Me 410 派生型

Me 410

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 00:42 UTC 版)

派生型

標準的なAシリーズの機体は2挺の7.92mm MG 17 機関銃、および2門の20mm MG 151 機関砲を機首に装備した。これらはMe 410 A-1軽爆撃機として配備された。Me 410 A-2重戦闘機のもともとの計画は撤回されたが、これは 2連30mm MK 103 機関砲パックが時局に間に合わなかったためである。

Me 410Aは空対地兵器を携行するため、または追加の空対空兵装や他の兵器を内蔵するために爆弾倉を設けていた。当初、3形式の「ウムリュスト・バオゼッツェ」(工場製交換キット)が利用できた。

U1は撮影偵察任務のためにカメラの付属したパレットを内蔵した。

U2は2門の20mm MG 151/20機関砲と250発の弾薬を携行するもので、これは重戦闘機が使用した。

U4は50mm「ボルトカノーネ」シリーズの兵器であり、BK 5 機関砲と弾薬21発を携行するもので、これを搭載したMe 410AやMe 410Bは、両方とも爆撃機駆逐機専用となった。このBK 5 機関砲はIII号戦車の主砲、5cm Kw.K.39 L/60から派生した物である。この砲を搭載したMe 410は914m以上の距離から目標を撃つことが可能で、こうした距離では爆撃機の標準的な防御兵装であるM2ブローニング機銃、より正確には軽量銃身型の.50口径AN/M2航空機バージョンは無力化された。

しばしば起こった問題は弾詰まりと限られた弾薬携行数であり、さらにまた、大口径砲の540kgという追加重量を機首下部に装着しなければならなかった。これらから、他の対爆撃機仕様のMe 410、特にMG 151/20を追加装備した機体がもっと使用しやすく有効な機体となった。

偵察専用型であるMe 410 A-3は、追加のカメラと燃料を内蔵するため、より深められた胴体を装備した。Me 410 A-3は、1944年はじめに少数機が任務に従事し、「Fernaufklärungsgruppen」麾下の3個長距離偵察中隊が装備した。これらの部隊は1個が西部戦線に、2個が東部戦線に置かれた。

Me 410Bシリーズは、大まかにはAシリーズと同一であるものの、7.92mm MG 17を13mm MG 131 機関銃に換装した。原案では1,900馬力(1,400kW)のダイムラー・ベンツ DB 603Gエンジンが予定されたが1944年初期に開発が中止され、そこで全てのMe 410BがDB 603AもしくはDB 603AAを採用した。DB 603Gエンジンは最高速度を630km/hに上げ、巡航速度を595km/hとしたものの、自重もまた再び増えることとなった。このバージョンはAシリーズと同じもので、Me 410 B-1およびMe 410 B-3は初期のA-1やA-3型と同じ任務に就いた。またAシリーズが使用した「ウムリュスト・バオゼッツェ」工場製換装キットによるオプションも、同じものを用いた。

また、幾種類かの試験型が開発された。

Me 410 B-1 W.Nr.425416は機首にリボルバー式の六連装 WGr 21 ロケットランチャーを試験的に搭載し、1944年2月3日に発射実験を行ったが、ロケットのブラストが機首下部パネルを吹き飛ばし、失敗に終わった。

Me 410 B-5は胴体下部にシャックルを追加し、魚雷を懸吊した。また機首内部のMG 131を撤去、FuG 200 ホーエントヴィール550MHz UHFバンド海上哨戒レーダー用の区画を設けた。爆弾倉はこの型式では使用されず、長距離作戦に備えて容量650リットルの燃料タンクを収める区画が作られ、後方遠隔操作銃塔が700リットル入りの燃料タンクに置き換えられた。

Me 410 B-6は同様に対艦型として作り替えるものだったが、短距離の沿岸防衛任務のみに充てられる予定となっていた。この任務では魚雷を使わず、代わりにB-1に単純な改修を施し、FuG 200レーダーを搭載した。

Me 410 B-7/B-8はB-3偵察型を能力向上したもので、少数の試作に留まった。

Me 410Cは1944年初期に構想された高高度型である。2タイプの新しい翼設計があり、翼幅を18.25mもしくは20.45mに増強するものだった。大型化された主翼は主脚をじかに後方へ引き込むことができた。新型の自在エンジン架は、ダイムラー・ベンツ DB 603JZ、BMW 801J過給エンジン、ユンカース ユモ 213E 2段機械式過給エンジンのどれでも搭載可能であり、新しくて非常に幅広な4翅プロペラを回転させることができた。BMW 801星形エンジンは空冷式であり、またDB603とユモ 213は環状ラジエーターを用いたものであるが、これらは全てが機上に搭載される「クラフトアイ」(パワーエッグ)エンジンモジュールとして統一された。円滑な搭載と戦場での整備のためであり、このため翼下のラジエーターは撤去されている。エンジンが完成する前にMe 410の計画が停止されたため、生産機は1機も存在しない。

Me 410DはBシリーズの高高度性能を単純に能力向上させた型で、Cシリーズと改造程度は同じではない。本機はダイムラー・ベンツ DB 603JZエンジンで飛行するほか、妨害物を減らし、操縦士の視界を向上させるために胴体前部を見直した。また本機は戦略物資を節減するため、外翼外板部分を木製部品と交換した。少数が製造されたが、他の多くの試み同様、第二次世界大戦後期のドイツ航空界における航空機の木製化は、ヴッパータールで接着剤を作っていたゴルトシュミット・テゴ・フィルム工場がイギリス空軍の夜間爆撃により喪失したことで大きな打撃を受けた。利用可能な酸性の代替接着剤は、素材を接着するにはあまりに腐食性が強すぎたためである。また木製部品は失敗を起こしやすい傾向があった。

Bf 109Gに生産力を集中するため、最後には1944年8月に本機の生産が停止されたが、この時までに1,160機が生産されていた。この月の後、「緊急戦闘機計画」が発動された。


  1. ^ W. N Hess, p82
  2. ^ Caldwell & Muller, p137
  3. ^ Caldwell & Muller, p183
  4. ^ Caldwell & Muller, p198
  5. ^ Andrew Simpson (2007年). “Individual History MESSERSCHMITT Me410A-1/U2 W/NR.420430/AM72/8483M MUSEUM ACCESSION NUMBER 85/A/78”. Royal Air Force Museum. 2011年12月23日閲覧。
  6. ^ Rechlin E'Stelle Erpr. Nr. 1929. Br.B.Nr. 773/43 g.Kdos.


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