標準の光とは? わかりやすく解説

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ひょうじゅん‐の‐ひかり〔ヘウジユン‐〕【標準の光】

読み方:ひょうじゅんのひかり

標準イルミナント


標準の光

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/27 10:06 UTC 版)

標準の光A、B、Cの分光強度分布

標準イルミナント ひょうじゅんイルミナント: standard illuminant)は国際照明委員会が相対分光分布を定めた照明の総称である[1][2] CIE標準イルミナント CIEひょうじゅんイルミナント: CIE standard illuminant[1] 標準の光 ひょうじゅんのひかり[3][1]イルミナント[注 1]測色用の光: illuminant[注 2][4][5]とも。

概要

標準イルミナントは国際照明委員会(CIE)が標準化した照明光の総称であり、その相対分光分布で規定されている[1][2]1931年に制定され、いくつかの追加がおこなわれ、一部が廃止により整理され、現在にいたる(⇒ #歴史)。現行の標準は標準イルミナントA標準イルミナントD65・標準イルミナントD50である[1][2]

標準イルミナントA

標準の光Aは、人工光源の代表として選ばれた、白熱電球の光である。色温度は2856K。これは、黒体が2856Kのときに放つ、黒体放射の光である。長波長の成分を多く含むため、赤みの強い光である[6]

標準の光Aは、白熱電球を規定の電圧で点灯することで実現でき、これを標準光源Aと呼ぶ[7]

標準イルミナントD65

標準の光Cに代わるものであり、昼光に対する再検討が行われ、標準の光Cよりも紫外波長の成分を多く含む[6]。色温度は6504K。D65標準光源は実現していない[8]

標準以外のCIEイルミナント

標準イルミナントではないが CIE が相対分光分布を定めているイルミナントが複数存在する。

標準の光B

標準の光BとCは、簡単に実現できる太陽直射光のシミュレーションである。標準の光Bは正午の太陽光の代表として機能し、相関色温度 (CCT) は 4874 K。

現在、標準の光Bは廃止されている。

標準の光Bは、標準光源Aである白熱電球の光に、液体フィルターを使用することで実現でき、これを標準光源Bと呼ぶ。

標準の光C

標準の光Cは、自然光を代表する昼光として、太陽直射光を除く北空の光を模したもの。青空の光や、北窓からの光に当たる[6]。相関色温度は6774K。

現在、基本的にその役目は標準の光D65に取って代わられている。ただし、光源CはCIE標準の光ではなくなったものの、多くの測定機器と計算でまだ使用されている。少なくとも2004年のCIEの発行「Publication 15:2004」には、標準の光Cの相対的な分光強度分布、三刺激値、色度座標が記載されている。

標準の光Cは、標準光源Aである白熱電球の光に、液体フィルターを使用することで実現でき、これを標準光源Cと呼ぶ[7]

なお、標準光源BとCに使用される溶液フィルターはレイモンド・デイビスとカッソン・S・ギブソンによって設計されたもので、デイビスギブソンフィルター(: Davis-Gibson Filter)と呼ばれる。 そもそも標準の光BとCは、デイビスとギブソンのフィルターの設計に基づいて定められたものである。デイビスとギブソンは1910年代にチャールズ・アボットがワシントンで行った太陽光と昼光の分光強度分布の測定値をもとに、これらを近似的に表現する白熱電球と溶液フィルターの組み合わせを作成した。白熱電球は紫外線放射が少ないため、実際の太陽光、昼光に比べて紫外線部分の放射量が少ないことは予想された[5]

イルミナントE

標準の光Eは黒体軌跡の下にあり、およそD55の相関色温度にある。

イルミナントE イルミナントいー: illuminant E)は相対分光分布が波長によらず定数1を取るイルミナントである[9] CIEイルミナントE CIEイルミナントいー: CIE illuminant E)とも[9]

イルミナントEは等エネルギースペクトルをもつ放射である[9]。これは相対分光分布 が波長 に依らず常に 1 になる、つまり が常に成立することを意味する[注 3][9]。簡単にいえば、イルミナントEは全ての単色光が同じ強度で混ざった光である。

測色の実務では 380~780 nm の範囲で が成立すればイルミナントEとして扱われる[10]。多くの xy 色度座標上では x=0.3333, y=0.3333 を取る。CIEイルミナントEはCIE標準イルミナントではないが、CIEの技術文章内で紹介され、「CIEイルミナントE」という呼称が正式に認められている[9]

イルミナントEは黒体ではないため、黒体軌跡上にはない。色温度ではなく相関色温度が5455 Kとなる。これはDシリーズ光源で近似できる(標準の光の中でD55 が最も近い)。

歴史

1931年、国際照明委員会は測色用の光、つまり色を観測し評価するための光源として標準の光A、B、Cを定めた。Aは当時一般的だった人工光源である白熱電球、Bは直射日光、Cは直射光を除いた昼光を表す代表的な光として定められた。これはイギリスのケンブリッジで開催されたCIE第8回会議で採択され、有名なCIE RGB表色系およびXYZ表色系の採択と同時であった。

その後一般的には標準の光Cが測色に利用された。1950年代になり、実際の自然光には近似していない標準の光BとCを見直す機運が高まった。

1964年、D55、D65、D75が定められた。

標準の光D(1967)は昼光を表し、標準の光Eは等エネルギー光源であり、標準の光F(2004)はさまざまな組成の蛍光灯を表す。

標準の光BとCは廃止された(⇒ #廃止された標準イルミナント)。

関連する別の概念

標準光源(ひょうじゅんこうげん、: standard sources)は標準イルミナントと関連した別の概念である。標準光源は標準イルミナントで定められた分光強度分布を実現する人工光源である[11][7]

脚注

出典

  1. ^ a b c d e (CIE) 標準イルミナント,(CIE) 標準の光 ISO/CIE 10526によって相対分光分布が規定されたイルミナントA,及びD65。... CIE standard illuminant(日本規格協会 2022, p. 13)
  2. ^ a b c 標準イルミナント(CIE standard illuminant) JIS Z 8781-2によって相対分光分布が規定された標準イルミナントA及び標準イルミナントD65(日本規格協会 2012a, p. 2)
  3. ^ 2000年以降、JISでは厳密性と他の規格との整合性から「標準の光」にかわって「標準イルミナント」という用語が優先的に使用されるようになっているが、一方で「標準の光」の使用を中止してはいない[要出典]
  4. ^ 大田登『色彩工学 第2版』東京電機大学出版局、2001年、92-97頁。ISBN 4501618906 
  5. ^ a b 納谷嘉信『産業色彩学』朝倉書店、1980年、10-14頁。 ISBN 9784254210118 
  6. ^ a b c 千々岩英彰『色彩学概説』東京大学出版会、2001年、52-53頁。 ISBN 9784130820851 
  7. ^ a b c 山中俊夫『色彩学の基礎』文化書房博文社、1997年、62-65頁。 ISBN 9784830107801 
  8. ^ 標準イルミナントD65を実現する人工光源は,未だ確定されていない(日本規格協会 2022, p. 13)
  9. ^ a b c d e For an illuminant that is defined by the equal-energy spectrum, i.e. a spectrum where the relative spectral power distribution S(λ) = 1 for all λ, CIE endorses the term "CIE illuminant E."(CIE 2018, p. 15)
  10. ^ For many practical colorimetric calculations, it is sufficient to have a constant spectral power distribution between 380 nm and 780 nm.(CIE 2018, p. 15)
  11. ^ (CIE) 標準光源 仕様がCIEによって規定され,その相対分光分布が標準イルミナントに近似する人工光源。... CIE standard sources(日本規格協会 2022, p. 13)

注釈

  1. ^ 写真用語などでは測色用の光と呼ぶとおかしいため。
  2. ^ illuminant は illumine(照明する)に名刺語尾 ant(するもの)が付いた語であるため。
  3. ^ 相対パワースペクトル密度(relative spectral power distribution)に関しても同様

参考文献

関連項目


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