体上有限生成環の理論
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/30 06:32 UTC 版)
体上有限生成環 (たいじょうゆうげんせいせいかん; finitely generated ring over a field)とは、ある(可環な)体 k 上有限個の元で生成される可換環の事を言う。k 上の多項式環 k[x1 , ... , xn] の剰余環として得られる環といっても同じである。体上有限生成環は、可換環論的見地からはネーター環の重要な例でありヴォルフガング・クルルらによるネーター環のイデアル論のひな形であった。また体上有限生成環の理論は代数幾何学におけるアフィン代数多様体の理論、すなわち、代数多様体の局所理論と本質的に等価である点からも重要である。本項では、ネーターの正規化補題 (Noether normalization lemma)、有限生成整域の次元論、ヒルベルトの零点定理 (Hilbert's Nullstellensatz) について説明する。
ネーターの正規化補題
可換環 R を部分環として含む(可換)環 A の元 a1 , ... , am が R 上代数的独立であるとは、変数 xi に ai を代入する操作で得られる準同型 R[x1 , ... , xm] → A が単射であることを言う。
定理
A を体 k 上有限生成な環とするとき、k 上代数的独立な A の元 a1 , ... , am が存在して、A はその部分環 k[a1 , ... , am] 上整である。更に、I が A の高さが 1 のイデアルであれば、a1 ∈ I かつ I ∩ k[a1 , ... , am] = (a1) とできる。
証明の概略
A を k[x1 , ... , xn] の剰余環として表し、A における xi の像を yiとする。k[x1 , ... , xn] → A が単射であれば定理の主張は自明。したがって準同型の核 I が0でないと仮定し、n が減少する帰納法で証明する。zi (i=2, 3, ... , n) を、自然数 ri を使って
本項記述は下記参考文献中、特に永田の第4章を参考にした。
- 永田雅宜 可換環論 紀伊國屋数学叢書1 紀伊國屋書店 (1974) ISBN 4314001178
- 松村英之 可換環論 共立出版 (1980) ISBN 4320016580
- Mumford, D., The Red Book of Varieties and Schemes, LMN 1358, Springer-Verlag (1988), Second Expanded version (1999) ISBN 354063293X
- Reid, M., Undergraduate Algebraic Geometry, London Mathematical Society Student Texts 12, Cambridge University Press (1988) ISBN 0521356628
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