蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/16 07:24 UTC 版)
『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』(かまたこうしんきょくかんけつへんぎんちゃんがゆく)は、つかこうへいの戯曲、またそれをもとにした舞台作品。
概要
第86回直木賞を受賞した『蒲田行進曲』(1982年)の続編として、1987年に『銀ちゃんが、ゆく 蒲田行進曲完結篇』の表題で刊行された小説が先行し、その後、1994年に蒲田行進曲 完結編『銀ちゃんが逝く』として舞台化された。ただし、小説と戯曲では、骨子(小夏の女優復帰、娘ルリ子の病、銀四郎が階段落ちで死亡)が共通するのみで、登場人物やエピソード、諸々の設定が全く異なる。
舞台は、福岡で初演し、1997年には新国立劇場小劇場の柿落とし公演として上演された [1]。
あらすじ
東映京都撮影所が5年に一度製作する大作映画『新撰組』の撮影現場。初主演となるスター俳優・倉岡銀四郎は、出世のために、大部屋俳優のヤスに、自分の子を身ごもった恋人・小夏を押しつける。ヤスは、心酔する銀四郎に見せ場を作ってやるため、また小夏の出産費用を稼ぐため、危険な池田屋「階段落ち」に挑む。
それから5年の月日が流れ、ヤスが命をかけて得た小夏の娘・ルリ子は5歳となったが、不治の病を患っていた。銀四郎は、自らの血の遺伝が原因でルリ子が発症し、幼くして死を迎えようとしていることに苦悩する。スターの座を勝ち取るために這い上がってきたものの、差別の対象となった村出身で、香典泥棒を生業として育った自分の出自を忌み、苦しみから逃れられずにいた。一方、小夏は、ヤスを心から愛することができず、かつてのスター女優の地位へ返り咲こうとしていた。
新たな映画『新撰組・函館五稜郭の決闘』の撮影が始まる。落ち目になりつつある主演・土方歳三役の銀四郎の脇を固めるのは、近藤勇役の若山馬之助、坂本龍馬役の歌舞伎俳優・中村屋喜三郎、そして女・沖田総司役の小夏である。
馬之助は、一夜を共にした女に押しつけられた他人の子どもと暮らしていた。サルのような奇矯な言動を見せるその子を、愛情と苦悩の狭間で育てている。中村屋は、自身の不妊に悩み、歌舞伎の家の後継を得るために愛する妻を行きずりの男に差し出すが、そのことに耐えられず家を出る。小夏は、女親らしい厳しさでルリ子に接する。娘の病を悲しみながらも、観客の喝采を浴びる快感を忘れられない役者の性に駆られ、貪欲にカメラの前に立つ。
やがて、銀四郎らの願いもむなしく、ルリ子は病に倒れる。銀四郎は、自らの命と引き換えに娘が救われることを信じ、一世一代の「函館五稜郭の石階段落ち」に挑んで命を落とす。
主な登場人物
- 倉丘銀四郎:銀幕のスター、映画俳優。愛称は、銀ちゃん、銀の字。
- 村瀬小夏:人気映画女優。銀四郎との子どもルリ子を産むが、ヤスと結婚している。
- 村岡安次:大部屋俳優・ヤス。銀四郎をスキャンダルから守るため小夏とルリ子を引き受けている。
- 若山馬之介:大物映画俳優。
- 中村屋善三郎:名門の歌舞伎役者。
- 監督:テレビ業界から入ってきた新進の映画監督。
- 祖父:銀四郎の父、ルリ子の祖父。貧しい旅回りの一座の座長。
- のぶ太:馬之介に育てられている子ども。
- ルリ子:小夏の娘。実父は銀四郎、養父はヤス。
- 医者:ルリ子の主治医。
書誌情報
小説
- 【発表誌】野性時代 第14巻第4号(1987年4月号、角川書店)
- 【初出】銀ちゃんが、ゆく 蒲田行進曲完結篇 (1987年刊行、角川書店) ISBN 978-4048724661
- 【文庫】銀ちゃんが、ゆく 蒲田行進曲完結篇 (1988年刊行、角川書店・角川文庫) ISBN 978-4041422281
- 【新書】銀ちゃんが、ゆく 蒲田行進曲完結篇 つかこうへい劇場3(1996年刊行、角川書店) ISBN 978-4048729932
戯曲
- 【小説と戯曲の併録】つかこうへい傑作選(一)(1994年刊行、メディアファクトリー)
ISBN 978-4889913279
- 収録内容:銀ちゃんが、ゆく 蒲田行進曲完結篇、戯曲銀ちゃんが、逝く 蒲田行進曲完結篇
- 【戯曲と写真集】蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く 斎藤一男第6写真集(1995年刊行、メディアファクトリー) ISBN 978-4889913620
- 【小説と戯曲の併録】蒲田行進曲 完結篇 小説 銀ちゃんが、ゆく 戯曲 銀ちゃんが、逝く(2010年刊行、トレンドシェア) ISBN 978-4905090052
舞台作品
つかこうへい演出公演
- 1994年11月3日 - 30日、福岡 イムズホール、初演[2]
- 1995年7月1日 – 30日、1996年4月29日 – 5月30日、両国シアターⅩ、特別公演
- 1997年11月13日 - 12月7日、新国立劇場小劇場 柿落とし公演[3]
- 2000年8月11日 - 20日、東京新宿 紀伊國屋ホール、内田有紀シリーズVOL.1
- 出演:小夏/内田有紀、銀四郎/吉田智則、ヤス/吉浦陽二、中村屋/小川岳男、ルリ子/梶原ひかり ほか
追悼公演
- 2020年7月10日 - 12日、23日・26日、東京新宿 紀伊國屋ホール、つかこうへい没後10年追悼イベント[4]
- 2022年7月8日 – 18日、東京新宿 紀伊國屋ホール、十三回忌追悼公演・再演プロジェクト つかこうへい Lonely 13 Blues[5]
春錦匠の会演出公演
- 2023年11月1日 - 12日、池袋シアターグリーン BIG TREE THEATER[6][7]
- 2024年7月3日 - 12日、浅草 花劇場
- 2025年10月12日、台湾高雄 衛武営国家文化芸術センタ―、台湾公演『蒲田進行曲完結篇~銀之死』[8]
脚注
注釈
出典
- ^ “つかこうへい没後10 年追悼イベント 朗読 蒲田行進曲完結編『銀ちゃんが逝く』ライブ配信が決定”. スパイス. 株式会社イープラス (2020年7月3日). 2025年11月9日閲覧。
- ^ つかこうへい『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く 斎藤一男第6写真集』メディアファクトリー、1995年。 ISBN 978-4-8899-1362-0。
- ^ “銀ちゃんが逝く”. 新国立劇場旧公式サイト. 新国立劇場. 2025年11月9日閲覧。
- ^ “朗読「蒲田行進曲完結編『銀ちゃんが逝く』」開幕 主演の味方良介が言葉を詰まらせる一幕も”. スパイス. 株式会社イープラス (2020年7月11日). 2025年11月9日閲覧。
- ^ “味方良介、石田明、北野日奈子らがつかこうへいの傑作を全身全霊で演じる 『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』会見&ゲネプロレポート”. スパイス. 株式会社イープラス (2022年7月9日). 2025年11月9日閲覧。
- ^ “錦織一清、演出・出演による舞台『蒲田行進曲完結編・銀ちゃんが逝く』の上演が決定 つかこうへい舞台のレジェンド俳優たちも出演”. スパイス. 株式会社イープラス (2023年9月8日). 2025年11月9日閲覧。
- ^ “”つかレジェンド”が集結!いぶし銀キャストによるつか芝居『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』舞台あいさつ”. 東京FUNコンシェルジュ. FRIDAY NIGHT Company (2023年11月1日). 2025年11月9日閲覧。
- ^ “蒲田進行曲完結篇~銀之死”. OPENTIX. OPENTIX. 2025年10月1日閲覧。
- 蒲田行進曲完結編_銀ちゃんが逝くのページへのリンク