力による平和

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力による平和

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2025/11/08 08:26 UTC 版)

力による平和（りきによるへいわ、英: Peace through Strength）は、国家が強力な軍事力や防衛体制を保持し、抑止力によって戦争を防ぎ、平和を維持しようとする外交・安全保障の理念である。 この考え方は特に冷戦期のアメリカ合衆国で重視され、ロナルド・レーガン政権の安全保障政策の柱となった。

起源

「力による平和」という概念の起源は古代ローマ時代にさかのぼる。 歴史的には、帝政ローマの時代に「力をもって平和を守る」という思想が存在し、後に西洋政治思想や軍事戦略の基礎概念の一つとなった。 アメリカでは、1950年代から1960年代にかけて冷戦下での国防論の中で頻繁に用いられるようになった。

冷戦期

「力による平和」は、1980年代のロナルド・レーガン政権下で明確な政策スローガンとなった。 レーガンは就任演説や国防政策において、「力を通じてこそ真の平和が得られる」と述べ、軍事費の大幅増額、核抑止力の強化、防衛産業の拡充を進めた。 レーガン政権の軍拡政策は、ソビエト連邦との軍事的均衡を再構築し、結果として冷戦終結を早めたとする評価がある一方で、軍拡競争を激化させたとの批判も存在する。

理念

「力による平和」の核心は、次の三点に要約される。

• 抑止：強力な軍事力を維持することで潜在的な敵国の攻撃意図を抑止する。
• 安定：同盟国間の軍事的結束を強化し、地域の安全保障バランスを安定化させる。
• 信頼：外交交渉や国際的威信の裏付けとしての「力」を持つことが、平和的交渉を成立させる基盤となる。

この考え方は、現代における抑止理論（Deterrence Theory）にも通じる。

批判

一方で、「力による平和」は軍備拡張を正当化する理念として利用されやすいとの批判もある。 軍事的抑止に依存することで外交的解決や国際協調を軽視し、結果的に緊張や軍拡競争を助長する可能性が指摘されている。 また、「力」が相互不信を増大させ、長期的な平和の基盤を損なうという見方もある。

現代の用法

21世紀に入っても、「力による平和」はアメリカおよび同盟諸国の安全保障政策でしばしば用いられている。 例えば、北大西洋条約機構（NATO）は抑止と防衛のバランスを「平和のための力」として明示しており、中国やロシアとの戦略的競争にもこの概念が再び引用されている。 また、日本や欧州諸国でも、自由主義的国際秩序の維持における抑止力の必要性を論じる文脈で同様の概念が用いられている

関連項目

• 抑止力
• 冷戦
• ロナルド・レーガン
• 外交

外部リンク

• Ronald Reagan Presidential Library – “Peace Through Strength”
• Heritage Foundation – “Peace Through Strength”
• Brookings Institution – “Achieving Peace Through Strength in the 2020s”
• NATO – “Deterrence and Defence: Peace Through Strength”