みつめむれつくり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/04 09:45 UTC 版)
みつめむれつくりは、森政弘が開発し、1975年の沖縄国際海洋博覧会に展示された7体のロボット群である。群ロボットの源流と評価されている[1]。
概要
東京工業大学に在籍していた森政弘が開発し、自在研究所(松原季男)が製作したアヒル型の7体のメカニマルである[2][3]。中枢神経系を持たないヒトデの腕の動きの制御構造に着想を得て開発されたものであり、生物の群れが形成される過程の再現を企図している[4][5]。群ロボットの源流とされ、本機の開発によって自立分散システムの概念が明確化し、群知能研究の進展にもつながっていく[1]。
沖縄海国際海洋博覧会の会期中に芙蓉グループパビリオン内の機械水族館で本機を含む30種のメカニマルが展示され、各メカニマルは生物を模した名称が付けられていた[3]。本機の場合は、3つの目で群れを作ることに由来して、和名は「みつめむれつくり」、英名は「The Three-eyed Beatles」とされ、学名は開発者である森政弘を命名者として付して「Triops congregans Masahiro[注釈 1]」とされた[6][7]。
博覧会閉幕後は、東海大学海洋科学博物館内に設けられた機械水族館に移設され、他のメカニマルとともに展示が続けられた[4][8][注釈 2]。
特徴
各個体には3つの目(赤外線センサー)があり、そのうち中央の目は3つに分かれ、合計5つの視野(A=66°、B=20°、C=12°、D=20°、E=66°)を持つ[5][6]。頭上には個体間で存在を認識するための赤外線ランプがついており、また、電磁バリヤーを感知するセンサーによって行動範囲の設定も可能となっている。[5][6]。
7体の全体の動きを制御する装置はなく、視野内に他の個体がないときはランダムに動き、個体を検知すると近づいていくことで、生物が群れを形成するような動きを見せる[5][6]。各個体は同一の設計だが、部品などのわずかな誤差によって群れのリーダーになりやすい個体といった個性といえるものが生じている[4][5]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b 『研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野(2023年)』(レポート)科学技術振興機構、2023年、257頁 。
- ^ “ロボティクス ニューロンから知能ロボットへ ジェームズ・サクラ・アルバス 啓学出版 1984”. 松岡正剛の千夜千冊 (2018年1月22日). 2025年9月3日閲覧。
- ^ a b 菅能琇一「沖縄国際海洋博奮戦記」『モノドンのちょっと底まで 日本列島潜水紀行』毎日新聞社、1977年、190-234頁。doi:10.11501/12637437。
- ^ a b c 読売新聞ロボット取材班『現代ロボット学入門 : 新聞記者が足で書いた』講談社、1982年、71-76頁。doi:10.11501/12627623。
- ^ a b c d e 自在研究所 編『納得の工学 第2集 (自在入門)』開発社、1980年、138-143頁。doi:10.11501/12589834。
- ^ a b c d “日本のロボット研究の歩み|1975Locomotion〈ロコモーション〉|みつめむれつくり”. 日本ロボット学会. 2025年6月23日閲覧。
- ^ 松原季男 (1975). “機械動物メカニマル”. 日本の科学と技術 (日本科学技術振興財団・科学技術館) (175): 75-79. doi:10.11501/2295611.
- ^ 鈴木克美 (1978). “機械水族館(メクアリウム)の開館”. 博物館研究 (日本博物館協会) (123): 10-15. doi:10.11501/3467031.
関連項目
外部リンク
- 日本のロボット研究の歩み|1975Locomotion〈ロコモーション〉|みつめむれつくり - 日本ロボット学会のサイト。
- みつめむれつくり(沖縄国際海洋博覧会 1975年) - YouTube - 東京工業大学 (2017年6月21日)。
- みつめむれつくりのページへのリンク