その魔球に、まだ名はないとは? わかりやすく解説

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その魔球に、まだ名はない

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/11 11:59 UTC 版)

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その魔球に、まだ名はない』 (そのまきゅうにまだなはない、Out of left field) はエレン・クレイジス英語版によるアメリカ合衆国児童文学作品であり、歴史小説シリーズである The Gordon Family Saga の三作目。本作では、架空の少女の目を通して現実のアメリカにおける女性野球選手の歴史を概観する。2018年にペンギン・ランダムハウスより刊行された[1]。原題の"Out of left field"は、元来は「思いがけない場所からの不意打ち」を意味する俗語である[2]

ニューヨーク歴史協会児童歴史図書賞[1]およびオハイオアナ図書賞ミドルグレード・アンド・ヤングアダルト(高学年以上)部門[3]受賞作品。

日本では、橋本恵の翻訳により、2018年にあすなろ書房より刊行された[4]

あらすじ

時は1957年。ナックルボールを操る小学4年生のゴードンはバッテリーを組む日系人の少年ピーウィーと連れ立ってリトルリーグ所属チームのトライアウトを受け、共に合格する。しかし、とある理由でゴードンのチームへの加入は取り消されてしまう。ゴードンは女性であり、当時のリトルリーグは女子選手の加入を認めていなかったのである。

弁護士からの助言を受けて、ゴードンは自分にレギュラー選手としての試用期間を与えるよう願う手紙をリトルリーグの本部に送るが、返って来たのは断固とした謝絶であり、しかも代替案として売店ボランティアやチアリーダーとしての参加を提案するという、却ってゴードンの神経を逆なでする内容であった。

ところが、親友の少女ジュールズが、リトルリーグからの返事に「団体競技としての野球は、当初からずっと男子専用のスポーツであり、それはこれからも変わりません」と書かれていたことを逆手に取り、過去に女性野球選手が実在したことを証明すればリトルリーグ側の主張を覆せるのではないかとアドバイスを与えたことから、事態は進展を見せる。アドバイスに発奮したゴードンは大学教授である両親譲りの調査能力を発揮し、また奇縁にも恵まれて、ベーブ・ルースルー・ゲーリッグから三振を奪ったジャッキー・ミッチェル英語版や、陸上競技の金メダリストでもあるベーブ・ザハリアスといった女性選手たちの記録を次々に掘り返していく。加えて、かつて全米女子プロ野球リーグが存在していた事実にたどり着いたが[注 1]、女性にプロ野球への門戸を開いたこのリーグには人種差別ルッキズムと言ったまた別の差別が存在していたことも併せて知るのだった。

こうして調べ上げた結果を学校の課題として発表したゴードンは担任から極めて高い評価を受け、そのレポートが学校の廊下に展示される。さらにはこれを偶然目にした新聞記者であるジュールズの父親がゴードンに取材して記事を書きあげ、これを新聞の女性欄へと掲載し、ゴードンのレポートは人々の知るところとなった。

ゴードンはこの新聞記事の切り抜きを添えて、女性野球選手たちは実際には存在し、自身がリトルリーグでプレイできない理由もない旨を手紙にしたためて、再びリトルリーグへと送信する。彼女の熱意はリトルリーグ側の態度を軟化させ、1959年に開かれる次回の理事会では性別に関するルールの変更を議論するという約束を引き出すに至る。しかし、これは同時にゴードンがリーグに加入できる小学生の間にはルールは改変されないことも意味していた。こうしてゴードンが起こした波紋は、新聞記事を通じて彼女に憧れた後輩の少女がチームに加入してくるという小さな実を結んで、物語は終わる。

脚注

注釈

  1. ^ 1957年時点で数年前まで行われていたこのリーグについて、ゴードンやリトルリーグ機構が知らなかったことは不自然にも見えるが、このリーグは「全米」という名に反してシカゴ中心のリーグであり、報道される地域も限定されていたと作中では説明されている。

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