エタニウムとは? わかりやすく解説

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エタンカチオン

分子式C2H7
その他の名称Ethanecation、Ethanium
体系名:エタンカチオン、エタニウム


エタニウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/15 01:05 UTC 版)

エタニウム (C2H+
7
)

エタニウム英語: Ethanium)は、化学式C2H+
7
で表される極めて反応性が高いカチオンである。プロトン化エタンとも呼ばれる。エタンC2H6プロトンを加えたイオンとみなすことができ、+1 の電荷を持つ。

エタニウムはメタニウムCH+
5
に続く単純なカルボカチオンの一つである。1960年にS.Wexler、N.Jesseらによって希薄な気体として初めて検出された[1]。容易にエテニウムC2H+
5
水素分子H2に解離する。

合成

エタニウムは、希薄なメタンエタン中の放電により生成されるイオンの中から、赤外分光法により初めて検出された[1]

また、低圧条件下(約2 mmHg)において微量のエタンを含むメタンに電子を照射することでも得られる[2]。照射する電子は、メタニウムとメテニウムイオンを生成し、メタニウムは容易にエタンへプロトンを移動させる。

CH+
5
+ C2H6CH4 + C2H+
7

後者の反応は、やや低圧のエタンへCH+
5
N2OH+または HCO+イオンを加えた際にも起きる[3]

安定性と反応

1 mmHg・30 ℃において、エタニウムは非常に緩やかにエテニウムと水素へ解離する。(活性化エネルギーは約10 kcal/mol)92 ℃においては、分解速度が著しく速くなる[2][3]。この分解は、ほぼ非熱的であると主張されているが、エントロピーの増加による8 kcal/molの自由エネルギーを伴う[4]

構造

不飽和な類縁体であるエテニウムとエチニウムC2H+
3
や、他の非古典的イオンと同様に、エタニウムイオンは(少なくとも瞬間的に)2つの炭素原子に同時に結合したプロトンを持ち、電荷がそれらに均等に分散していると考えられていた。これに代わる古典的構造は、2つの原子のうち1つに結合した余分な水素原子と電荷を持つ。すなわち、メチル化されたメタニウムイオンとみなすことができる。

初期の計算では、2つの形態のエネルギーは分解した状態(C2H+
5
+ H2)よりも4~12 kcal/mol低く、わずかな正の活性化エネルギーにより分離されると考えられていた[1]。1989年のYehらによる気相赤外分光法は、どちらの形態も安定であることを示した[1]。架橋構造は最も低いエネルギーを持ち、古典的な構造よりも4~8 kcal/mol低い[1]

1993年のObata、Hiraoらによる精密な計算によれば、最も安定な形態は3つの直行する対称面(C2v)を持ち、2つのCH3構造は重なり形配座にあると予測されている。(基底状態がねじれ形配座にあるエタンとは異なる。)4つの底部のH原子は、架橋しているH原子と他の2つの頂部のH原子と反対の面に存在する。近似距離は、C-C結合が0.211 nm、C-H結合は0.124 nm(架橋)、0.107 nm(底部)、0.108 nm(頂部)と計算され、架橋構造のC-H-Cの結合角は約116°、H-C-Hの結合角は約116°(底部-底部)、114°(底部-頂部)と計算されている。しかし、近似的に最小エネルギーを持つ他の構造も存在し、2つのCH3構造がわずかにねじれた(Cs対称性を持つ)構造や、C2H+
5
イオンの炭素原子の一つが0.250 nm離れたH2分子にゆるく結合した構造などが含まれる[5]

脚注

  1. ^ a b c d e L. I. Yeh, J. M. Price, and Y. T. Lee (1989), "Infrared spectroscopy of the pentacoordinated carbonium ion C2H+
    7
    ". Journal of the American Chemical Society, volume 111, pages 5591-5604. doi:10.1021/ja00197a015
  2. ^ a b Margaret French and Paul Kebarle (1975), "Pyrolysis of C2H+
    7
    and other ion-molecule reactions in methane containing traces of ethane". Canadian Journal of Chemistry, volume 53, pages 2268-2274. doi:10.1139/v75-318
  3. ^ a b G. I. Mackay, H. I. Schiff, D. K. Bohme (1981), "A room-temperature study of the kinetics and energetics for the protonation of ethane" Canadian Journal of Chemistry, volume 59, issue 12,pages 1771-1778. doi:10.1139/v81-265
  4. ^ Shuang-Ling Chong and J. L. Franklin (1972), "Heats of formation of protonated cyclopropane, methylcyclopropane, and ethane". Journal of the American Chemical Society, volume 94, issue 18, pages 6347–6351. doi:10.1021/ja00773a016
  5. ^ Shigeki Obata and Kimihiko Hirao (1993), "Structure and Vibrational Analysis of Protonated Ethane C2H+
    7
    ", Bulletin of the Chemical Society of Japan volume 66, issue 11, pages 3271-3282 doi:10.1246/bcsj.66.3271

関連項目

  • 二プロトン化エタン C2H2+
    8
    [1]
  1. ^ Koop Lammertsma, George A. Olah, Mario Barzaghi, Massimo Simonetta (1972), "Heats of formation of protonated cyclopropane, methylcyclopropane, and ethane". Journal of the American Chemical Society, volume 94, issue 18, pages 6347–6351 doi:10.1021/ja00773a016


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