アメリカ合衆国対アイクマン事件
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| アメリカ合衆国対アイクマン事件 | |
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| 弁論:1990年5月14日 判決:1990年6月11日 |
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| 事件名: | United States v. Shawn D. Eichman, David Gerald Blalock and Scott W. Tyler; United States v. Mark John Haggerty, Carlos Garza, Jennifer Proctor Campbell and Darius Allen Strong |
| 前史 | United States v. Eichman, 731 F. Supp. 1123 (D.D.C. 1990); United States v. Haggerty, 731 F. Supp. 415 (W.D. Wash. 1990); consolidated, probable jurisdiction noted, 494 U.S. 1063 (1990). |
| 裁判要旨 | |
| 国旗を象徴として保護することの政府の利益は、表現的な行為を通じてその象徴を冒涜する個人の利益を上回っていない。 | |
| 意見 | |
| 多数意見 | ブレナン 賛同者:マーシャル、ブラックマン、スカリア、ケネディ |
| 少数意見 | スティーブンス 賛同者:レンキスト、ホワイト、オコナー |
| 参照法条 | |
アメリカ合衆国対アイクマン事件(United States v. Eichman)496 U.S. 310 (1990)は、国旗の冒涜に関する連邦法が、アメリカ合衆国憲法修正第1条が保護する表現の自由に違反するとして合衆国最高裁判所が違憲無効とした訴訟[1]。 この判決は、国旗の焼却を禁止するテキサス州法を無効とした、テキサス州対ジョンソン事件(1989年)の法廷意見を引用している[2]。
テキサス州対ジョンソン事件との相違点
テキサス州対ジョンソン事件で違憲とされたテキサス州法は、「国旗の損壊をもって傍観者を著しく不快にさせること」を禁じる条文となっていた。連邦議会は再び違憲となることを避けるため、新たに成立させた国旗保護法では「傍観者を著しく不快にさせること」という文言を削除し、「合衆国国旗を廃棄時を除き故意に切断、汚損、損壊、焼却、床もしくは地面に放置、または踏みつけた者は、罰金もしくは1年以下の禁固、またはその両方が科せられる」という内容中立性を意識する条文とした[1]。
連邦政府は本件の訴訟で、新しく成立した国旗保護法はテキサス州法と異なり、内容に基づいて表現を規制していないため合憲であると主張した。また、政府は「行為者がどのような動機をもつか、傍観者がどのような感情を抱くかに関わらず、いかなる状況下においても国旗の物理的完全性を保護することに利益がある」と述べた。合衆国最高裁判所はこれらの主張を棄却し、「『切断、汚損、損壊、踏みつけ』といった言葉は対象を不敬に扱うことを明らかに含意し、この法律は国旗の象徴的価値を損なう可能性のある行為に焦点を当てていることを示唆している」と述べ、内容中立的ではないと指摘し、厳格審査の対象となると判断した。また、内容中立的ではないために政府は依然として行為者の動機や傍観者の感情といったコミュニケーションに影響を及ぼすことに関心を示しており、容認できないと述べた。そのため、国旗の冒涜は保護される表現の範囲内であることを再確認し、テキサス州対ジョンソン事件の以下の判例を引用して、連邦政府が可決させた国旗保護法は違憲と判決した[1]。
もし憲法修正第一条に根本原則があるとすれば、それは、社会がその思想そのものを不快または不愉快とみなすという理由だけで、政府がその思想の表現を禁止してはならないということである。 — Johnson, supra, at 491 U. S. 414.
参考文献
関連項目
外部リンク
- Text of United States v. Eichman, 496 U.S. 310 (1990) is available from: Cornell CourtListener Findlaw Google Scholar Justia Library of Congress Oyez (oral argument audio) Esquilax
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