2021年北朝鮮国内反体制組織摘発事件とは? わかりやすく解説

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2021年北朝鮮国内反体制組織摘発事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/07 23:07 UTC 版)

2021年北朝鮮国内反体制組織摘発事件(2021ねんきたちょうせんこくないはんたいせいそしきてきはつじけん)とは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)国内で朝鮮労働党の支配に反対し自由民主主義を掲げる反体制組織の存在が発覚し、北朝鮮政府により摘発された事件である。この事件は2021年6月以降に当局が制作し、2022年にかけて幹部及び住民向けの政治教育に使用された映像、「社会主義制度を蝕む危険な毒素」を通じて発覚した[1][2]

概要

首謀者とされる人物は大学を卒業後「ある郡」の中学校で教員として勤務していたが、「韓国の放送や『不純録画物』(韓流)」を視聴したことによって北朝鮮の体制に不満を抱き、10人以上の同志を募って反体制組織を結成し、北朝鮮の体制転覆を狙って活動していたという[1][3]。映像の中では反体制組織が「我々の制度に反対する騒乱」・「革命の首脳部まで害しようとする反革命的陰謀」を企図していたと主張されている[1]

映像では結成された反体制組織の綱領及び組織原則の一部が紹介されており、綱領では自由民主主義体制の確立と政党の樹立、樹立される政党が知識人農民の利害を代表する党であることなどが述べられ、組織原則では「自由を渇望する者は誰でも入党できる」とし、民主集中制を否定する内容が述べられていた[1]

北朝鮮には朝鮮労働党の他、朝鮮社会民主党天道教青友党という政党が存在するが、どちらも朝鮮労働党の領導を受ける「友党」である(ヘゲモニー政党制[4]。しかしこの事件で摘発された反体制組織は、朝鮮労働党の「友党」ではなく自由民主主義体制を指向する独立した政党の樹立を目指して活動しており、そのような政党を結成しようとする試み自体が北朝鮮の歴史上非常に珍しい動きとされる[2]

摘発

映像では反体制組織とその構成員が「群集の通報により発覚し逮捕され」、「人民の峻厳な審判を受けることになった」と述べられていることから[1]密告により組織の存在が北朝鮮政府に発覚し、摘発された構成員は処刑ないし政治犯収容所への収監などの厳しい処分を受けたと推測されている[3]

反応

2023年11月17日に韓国の「SAND研究所」が「社会主義制度を蝕む危険な毒素」を入手して公表したことをきっかけに、北朝鮮国外にこの事件が知られることとなった[3]

SAND研究所のチェ・ギョンヒ代表は、先述の映像が外部文化の流入や流布を問題視する意図で制作されており、外部文化の流入・拡散により反体制組織が結成された事実から、外部文化の流入が北朝鮮の体制を動揺させる可能性があると述べた。また映像については一部に誇張がある可能性が否定できないものの、概ね北朝鮮社会の現状を反映しているものとも述べた[1]

世宗研究所のチョン・ソンジャン韓半島戦略センター長は、韓国文化に触れた北朝鮮の青年層の思想に変化が生じており、北朝鮮の指導部が不安を感じていると述べた[2]

統一研究院朝鮮語版のチョ・ハンボム先任研究委員は、このような反体制組織の存在自体が金正恩政権の末期症状であると述べた[4]

龍谷大学李相哲教授は、北朝鮮政府が事件を住民向けに公表したことについて、かつてのような情報統制が難しくなったのでむしろ公開し、住民向けの政治教育で扱うことにより警鐘を鳴らしていると述べた[5]

大韓民国統一部のク・ビョンサム報道官は、先述の映像について緩んだ社会統制のタガを締めなおす目的で制作されたと分析し、北朝鮮政府が反動思想文化排撃法・平壌文化語保護法を制定するなど相次いで統制強化を図っていることから、社会統制のタガを締めなおす必要性が現実にあるのではないかと述べた[1]

脚注

出典

関連項目

  • 新朝鮮 - 2024年4月に存在が発覚した北朝鮮の反体制組織。北朝鮮国外に拠点を有するが国内にも組織を有し活動していると主張。
  • 自由青年同志会 - 2004年11月に咸鏡北道会寧市で活動したとされる反体制組織。



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