五重称号
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五重称号(ごじゅうしょうごう、英: Five-fold titulary, Royal titulary, Great five names)とは古代エジプトのファラオに与えられた5つの称号[注釈 1]。ホルス名[1][2]、ネブティ名[1][3][4]、黄金のホルス名[1][2][3]、即位名[5][2]、誕生名[5][2]の5つで構成されている[注釈 2]。
ファラオの称号は、名前が本来持つ、個人を特定するためだけのものではなく、ファラオの神聖な力を上下エジプトに広め、治世の在り方を広く布告するための手段でもあった。そのため、この称号の一部は神殿に彫り込まれたり、公文書や碑文・墓などに使用されたりした。五重称号の元となるそれぞれの5つの称号はすでに古王国前期には出現していたが、完全な形で用いられるようになるのは中王国時代である[6]。この称号はエジプトの歴史を通して王の名前を表現するのに使われ、エジプトがローマの属州となってからも使用された。誕生名以外の4つの名前は戴冠式の時に布告され、誕生名は誕生した日に母親から与えられた。
概要
古代エジプトでも現代そして他の文明などと同じように、人に名前(エジプト語でレン[3])を与えることは重要な意味を持つことであった。子供の名前は通常出生時に母親によって与えられ、宗教的な意味や家族からの配慮を反映していることもあった[7]。それゆえ、現人神であったファラオに人々と神とをつなぐ役割を果たすための神聖な名前をつけることは、政治的および宗教的象徴をも含んでいる[7]。古王国時代から、即位式の際に王はそれぞれ5種類の異なる聖なる称号、すなわち五重称号を得るようになった。これらはひとまとめにしてその王の神秘的な治世の構成要素となった。称号は所有者を神聖さを持ち合わせる国へ導くことを目的としているため、強い政治的・宗教的象徴性を持ち合わせている。古代エジプトの歴史を通して、五重称号には力、能力、豊穣さ、生命力やマアトなどの特定の概念が含まれていることが多い。エジプトの思想では、名前は名前の所有者に命をあたえるものであるため、名前を破壊することはその人物を霊的に消滅させることにつながる[8][9][7]。
ホルス名

Hor 翻字:hr 翻訳:The falcon ヒエログリフで表示 | |||||||||||||||||||||||||||
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ホルス名の象徴的な意味ホルス名の意義はまだ議論が続いているが、セレクの上(または横)に描かれた神を象徴していることは明らかである。ほとんどの場合、描かれた神はホルスであった。ハヤブサ(または鷹)が翼を大きく広げ空高く舞い上がり、エジプト全土を俯瞰することを表すホルス名は、遍在性と広大な力を表していると言われている。さらに、エジプト初期王朝時代の王のホルス名は、デン王の"殺戮者"(Slaughterer)のように、非常に攻撃的であり、これはホルス神の加護によって、ファラオが敵に打ち負かされないようにという願いを明確に表している。第二王朝では、王のホルス名は平和を求める性質を持ち始め、秩序と調和に満ちた揺るぎない世界を支配したいというファラオの願いを表現するようになった。いくつかのケースでは、特に第2王朝で少なくとも2つのホルス名がそれまでの伝統と矛盾しているようである。 最も顕著な例は、セト・ペルイブセン王であり、セレクの上のハヤブサがセト神を象徴する動物(セト・アニマル)に置き換えられている(いわゆるセト名[4][2])。これによって、王は王権の守護神をホルスからセトに変更したのである[2]。
これより後の王のカセケムイはハヤブサとセト・アニマルをともにセレクの上に置いた。 ![]() このような王がホルスとセトを対等に扱うような、特徴的なセト信仰の現れは第2王朝にしか見られない。このようにした理由として神話のホルスとセトの争いの伝説の元となった権力抗争があったのではないかという考察がなされている。 ネブティ名
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