拡張不等式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/11 15:39 UTC 版)
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一般の不等号では「複素数において 大・小関係が論じられない」のであるが[1]、拡張不等式(かくちょうふとうしき、extended inequality)は、不等式の概念をより一般の代数に適用できるように拡張したものである。
ここでは、Rを単位元1を持つ環、Pをそのポジティブ集合とする。
定義
拡張不等式を定義するためには、ポジティブ集合が必要である。
ポジティブ集合
集合Pがポジティブ集合であるとは、下記の条件をみたすRの部分集合の事を言う。
- α,β∈P⇒α+β∈P
- 0∉P
- α∈P⇒-α∉P
- 1∈P
拡張不等号と拡張不等式
ポジティブ集合Pと拡張不等号で拡張不等式が定義される。
拡張不等号は向きを属性に持つ不等号の事である。
向きは、Rの元を使って表す。
2つのRの元α、βの関係を拡張不等号を使って示した式が拡張不等式である。
"<[θ]"、">[θ]"、"[θ]<"、"[θ]>"の定義
Rの元θが逆元を持つとき、 "<[θ]"、">[θ]"、"[θ]<"、"[θ]>"をθ向きとする拡張不等号と呼ぶ。
α <[θ] β ⇔ β-α ∈ Pθ
α >[θ] β ⇔ α-β ∈ Pθ
α [θ]< β ⇔ β-α ∈ θP
α [θ]> β ⇔ α-β ∈ θP
Rが可換環の場合は、 "<[θ]"と"[θ]<"が同じ意味になるため、 "[θ]<"の記号は使わない。
"≦[θ]"、"≧[θ]"、"[θ]≦"、"[θ]≧"の定義
θの逆元の存在を仮定しない場合には"<"、">"の代わりに"≦"、"≧"の記号を使用する。
すなわち
α ≦[θ] β ⇔ β-α ∈ Pθ
α ≧[θ] β ⇔ α-β∈ Pθ
α [θ]≦ β ⇔ β-α∈ θP
α [θ]≧ β ⇔ α-β ∈ θP
適用しているポジティブ集合を明確に示すために、拡張不等式の右側、もしくは拡張不等号にポジティブ集合を表記する。
(例1) α ≦[θ] β (P)
(例2) α ≦[θ,P] β
ポジティブ集合の例
- 出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。
- 瀬尾祐貴「行列の大小関係を考えよう」『数学教育研究』第43巻、大阪教育大学数学教室、2014年8月、93-104頁、CRID 1050582186291826432、ISSN 0288-416X。
- Roger A. Horn, Matrix Analysis(Second Edition),1994, Cambridge University Press
- Hardy, G., Littlewood J. E., Pólya, G. (1999). Cambridge Mathematical Library, Cambridge University Press. ISBN 0-521-05206-8
- G. H. ハーディ, J. E. リトルウッド, G. ポーヤ, 不等式 (シュプリンガー数学クラシックス) ISBN 978-4621063514,2012,丸善出版
- 大関 清太, 不等式 (数学のかんどころ 9),2012, 共立出版
- 佐々木賢之介『正値行列のノルム不等式と幾何平均』Tohoku University〈情報科学修士〉、2009年。hdl:10097/34644 。「修士論文あるいは修士論文要旨 (Summary of Thesis(MR))」
- 藤井淳一「Huaの作用素不等式について (作用素の不等式とその周辺)」『数理解析研究所講究録』第1144巻、京都大学数理解析研究所、2000年4月、25-30頁、CRID 1050001202297678976、hdl:2433/63921、ISSN 1880-2818。
- 富永雅「BUZANOの不等式とその拡張について (作用素論に基づく量子情報理論の幾何学的構造に関する研究と関連する話題)」『数理解析研究所講究録』第2033巻、京都大学数理解析研究所、2017年6月、1-8頁、CRID 1050001338209336064、hdl:2433/236765、ISSN 1880-2818。
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