AviList
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/05/28 05:12 UTC 版)
| 世界鳥類統合チェックリスト | |
|---|---|
| 鳥類の世界統一分類目録 | |
| 基本情報 | |
| 設立 | 2025年6月11日(初版公開) |
| 目的 | 世界の鳥類に関するコンセンサス分類を作成・維持 |
| 支援機関 | 国際鳥類学者連合(IOU) BirdLife International コーネル大学鳥類学研究所 |
| 収録種数(v2025) | 11,131種・19,879亜種・252科・46目・2,376属 |
| ウェブサイト | www.avilist.org |
AviList(アビリスト, 英語:AviList)は、世界の鳥類に関する統一的なグローバル分類目録(チェックリスト)である。鳥類学の主要な国際機関が協力して作成した、世界で初めての統合的な鳥類分類体系であり、2025年6月11日に初版(v2025)が公式に公開された[1]。
国際鳥類学者連合(IOU)、BirdLife International、コーネル大学鳥類学研究所(Cornell Lab of Ornithology)の支援のもとで開発され、分類上の不一致を解消することで、保全・研究・立法・教育分野における情報共有の効率化を目指している[2]。
概要
AviListは、世界の鳥類分類について単一のコンセンサス(合意に基づく)分類体系を提供することを目的として作成された、包括的かつ継続的に更新される公開データベースである[3]。初版のv2025では、鳥類 11,131種を収録しており、既存のチェックリスト間に存在した1,000件以上の種レベルの分類上の不一致を解決している[4]。
チェックリストは誰でも無償でダウンロードでき、鳥類学者、バードウォッチャー、生物学者、自然保護活動家、行政担当者、立法者など、鳥類分類に関わるあらゆる利用者の使用が推奨されている[5]。AviListは「生きた文書(living document)」として位置づけられており、最新の科学的知見に基づいて継続的に更新され、年1回の改訂が予定されている[6]。
背景・開発経緯
分類上の不一致という問題
生物の普遍的に認められた学名は、正確かつ効率的なコミュニケーションに不可欠である。分類上の扱いに不一致があると、同一の名称が異なる対象に使われたり、同一の対象が異なる名称で呼ばれたりする状況が生じ、保全・科学・取引・立法・法執行・教育に悪影響を及ぼす[7]。
AviList誕生以前、鳥類分類の世界では広く使われている複数の独立したグローバルチェックリストが並立していた。主なものとしては三つがあった[8]。
- 「IOC世界鳥類リスト」
- 国際鳥類学者連合(IOU)
- 「eBird/クレメンツ・チェックリスト」
- コーネル大学鳥類学研究所
- 「BirdLifeリスト」
- BirdLife International
これらのリストはそれぞれ独自の基準で分類改訂を行っていたため、利用者にとって混乱の原因となっていた。たとえば、タカ目の鳥類については、これら四つのリスト(ハワード&ムーアリストを含む)のうち一致していたのは約70パーセントにすぎなかったと報告されている[9]。
統合に向けた取り組みの開始
AviListの発端は、2016年にFrank Gill(IOC世界鳥類リスト)、David Donsker(同)、Tom Schulenberg(eBird/クレメンツ)、Marshall Iliff(同)、Denis Lepage(Avibase)、Nigel Collar(BirdLife International)、Paul Donald(同)、Les Christidis、Frank E. Rheindt らの間で始まった初期の議論にさかのぼる[10]。
2017年には、カモ科(Anatidae)の不一致箇所のみを対象とするパイロットプロジェクトが実施された。翌2018年8月にカナダ・バンクーバーで開催された国際鳥類学者連合大会では、公開円卓会議が催され、IOC世界鳥類リスト、eBird/クレメンツ、BirdLife International、北米鳥類委員会(AOS-NACC)、南アメリカ鳥類委員会(SACC)などの主要関係者が参加して、統合リスト作成に向けた委員会(当初は「鳥類命名法作業部会(WGAC)」と称した)の設立に全会一致で合意した[11]。なお、ハワード&ムーアチームはこの共同作業への参加を見送った。
作業の進展
正式な合意が成立したのは2020年で、同年2月に分類委員会(TaxCom)が最初のマイルストーンとしてカモ科の審査を開始した。各マイルストーンでは、三つのグローバルリストと二つの地域リスト(合計5つのパートナーリスト)の間の種・属・科レベルの不一致が検討され、多数決による公開投票で決定が下された[12]。2024年7月に最後の42番目のマイルストーンが完了し、その後チェックリストの最終化に向けた作業が進められた。
参照書誌・命名委員会(Bibliographic and Nomenclatural Committee)は、記載者名、原記載文献その他の書誌情報の表記を標準化する作業を並行して進めた。命名上の不一致事案は、国際鳥類学者連合鳥類命名法作業部会(WGAN)のメンバーを中心とする命名法諮問グループに付託され、批次ごとに審議・投票が行われた。IOU傘下の作業部会から独立した組織へと移行する過程で、プロジェクトは「AviList」という名称を得た[13]。
主な内容・特徴
チェックリストの構成
AviList v2025が収録する統計は以下のとおりである。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 種(species) | 11,131 |
| 亜種(subspecies) | 19,879 |
| 属(genus) | 2,376 |
| 科(family) | 252 |
| 目(order) | 46 |
チェックリストは、分類上の決定の根拠を説明する要約文を各分類群に付しており、論争のある分類群については採用した処理の理由も記載している。また、追加研究が必要な種グループを明示することで、分類学者が優先課題を設定する際の指針となっている[14]。
分類基準:統合的種概念の採用
AviListは、種の境界を定めるにあたって「統合的種概念(integrative species concept)」を採用している[15]。この概念のもとでは、形態、鳴き声、分子系統、分布域など複数の証拠を総合して種の認識が判断される。
ガバナンス体制
AviListは、以下の委員会によって運営される。
- 分類委員会(TaxCom)
- 種・属・科レベルの分類上の不一致を審議し、多数決で決定する
- 参照書誌・命名委員会
- 著者名・文献・書誌情報の表記を標準化する
- 命名法諮問グループ
- 命名上の問題案件を審議する
- 執行委員会(Executive Committee)
- 運営規程(Terms of Reference)の管理と組織の持続可能性を担う[16]
- パートナー機関 [17]。
影響・評価
既存チェックリストへの影響
AviListの公開に伴い、IOC世界鳥類リストとeBird/クレメンツ・チェックリストはそれぞれ独立した分類更新を終了した[18]。
eBird/クレメンツ分類体系は、eBird、Merlin Bird ID、All About Birds、Birds of the Worldといったコーネル大学鳥類学研究所のプラットフォームの基盤であり、2026年の更新でほぼ完全にAviListと一致する予定である[19]。
BirdLife Internationalは今後数年をかけてAviListに完全移行する予定であり、これが完了すれば、BirdLife DataZone、IUCNレッドリスト、eBird、Birds of the Worldなどが直接互換性を持つようになると期待されている[20]。
また、AviListの採用によって、GBIF(地球規模生物多様性情報機構)などのグローバルな生物多様性・分子・生態・空間データベース間の相互運用性が向上することも期待されている[21]。
保全・法制度への意義
AviListの統一的な分類体系は、CITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)やラムサール条約など、鳥類に関わる国際条約・協定の実施において重要な意味を持つ。異なる機関が異なる名称を使用している場合、生物多様性保全に関するリソース配分の不整合や、何が保護対象とすべきかについての混乱が生じるからである[22]。
バードウォッチャーへの影響
バードウォッチャーにとっては、これまで三つの異なる分類体系でライフリスト(観察した鳥種の記録)の集計が分かれていたものが、AviListによって統一的な参照基準のもとで記録を比較・共有できるようになる[23]。
他の生物群への波及
AviListの成功は、鳥類以外の生物群での同様の取り組みに向けた青写真になると期待されている。シンガポール国立大学生物科学科のFrank Rheindt准教授は「AviListは初めての試みであり、他の生物群の研究者たちが後に続くためのモデルとなれば」と述べている[24]。
主要論文
- Rheindt, F.E.; Donald, P.F.; Donsker, D.B.; Gerbracht, J.A.; Iliff, M.J.; Lepage, D.; Norman, J.A.; Rasmussen, P.C. et al. (2025). “AviList: a unified global bird checklist”. Biodiversity and Conservation 34 (10): 3359–3376. doi:10.1007/s10531-025-03120-y.
関連項目
脚注
- ↑ “AviList: The Global Avian Checklist”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ Rheindt, F.E.; Donald, P.F.; Donsker, D.B. (2025). “AviList: a unified global bird checklist”. Biodiversity and Conservation 34 (10): 3359–3376. doi:10.1007/s10531-025-03120-y.
- ↑ “AviList: The Global Avian Checklist”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ Rheindt, F.E.; Donald, P.F.; Donsker, D.B. (2025). “AviList: a unified global bird checklist”. Biodiversity and Conservation 34 (10): 3359–3376. doi:10.1007/s10531-025-03120-y.
- ↑ “AviList: The Global Avian Checklist”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “AviList: The Global Avian Checklist”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ Rheindt, F.E.; Donald, P.F.; Donsker, D.B. (2025). “AviList: a unified global bird checklist”. Biodiversity and Conservation 34 (10): 3359–3376. doi:10.1007/s10531-025-03120-y.
- ↑ “About AviList”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “AviList: A new bird order”. Australian Geographic (2026年2月24日). 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “About AviList”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “About AviList”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “About AviList”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “About AviList”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “AviList: The Global Avian Checklist”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “AviList: World's First Unified Bird Species Checklist Launched for Global Conservation”. Insights on India (2025年6月13日). 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “About AviList”. AviList. 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “AviList unites the world's bird species”. BirdLife International (2025年6月11日). 2026年5月22日閲覧。
- ↑ Rheindt, F.E.; Donald, P.F.; Donsker, D.B. (2025). “AviList: a unified global bird checklist”. Biodiversity and Conservation 34 (10): 3359–3376. doi:10.1007/s10531-025-03120-y.
- ↑ “AviList: A Unified Global Checklist of the World's Birds is Now Available”. eBird / Cornell Lab of Ornithology (2025年6月11日). 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “AviList unites the world's bird species”. BirdLife International (2025年6月11日). 2026年5月22日閲覧。
- ↑ Rheindt, F.E.; Donald, P.F.; Donsker, D.B. (2025). “AviList: a unified global bird checklist”. Biodiversity and Conservation 34 (10): 3359–3376. doi:10.1007/s10531-025-03120-y.
- ↑ “AviList: A Unified Global Checklist of the World's Birds is Now Available”. Birds of the World / Cornell Lab of Ornithology (2025年6月11日). 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “AviList: A new bird order”. Australian Geographic (2026年2月24日). 2026年5月22日閲覧。
- ↑ “AviList: The world's first harmonised classification of birds”. NUS Faculty of Science (2025年9月1日). 2026年5月22日閲覧。
外部リンク
- AviListのページへのリンク