ウモジャ・ウアソとは? わかりやすく解説

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ウモジャ・ウアソ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/07 00:38 UTC 版)

ウモジャ
愛称: 
男性禁制の村
ウモジャ
座標:北緯0度38分03秒 東経37度38分02秒 / 北緯0.63417度 東経37.63389度 / 0.63417; 37.63389
設立 1990年
政府
 • 種別 女性の村
ウェブサイト https://www.umojawomen.or.ke
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ウモジャ・ウアソ(Umoja Uaso、Umojaは団結、Uasoは川を意味し、川の近くに村がある)は、ケニアにある特殊な村である。[1]1990年頃に設立され、 首都ナイロビ(Nairobi)から380キロメートルの場所にあるサンブル県のアーチャーズ・ポスト英語版町の近くに位置する[2]。男性禁制の家母長制の村である。サンブル人の女性レベッカ・ロロソリ(Rebecca Lolosoli)によって、女性に対する暴力の被害を受けて家を失った者や、強制結婚女性器切除から逃れてきた少女たちのための避難所として設立された。この村の女性たちは、暴力や女性の伝統的な従属的地位に同意しない。

この村の女性たちは、小学校、文化センターの他、隣接するサンブル国立保護区英語版を訪れる観光客のためにキャンプ場を運営している。また、村の収益のために宝飾品を製作し販売している。

歴史

サンブル人の女性の多くは男性に従属的だとする報告がある。例えば、土地や家畜といった財産を所有することを許されておらず、妻は夫の所有物と見なされている。女性器切除、長老との強制結婚、レイプ、家庭内暴力の対象とされることも多い。[3]

1970年代以降、イギリス軍はケニアで軍事訓練を行っていた。この期間、1,400人以上のサンブル人の女性が、イギリス軍兵士にレイプされたとして訴訟を起こしているが、多くは証拠不十分で棄却されている。[4][5]ただし2003年、アムネスティ・インターナショナルは、イギリス軍の隊員による数十年にわたるケニア人女性への多数のレイプについて、信頼できる証拠があると報告している。[6]それだけに留まらず、レイプされた女性は「汚された」と見なされ、多くが夫に捨てられたとされる。レイプされた妻から性感染症に感染することを恐れて、家から追い出した夫もいた。[7]

これらの住家を失った女性の一部により、ウモジャは設立された。[8]

レベッカ・ロロソリ(Rebecca Lolosoli)はウモジャの創設者の一人である。レベッカは女性器切除に反対したことで殴打され、その療養中に、女性たちのための村をつくるという発想を思いついた。[9] 結果として15人の女性が集まり、1990年頃(情報源によりばらつきがある)に村が設立された。[2]

ウモジャの村人たちはまず、野菜の卸売りを始めた。これはあまり成功せず、観光客に伝統工芸品を売る方向に転じた。[10]これが成功したため、初期にはウモジャの思想と行動に反発する近隣の男性らが、類似の「村」を設立して、観光客がウモジャに立ち寄るのを防ぎ、立ち枯れさせようとした。[11]女性たちは数年前、貯蓄や寄付を用いて村から数キロ離れた放牧地の一区画を購入した。[12]

この活動に、野生生物だけでなく地域社会支援も担っているケニア野生生物公社英語版が注目し、マサイマラ国立保護区などで成功しているグループのノウハウを支援した。[10]ケニアの遺産・社会サービス局および文化も支援した。[3]

2005年に村の代表ロロソリが国際連合を訪問するまでになると、隣接する村の男性はロロソリに対して村の閉鎖を要求する裁判を起こした。[8]

2007年、アフリカ野生生物財団(AWF)の支援を受け、ウモジャ文化センターと博物館が開所した。[13]

2009年には、ロロソリの元夫が村を襲撃し、命を脅かした。[14]一時期、女性たちは自分たちの安全のために村から逃れた。[14]

2009年に公開されたフランスのドキュメンタリー映画『Umoja: The Village Where Men Are Forbidden』(監督:ジャン・クルシヤック/ジャン=マルク・サンクレール)は、2009年1月にビアリッツで開催された国際視聴覚プログラム祭英語版 (FIPA)で「グラン・ルポルタージュ/社会事象」部門の銀賞を受賞し、FIPAの若い欧州審査員団からも特別言及を受けた。[15][16]同年9月にはレイキャビク国際映画祭英語版(RIFF)でアイスランド赤十字人権賞を受賞した。[17]さらに2010年5月、ブエノスアイレスのFestival Internacional de Cine de Derechos Humanos(FICDH)短編・中編コンペティションで最優秀賞を受賞した。[18]

2021年時点で、放牧地の一区画に対する共同所有権の申請が政府の審査を受けている。[9]

2023年のロイターの報道では、村の代表はロロソリが続けており、約40世帯が暮らしているとされている。[19]

村落の生活

屋外の様子

ウモジャは、ケニア北中部のサンブル県に位置し、アーチャーズ・ポスト英語版の近くにある、過去には放牧地だった草原である。[3] 村の住居は、土と牛糞を混ぜて建てられたマニャタと呼ばれる小屋である。村の周囲は茨の垣根で囲まれている。[2]

この村は「蔓延する貧困によって女性の生活を改善し、家族から見捨てられた女性の問題に対処する」ことを目的としている。[10]家出した少女や家から追い出された少女も受け入れている。[10] 孤児ヒト免疫不全ウイルスに感染した子どもも受け入れている。[10] さらに村は、トゥルカナ (カウンティ)県から暴力を逃れてきた女性も保護している。[20]

共同体の住民は全員、サンブルの人々の伝統的な衣装とビーズ手芸を身に着けなければならない。入村後の女性器切除は禁止されている。¥[21]

住民

男性が村を訪れることは許されているが、ウモジャに居住することは認められていない。2015年時点では、ある男性が家畜の世話をするために毎日村を訪れていた。[2] 村で育った男児は、18歳になると村を離れるよう求められている。[22] ウモジャで子どものころに育った男性だけが、村で一時宿泊することを許されている。[21]

村はまた、孤児、家出した子ども、見捨てられた子どもも受け入れている。[10] 2005年には、30人の女性と50人の子どもがウモジャに住んでいた。2015年時点では、47人の女性と200人の子どもが村に住んでいた。[2]

運営

村の女性たちは「話し合いの木」の下に集まり、村の決定を行っている。[2] ロロソリ(Lolosoli)は村の代表を務めている。[10] 村のすべての女性は互いに平等の地位を有している。[21]

経済

ウモジャの住民は、村内のウモジャ・ワソ女性文化センターで販売するサンブルの伝統工芸に従事している。工芸品には色鮮やかなビーズ[2] 自家醸造の低アルコール飲料[23]などが含まれる。これらの商品はウェブサイトでも購入可能である。[24] 女性たちはまた、近隣のサンブル国立保護区英語版を訪れる観光客向けにキャンプ場も運営している。[22]

2020年、村は新型コロナウイルス感染症の世界的流行による経済的影響英語版のために収入不足に苦しんだ。[9]

教育

サンブルの伝統的な社会では子どもは主に家畜の世話を担っているが、ウモジャではすべての子どもが教育を受けられるようになっている。[21] 村には小学校がある。[11] また、保育学校を開設することにも成功している。[25]

関連項目

参考文献

  1. ^ Where Men Now Fear to Tread”. Inter Press Service (2012年4月4日). 2025年9月6日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Bindel, Julie (2015年8月16日). “The village where men are banned” (英語). The Guardian. https://www.theguardian.com/global-development/2015/aug/16/village-where-men-are-banned-womens-rights-kenya 2025年9月6日閲覧。 
  3. ^ a b c Dyer, Ervin (2016年9月9日). “In Kenya's Umoja Village, a sisterhood preserves the past, prepares the future” (英語). NBC News. https://www.nbcnews.com/news/nbcblk/kenya-s-umoja-village-sisterhood-preserves-past-prepares-future-n634391 2025年9月6日閲覧。 
  4. ^ mag, Satya (2007). interview with Rebecca Lolosoli. 
  5. ^ Noor Ali (2007年1月20日). “British soldiers cleared of Kenya rapes” (English). Archer's Post, Kenya: Reuters. https://www.reuters.com/article/uk-britain-kenya-rape/british-soldiers-cleared-of-kenya-rapes-idUKL1583528720061215 2023年4月24日閲覧。 
  6. ^ UK: Decades of Impunity: Serious Allegations of Rape of Kenyan Women by UK Army Personnel” (English). Amnesty International (2003年7月2日). 2023年4月24日閲覧。
  7. ^ Lacey, Marc (2004年12月7日). “From Broken Lives, Kenyan Women Build Place of Unity” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2004/12/07/world/africa/from-broken-lives-kenyan-women-build-place-of-unity.html 2017年8月22日閲覧。 
  8. ^ a b Wax, Emily (2005年7月9日). “A Place Where Women Rule” (英語). The Washington Post. https://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/07/08/AR2005070801775.html 2025年9月6日閲覧。 
  9. ^ a b c Kirui, Dominic (2021年3月23日). “How an Extraordinary Women-Only Village Is Inspiring Land Equality in Rural Kenya”. Global Citizen. https://www.globalcitizen.org/en/content/all-women-umoja-village-kenya-gender-land-rights/ 
  10. ^ a b c d e f g “[http://www.satyamag.com/jun07/lolosoli.html Interview with Rebecca Lolosoli]”. Satya Mag (2007年6月). 2017年8月21日閲覧。
  11. ^ a b Pflanz, Mike (2005年7月16日). “Thriving women-only village is attacked by jealous locals” (英語). The Telegraph. https://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/africaandindianocean/kenya/1494173/Thriving-women-only-village-is-attacked-by-jealous-locals.html 2017年8月22日閲覧。 
  12. ^ Kirui, Dominic (2021年3月22日). “Thirty years on, women-only village inspires land equality in rural Kenya” (英語). Reuters (Thomson Reuters Foundation). https://www.reuters.com/article/world/thirty-years-on-women-only-village-inspires-land-equality-in-rural-kenya-idUSKBN2BE0C7/ 2025年9月6日閲覧。 
  13. ^ Empowering Women Through the Umoja Cultural Center and Museum” (英語). African Wildlife Foundation (2007年4月4日). 2025年9月6日閲覧。
  14. ^ a b Schell, Brittany (2009年8月22日). “Gunman Attacks Women's Village in Kenya” (英語). New America Media. オリジナルの2013年5月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130521131839/http://news.newamericamedia.org/news/view_article.html?article_id=e16449266cba9902b5f1ea0ce3643ceb 2025年9月6日閲覧。 
  15. ^ Delahaye, Martine (2011年8月6日). “UMOJA, LE VILLAGE INTERDIT AUX HOMMES” (フランス語). Le Monde. https://www.lemonde.fr/vous/article/2011/08/06/umoja-le-village-interdit-aux-hommes_1556778_3238.html 2025年9月6日閲覧。 
  16. ^ Umoja, the village where men are forbidden – Awards” (英語). Umoja-film.com (official site). 2025年9月6日閲覧。
  17. ^ “Record audiences for Reykjavik” (英語). Cineuropa. (2009年9月28日). https://cineuropa.org/en/newsdetail/113460/ 2025年9月6日閲覧。 
  18. ^ Una pantalla para los excluidos” (スペイン語). Festival Internacional de Cine de Derechos Humanos – Blog (DerHumALC) (2010年5月6日). 2025年9月6日閲覧。
  19. ^ Kahinju, Jeff; Mwangi, Monicah (2023年2月16日). “Abused women find freedom in Kenyan village where men are banned” (英語). ロイター. https://jp.reuters.com/article/world/abused-women-find-freedom-in-kenyan-village-where-men-are-banned-idUSKBN2UQ134/ 2025年9月6日閲覧。 
  20. ^ “All-female Kenyan village houses abused women” (英語). Al Arabiya. (2012年4月12日). オリジナルの2025年9月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20250906053526/https://www.alarabiya.net/articles/2012/04/12/207262 2025年9月6日閲覧。 
  21. ^ a b c d Rubenstein, Hannah (2012年4月4日). “[http://www.ipsnews.net/2012/04/where-men-now-fear-to-tread/ Where Men Now Fear to Tread | Inter Press Service]”. Inter Press Service. 2017年8月22日閲覧。
  22. ^ a b Karimi, Faith (2019年1月30日). “She grew up in a community where women rule and men are banned”. CNN. https://www.cnn.com/2019/01/30/africa/samburu-umoja-village-intl-asequals-africa/index.html 
  23. ^ “The African all-female tribe where men are not allowed” (英語). Pulse Uganda. (2024年7月31日). https://www.pulse.ug/articles/lifestyle/food-and-travel/the-african-all-female-tribe-where-men-are-not-allowed-2024073108532907490 2025年9月6日閲覧。 
  24. ^ Umoja Jewellery - Traditional beaded Kenyan jewellery” (英語). Umoja Jewellery. 2023年3月17日閲覧。
  25. ^ “[http://www.thedailybeast.com/articles/2011/03/06/women-in-the-world-rebecca-lolosoli-kenya Women in the World: Rebecca Lolosoli, Kenya]”. The Daily Beast (2011年3月6日). 2017年8月22日閲覧。

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