ダブルショー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/06 02:45 UTC 版)

ダブルショー(Double Chooz) は、フランスのショーで行われている短基線ニュートリノ振動実験である。電子ニュートリノから他のニュートリノへの変化に関与しているニュートリノ振動パラメータであるθ13混合角を測定又はその値に制限を与えることを目的としている。この実験ではショー原子力発電所の原子炉をニュートリノ源として、ニュートリノフラックスを測定している。原子炉から400メートル及び1,050メートルの2か所に検出器を有し、そのうちの1つの検出器は前身であるショー実験の検出器と同一の場所に設置されている。2015年1月までは、後置検出器 (far detector)でのみデータが取られていた。前置検出器 (near detector)は建設が遅れて2014年9月に完成し[1]、2015年初頭からデータを収集している。
検出器の概要
ダブルショーは2つの同一のガドリニウムを添加した液体シンチレータ検出器を用いている[2]。検出器は反ニュートリノの消失を測定するために、2つの熱出力4.25 GWの原子炉の近くに設置されている。2つの検出器は原子炉から400メートルのものが「前置」、原子炉から1,050メートルのものが「後置」と呼び分けられる。後置検出器は宇宙線ミュー粒子に対して300メートル水当量の遮蔽能力がある丘の中に設置されている。検出器自体は4つの同心円状円柱容器からなるカロリメトリック液体シンチレータである[3][4]。
ニュートリノ標的とγキャッチャー
最も内側は直径230 cm、高さ245.8 cm、厚さ0.8 cmのアクリル樹脂製容器である。この容器はガドリニウム(Gd)を1 グラム/リットル付加した10,000リットルの液体シンチレータで満たされており、これがニュートリノ標的となる。その次の外層はγキャッチャーである。これはニュートリノ標的を取り囲む厚さ55 cmのGdが付加されていない液体シンチレータ層である。γキャッチャーのケースは厚さ12 cmでニュートリノ標的の容器と同じ素材でできている。どちらの容器も波長400 nm以上の光子が透過するように、この素材が選ばれた[3][4]。
バッファー容器とPMT
バッファー容器は、幅552.2 cm、高さ568.0 cm、厚さ0.3 cmのステンレス鋼304L製である。アクリルの二重容器で占められていない残りの内部空間はシンチレータではない鉱油で満たされている。バッファー容器の内面には390個の10インチ光電子増倍管(PMT)がある。バッファー層の目的はPMTと周囲の岩盤の放射能に対する遮蔽である。ニュートリノ標的とγキャッチャーにこれらを加えたものをまとめて「内部検出器」(inner detector)と呼ぶ [3][4]。
内部と外部のベトー
内部ベトーはバッファー容器を厚さ50 cmのシンチレータである鉱油で取り囲んだものである。さらに、78個の8インチPMTが上部、下部、側部に配置されている。この内部ベトー層はミュー粒子と速中性子に対するアクティブベトーとして機能する。周囲の厚さ15 cmのスチールケースが外部のγ線に対するさらなる遮蔽として機能する。外部ベトーは検出器タンクの上部を覆っている。これは5 cm x 1 cmの直交するストリップからなる[3][4]。
データ収集
内部検出器と内部ベトーからの信号は、サンプリングレート500 MHzの8ビットフラッシュADC装置によって記録される。検出器のトリガー閾値は、予測される反電子ニュートリノの1.02 MeVよりもはるかに低い350 keVに設定されている[3][4]。
数年の間、ダブルショーは後置検出器のみが稼働しており、予測されるフラックスを計算するためにビュジェ4号機のようなモデルを用いてきた。完成した前置検出器によって今後データ収集の精度が向上する予定である。
実験技術
ニュートリノ混合
ニュートリノは電気的に中性で、 弱い相互作用しかしない非常に軽い粒子である。つまり、気付かれることなく長い距離を移動することができる。ニュートリノの特性のひとつは伝搬するにつれ、ある確率でニュートリノ振動によりフレーバー(
ダブルショー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/07 10:24 UTC 版)
ショー原子力発電所において原子炉ニュートリノを検出する実験。ニュートリノ振動のパラメーターの一つである混合角
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