Avibase
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/06/19 06:37 UTC 版)
| The World Bird Database | |
|---|---|
| 世界の全鳥類のオンライン分類学データベース | |
| 基本情報 | |
| 種別 | 鳥類分類学データベース(web site) |
| 作成者 | デニス・ルパージュ(Denis Lepage) |
| 運営組織 | Birds Canada(旧 Bird Studies Canada) |
| URL | avibase.bsc-eoc.org |
| 開設 | 2003年6月24日 |
| データ収集開始 | 1991年 |
| 対応言語 | 271言語以上 |
| 現況 | 稼働中 |
Avibase(アビベース)は、世界のすべての鳥類を対象としたオンライン分類学データベースである。カナダの非営利鳥類保全団体 Birds Canada [1]に所属するデニス・ルパージュ(Denis Lepage)が設計・構築・維持管理を行っており、同団体によってホスティングされている。データ収集は1991年から、公開は2003年6月24日[2]。
Avibseの核心は「分類学的概念(taxonomic concept)」に基づくデータベース設計にある。学名ではなく、各分類学的出版物が定義した独自の生物学的概念を基本単位として整理することで、分類の改訂や名称変更が生じても情報を一貫して追跡・照合できる仕組みを実現している[3]。2026年6月現在、累計アクセス件数は4億9,000万回を超えており、鳥類学者・バードウォッチャー・保全研究者の参照資料として世界的に広く利用されている[4]。
概要
Avibseは世界約10,000種・22,000亜種の鳥類について、分布情報・分類情報・多言語における異名(シノニム)などを収録する。収録レコード総数は5,496万件以上にのぼり、学名88,042件、地域別チェックリスト81,988件、分布記録3,406万件を含む[5]。共通名・異名は271言語以上の言語・地域変種で提供されており、そのうち85%以上の種で共通名が整備されている言語は21言語に達する。
主要な分類学的権威として、クレメンツ・チェックリスト(Clements Checklist)、BirdLife Internationalが刊行する HBW/BirdLife 分類チェックリスト、IOC World Bird Names、Howard and Moore Complete Checklist of the Birds of the World が採用されており、1886年以降のすべての版のアメリカ鳥学会(AOU/AOS)北米チェックリストを含む230以上の分類学的情報源が Avibase の概念体系に照合・マッピングされている[6]。
開発経緯
Avibseの起源はデニス・ルパージュの個人データベースツールであった。デニスは自分のバードウォッチング観察記録を整理するツールとして構築を始めが、その規模が膨らんで世界レベルのデータベースへと発展した[7]。以下に主要な沿革を示す。
1991年ごろ、世界の鳥名および地域別リストの収集を目的としてデータベースの構築を開始した。1993年には、フランス語圏鳥類国際命名委員会(Commission internationale des noms français des oiseaux)が同年に刊行したリストを雛形として、Avibase 分類学的概念体系の基盤が整えられた。
- 2003年6月24日、外部向けウェブサイトを正式に公開した。
- 2007年には Flickr のサムネイル画像がサイト各所に組み込まれ、図鑑形式の挿絵付きチェックリスト機能が実現した。
- 2008年には Xeno-Canto へのリンクが追加され、鳥の鳴き声をサイト内で試聴できるようになった。
- 2012年には、写真提供コミュニティとの連携強化を目的として専用の Avibase Flickr グループが設立された。
- 2013年8月には、ユーザーが無料でアカウントを作成し、自分のライフリストを管理・分析できる「MyAvibase」機能がリリースされた。
- 2014年には、データベースの設計理念・手法を詳述した査読付き論文が学術誌 ZooKeys に掲載された[8]。
内容
分類学的概念(Avibase ID)
Avibseの特徴は、学名ではなく「分類学的概念」を情報管理のキーとする点にある。キーには「Avibase ID」と呼ばれる固有の英数字識別子が割り当てられており、これにより分類改訂・改名が生じても同一概念を継続して追跡できる。現在、Avibase には約60,526件の固有分類学的概念(キー)が登録されており、275に及ぶ分類バージョンがこの体系にマッピングされている[9]。
この設計思想は、2014年に発表された Lepage・Vaidya・Guralnick による論文で体系的に解説されており、「分類学的名称が変化しても生物学的概念そのものは固有の実体として追跡可能にするアプローチ」として生物多様性情報学の分野で高く評価されている[10]。
地域別チェックリスト
Avibseは世界20,000以上の地域別チェックリストを提供する。チェックリストは、国・地域別の公式記録委員会が公表するリストを一次情報源として整備されており、Cornell Lab of Ornithology が公開する eBird EBD データセットも定期的に参照・取り込まれている。また、Facebook の Global Rare Bird Alert、American Bird Association ブログ、HBW などのオンラインフォーラムも補助的な情報源として活用されている[11]。
各チェックリストは複数の分類学的権威に基づいて切り替え表示でき、PDFとして印刷出力することも可能である。鳥の写真(Flickr 提供)・鳴き声(Xeno-Canto 提供)も各チェックリストページに統合されており、フィールドでの識別補助として利用できる。
MyAvibase
2013年に導入された MyAvibase は、ユーザーが無料アカウントを作成してライフリストを管理し、観察記録を蓄積・分析できるツール群である。eBird からデータをインポートする機能を備えており、観察済み種・未観察種の地域別統計や、次回バードウォッチング旅行の計画支援レポートを生成できる。
多言語対応
Avibseの鳥名データベースは271言語以上の言語・地域変種に対応しており、各種・亜種ページには対応するすべての言語の俗称・異名が表示される。これにより、異なる言語圏の研究者・愛好家が同一種を異なる言語で参照する際の照合作業が大幅に簡略化される[12]。
運営
Avibseは Birds Canadaによってホスティングされている。Birds Canada は1960年にロングポイント鳥類観測所として発足し、1998年に Bird Studies Canada、2019年に現在の名称 Birds Canada へと改称されたカナダの非営利鳥類保全団体であり、BirdLife International のカナダ・パートナー組織でもある[13]。
開発者のデニス・ルパージュは現在、Birds Canada においてデータサイエンス・技術部門のシニアディレクター(Senior Director, Data Science and Technology)としてAvibaseのフォローをしている[14]。
影響
Avibseは鳥類学・保全生物学・生物多様性情報学の多くの学術研究で引用・参照されており、オックスフォード大学図書館やシーライフベース(SeaLifeBase)プロジェクトなど、世界各地の学術機関が推薦するオンラインリソースとして認定されている[15][16]。研究データリポジトリ登録機構の re3data.org にも登録されており、研究インフラとしての信頼性が公式に認証されている[17]。
世界の主要チェックリストを一本化する国際プロジェクト「AviList(アビリスト)」では、デニス・ルパージュは Avibase 代表として参加しており、統合分類体系の構築に中核的な役割を担っている[18]。
関連項目
脚注
- ↑ 旧称 Bird Studies Canada
- ↑ “About Avibase – The World Bird Database”. Birds Canada. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ Lepage, Denis; Vaidya, Gaurav; Guralnick, Robert (2014). “Avibase – a database system for managing and organizing taxonomic concepts”. ZooKeys 420: 117–135. doi:10.3897/zookeys.420.7089. PMID 25061375.
- ↑ “Bird Checklists of the World – Avibase”. Birds Canada. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “About Avibase – Data available in Avibase”. Birds Canada. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “About Avibase – The World Bird Database”. Birds Canada. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “Avibase, The World Bird Database”. Biodiversity Heritage Library Blog (2014年8月1日). 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “About Avibase – Brief history”. Birds Canada. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “About Avibase – Data available in Avibase”. Birds Canada. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ Lepage, Denis; Vaidya, Gaurav; Guralnick, Robert (2014). “Avibase – a database system for managing and organizing taxonomic concepts”. ZooKeys 420: 117–135. doi:10.3897/zookeys.420.7089. PMID 25061375.
- ↑ “About Avibase – Data available in Avibase”. Birds Canada. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “About Avibase – The World Bird Database”. Birds Canada. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “Birds Canada – Home”. Birds Canada. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “About Avibase – The World Bird Database”. Birds Canada. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “Web Resources – Ornithology”. Bodleian Libraries, University of Oxford. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “Collaborator of the Week: Denis Lepage”. SeaLifeBase Project Blog (2015年4月24日). 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “Avibase – re3data.org”. re3data.org. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “Working Group Avian Checklists”. International Ornithologists' Union. 2026年6月9日閲覧。
外部リンク
- Avibaseのページへのリンク