のドメイン上にある関連ページが検索結果からの除外対象とされた[7]。
その後、製品名はMig Flashへ変更された。2025年6月の報道では、旧名称を併記して「Mig Flash(Mig Switch)」などと紹介されている[1]。同年にNintendo Switch 2が発売されると、同機でMig Flashを使用した事例も報告されるようになった[1][3]。
製品と仕組み
Mig Flash
Mig FlashはNintendo Switchのゲームカードに近い形状を持つ、microSDカード対応のカートリッジである。ゲームカードから読み出したデータ、または他者によって複製されたゲームデータをmicroSDカードに保存して利用する[3]。
1枚のmicroSDカードに複数のゲームタイトルを保存することができる[8]。製品側は、自己所有するゲームカードから作成したバックアップを利用することを想定した製品であるとしており、オンラインでの利用については、実物のゲームカードから取得した証明書、UID、Card Set IDなどを含むデータを使用するよう案内していることが報じられている[3]。
一方、米国通商代表部(USTR)は、Mig Flashについて、他の利用者が読み出して配布したゲームファイルを読み込んでプレイできる機器であり、ゲーム機本体のハードウェアまたはソフトウェアを改造することなく海賊版の利用を容易にすると説明している[2]。
Mig Flash Dumper
Mig Flash Dumperは、Nintendo Switch用の実物のゲームカードからゲームデータを読み出すための関連機器である[2]。
USTRは同機器について、ゲームファイルを抽出(dump)・複製する機能を持つと説明している。Mig Flash Dumperによって読み出されたゲームデータは、microSDカードを介してMig Flashで利用することができる[2][3]。
対応機種
Mig Switchは当初、Nintendo Switch本体へのソフトウェアの導入や本体の改造を必要とせず、通常モデルやNintendo Switch Liteを含むNintendo Switch系列の機種について、ファームウェアのバージョンを問わず利用できる製品として販売されていた[9]。
2025年発売のNintendo Switch 2についても、Mig Flashを使用してNintendo Switch用ゲームのデータを起動した利用者の事例が報じられている[1][3]。一方、Switch 2ではMig Flashを使用した本体が任天堂のオンラインサービスへの接続を制限された事例も複数報告されている[1][3]。
Nintendo Switch 2での利用
2025年6月、Nintendo Switch 2でMig Flashを使用した複数の利用者が、任天堂のオンラインサービスを利用できなくなったと報告した。『AUTOMATON』は、Nintendo Switch向けソフトの複製データをSwitch 2上で起動しようとした複数の利用者について、いわゆる「ハードウェアBAN」を受けたとの報告があったと伝えた[1]。
『The Verge』によると、報告された事例ではエラーコード「2134-4508」が表示され、ニンテンドーeショップなどのオンラインサービスへの接続が制限された。報告例の一つでは、Nintendo Accountそのものではなく、Mig Flashを使用したSwitch 2本体に対する制限とみられていた[3]。
ファームウェア更新
Mig Flash側ではSwitch 2への対応をめぐりファームウェアの更新が続けられた。2025年7月1日の更新について、開発側はMig Flashが実物のゲームカードから「事実上検出できない」状態になったと主張した。これは開発側による説明であり、任天堂によって確認されたものではない[8]。
同月9日にはバージョン1.2.2が公開され、バグ報奨金制度を通じて報告された問題への修正が行われた。開発側は更新後も、Mig FlashをSwitch 2で利用した場合にオンラインサービスの利用制限を受けないことを保証しておらず、利用者自身の責任で使用するよう説明していた[8]。
中古ゲームカードへの影響
ゲームカードから固有のデータを複製できる仕組みについては、中古ゲームカードの購入者への影響も報じられた。『Tom's Hardware』は2025年7月、以前の所有者がMig Flashなどを利用してゲームをバックアップした後に元のゲームカードを売却したことが原因とみられる利用停止事例を報じた[8]。
同誌は、eBayで正規に購入した中古のNintendo Switch用ゲームカードを使用した利用者が利用停止措置を受けた事例も紹介している。購入者がNintendo of Americaに対して、自身が事情を知らずに中古品を購入したことを示した後、措置が解除された例も報じられた[8]。
任天堂および当局の対応
任天堂による位置付け
任天堂は知的財産権保護に関する公式ページで、ゲーム機に施されたセキュリティ対策を回避し、無許諾のゲームファイルの実行を可能にする機器を「circumvention devices」と説明している。その具体例として「MIG Switch/MIG Flash」を明示的に挙げている[4]。
米国での訴訟
2024年6月28日、Nintendo of Americaは、オンライン店舗「Modded Hardware」を運営していたRyan Michael Dalyをワシントン州西部地区連邦地方裁判所に提訴した[10]。
任天堂は、DalyがMig SwitchなどのMIG機器のほか、MODチップ、改造済みNintendo Switch本体、ゲーム機の改造サービスなどを提供していたと主張した。また、一部の改造済み本体には無許諾で複製されたゲームが導入されていたとし、MIG機器やMODチップの販売などがDMCAの技術的保護手段回避に関する規定に違反すると主張した[11]。
2025年9月、DalyとNintendo of Americaは200万ドルの支払いを含む最終判決の内容について合意した。合意された恒久的差止命令では、DalyがMig Switch、Mig Dumper、MODチップ、改造済みゲーム機などの回避装置を所有・販売・作成・流通させることなどが禁じられた。また、Modded Hardwareのドメイン名を任天堂へ移転し、保有する回避装置を廃棄することも盛り込まれた[12]。同月26日、裁判所が最終判決に署名した[12]。
この訴訟の対象はMig Switchだけではなく、MODチップ、改造済みゲーム機、ゲーム機の改造サービスなども含まれていた[11]。
日本の税関
日本の財務省関税局・税関は、任天堂株式会社による輸入差止申立てについて、「MIG Switch、MIG Flash 等」を侵害物品の品名として公表している。権利の内容は「ニンテンドースイッチ及びニンテンドースイッチ向けゲームカードに係る技術的制限手段」とされ、不正競争防止法第2条第1項第17号の技術的制限手段に関する規定に基づいている[5]。
申立ての有効期間は2025年8月20日から2029年8月19日までで、差止申立者は任天堂株式会社である[5]。
米国通商代表部による掲載
2026年3月3日、米国通商代表部(USTR)は『2025 Review of Notorious Markets for Counterfeiting and Piracy』を公表した[13]。同報告書では、Migflash.comが「MIG FLASH」の名称でオンライン市場の一覧に掲載された[2]。
USTRはMigflash.comについて、Nintendo SwitchおよびNintendo Switch 2向けのサードパーティー製機器を扱う公式ウェブサイトと説明している。同報告書では、MIG Flash Dumperはゲームファイルを抽出・複製する機器、MIG Flash Cardは読み出されて他の利用者によって配布されたゲームファイルを読み込んでプレイするための機器とされている[2]。
またUSTRは、これらの機器がゲーム機自体のハードウェアまたはソフトウェアを改造する必要なく使用できることから、海賊版利用への障壁を低くしていると説明している[2]。
一方、USTRはNotorious Markets Listについて、掲載された市場における個別の法令違反を認定するものではなく、掲載市場と関係する国・地域全体の知的財産権保護・執行状況について米国政府の法的判断を示すものでもないとしている[2]。
関連項目
脚注
- 1 2 3 4 5 6 Fujiwara, Hideaki (2025年6月17日). “Nintendo Switch 2では“Switch用不正コピーソフト”対策さらに強化か。ハードウェアBAN報告が相次ぐ”. AUTOMATON. 2026年8月18日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 “2025 Review of Notorious Markets for Counterfeiting and Piracy” (PDF) (英語). Office of the United States Trade Representative. p. 33 (2026年3月3日). 2026年8月18日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 Faulkner, Cameron (2025年6月17日). “Nintendo will take your Switch 2 offline forever if you use a Mig flash cartridge” (英語). The Verge. 2026年8月18日閲覧。
- 1 2 “Circumvention Products” (英語). Nintendo of Europe. 2026年8月18日閲覧。
- 1 2 3 “MIG Switch、MIG Flash 等”. 知的財産の輸入差止申立情報. 財務省関税局・税関. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ Alderson, Alex (2024年1月5日). “Nintendo Switch: MIG Switch flashcart with alleged ties to Gary Bowser could simplify playing homebrew and pirated ROMs” (英語). Notebookcheck. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ Maxwell, Andy (2024年5月2日). “Nintendo DMCA Notice Wipes Out 8,535 Yuzu Repos, Mig Switch Also Targeted” (英語). TorrentFreak. 2026年8月18日閲覧。
- 1 2 3 4 5 Morales, Jowi (2025年7月16日). “Switch 2 account ban saga continues as Redditor taunts Nintendo after ripping 20 cartridges and playing online — others warn that it's just a matter of time” (英語). Tom's Hardware. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “MIG Switch” (英語). migswitch.com. 2024年1月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年8月18日閲覧。
- ↑ “Nintendo of America Inc v. Daly, No. 2:2024cv00958” (英語). Justia Dockets & Filings. 2026年8月18日閲覧。
- 1 2 Van der Sar, Ernesto (2024年7月1日). “Nintendo Sues 'Modded Hardware' and r/SwitchPirates Moderator 'Archbox'” (英語). TorrentFreak. 2026年8月18日閲覧。
- 1 2 Van der Sar, Ernesto (2025年9月8日). “'Modded Hardware' Agrees to Settle Nintendo's Copyright Lawsuit for $2 Million” (英語). TorrentFreak. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “USTR Releases 2025 Review of Notorious Markets for Counterfeiting and Piracy” (英語). Office of the United States Trade Representative (2026年3月3日). 2026年8月18日閲覧。
外部リンク
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