寄生空所
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 01:52 UTC 版)
寄生空所(きせいくうしょ、parasitic gap)とは、生成文法において、あるひとつの「空所(英: gap)」がもう一つの「空所」に依存して出現する構造のことである。すなわち、そのひとつの空所はただその他の空所の出現のおかげで出現することができ、それゆえに前者が後者に「寄生」していると言われるもののことである。例) Which explanation did you reject __₁ without first really considering __₂?(訳者註:’あなたは最初にどの説明を考えることなくそれを拒否するのですか?’の「どの説明」にあたる項が少なくとも表面上すべてなくなっている)英語やそれと系統関係のあるいくつかのゲルマン諸語(例:スウェーデン語。 エングダール[英語版] 1983を参照)に見られるが、他の系統関係の近い諸言語ではこの出現は更に強く制約されている(例:ドイツ語やロマンス諸語)。 [1] 言語学者の新沼史和は,寄生空所と等位接続がしばしば混同されることからこの判別を試みている。[2]寄生空所の特に謎に包まれている点は、これが取り出しに対してwh移動における取り出しの島(英語版)(英: island to extraction)の内側に出現することである。寄生空所の研究は1970年代後半に始まったにも拘らず、最良の分析の合意にはいまだ至っていない。 [3]
- ^ 寄生空所は英語とスウェーデン語の資料を使って最もよく研究されてきた。先驅的論文であるEngdahl (1983) をこの点に関しては参照せよ。
- ^ Fumikazu, Niinuma (2010). “Across-the-Board and Parasitic Gap Constructions in Romanian”. Linguistic Inquiry 41 (1): 161–7. doi:10.1162/ling.2010.41.1.161.
- ^ Culicover と Postal の2001年の論文集の導入部英: introductionを寄生空所の多様な理論的説明の概観にかんしては参照せよ。
- ^ この点に関しては発展性のある論文である Ross (1967/86) を参照。
- ^ この点に関しては特に Engdahl の1983年の論文を参照。他のどの論文よりもこの論文は問題を切り出している。
- ^ この論集に加えて、Culicover と Postal による本もこの現象の早い段階での説明の広範囲に渡った概観を扱っている。
- ^ 寄生空所の理論での弱交差の重要性に関しては、例えば Engdahl (1983:17ff.)・Culicover (2001:32f)・Levine & Hukari (2001:194) 等を参照。
- ^ 寄生空所を認可するための不在目的語構造は広くその事実が認められている。例:Engdahl (1983:12f.), Postal (2001:257), Culicover (2001:34).
- ^ 寄生空所の分布を決定する統語的並列法の役割に関しては多くの研究者によって探求されている。例:Williams (1990), Munn (2001), Culicover (2013:153ff.).
- ^ 寄生空所の取り出し分析の例に関しては Contreras (1984) と Chomsky (1986) を参照。
- ^ 代用形分析の例に関しては Cinque 1990、Fiengo May 1994 及び Postal 1994 を参照。
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